第14話 RZV納車
日記 1985 10/x RZV納車
さて、そうこうしている内に10月も半ばを過ぎてきて
ちょっと涼しくなってきた頃、いつものモータースから
「来たよ」と電話があった。
タクシーの乗務のついでに仕事サボってモータースへ見に行く。
.....ふふん。来たか。
注文通りの'84Model , 51X だ。
見た目、後ろバンクのマフラーが短い。
フレーム番号は2000番代だから、それ程初期ロットというわけでもない。
またいでみると、やっぱり小さい。
散々乗りまわしたRZVだが、自分のマシンだ、となると気分は違う。
RZ250Rよりもシート高は低いし、16インチの前輪のためか
ホイールベースも短い。
低く、前輪の側に前バンクのシリンダー・ヘッドが来ている
とはいっても、後のNSR250程ではないが。
見れば見るほど、走りそうな感じ。
低重心のマシン、というのは峠道なんかではピッチングしにくいから
安心してコーナーに突っ込める、んだ。
(だから、最近のYZF-R1とかは見た目程は速く走ってる奴は少ない。
俺もR6を持ってたが、どうも馴染め無くて売ってしまった。
スムーズで楽だが、ハードに攻めるとピッチングが大きくて乗りにくい。
下り坂なんかを攻めると、シート位置が高いから腰で体を支えないと
ハンドルに体重が掛かってコーナーが切りにくく、よく、箱根なんかで
これでコーナーアウトへ飛び出したりして、事故ってるのを見かける)
ニンジャのNは、もの欲しそうにRZVを眺めていた。
「乗るなよ、慣らしするんだからな」と釘さしといた。
NはN山という苗字だが、本当はNし山という。
こいつがアホなのは生まれつきだが、もうひとり
似たようなアホが俺の仲間にいる。
そいつも奇しくもN山で、本当はNか山という。
N,という頭文字はアホの血統なのだろうか?
(俺達の間では、「アホの頭文字N」という。)
そのもうひとりのNは、俺とタメで、よく一緒にアルバイトした仲間。
一見、まともそうだが、どこかがおかしい。
信号ゼロヨンで、対向車が右折して来るのに全開で突っ込んで
CB250RSを全損にしたり。
「いやぁー、全開くれたら、いっちまった。(笑)。」
4輪で峠道を飛ばしてて、限界で慣性ドリフトしてるのに
全開にしてスピン、自爆したり。
「いやぁー、全開くれたら、いっちまった。(笑)。」
TZR250にレーシングチャンバーつけて、クランクシャフトをネジ切ったり。
「いやぁー、全開くれたら、いっちまった。(笑)。」
RZ250にトマゼリのセパハンつけて、Uターンする時に
ガス・タンクに指はさんでコケたり。
「いやぁー、全開くれたら、(??)いっちまった。(笑)。」
まぁとにかくよく転ぶんでこいつは「ミスター・クラッシュ」と呼ばれていた。
あまりよく壊すんで、借金だらけでマシンが買えなくなって、
中古車ばかりを乗りついでいた。
ま、今でいう「バリマシ族」見たいなものだろう。
(当時は、オートバイ雑誌に「俺達のサーキット」という記事があって
「俺サ族」なんていっていた。無理ヒザとか、曲馬乗りとかも
この頃、喜んでみんなやってた)
で、こいつがなぜかドカティが好きになった。
当時、こいつは中免だった(その頃は、教習所では取れなかった)ので
ドカティの350Sという、二気筒のマシンを買って....
しばらく見かけないな...と思うと。
「ああ、あいつxx外科に入院してるよ。」「またかい(笑)。」
なんでもまたコーナーで飛んだらしい。
で、こいつは人が新しいマシン買うと乗りたがるので
みんな逃げ回っていた。
俺達は大型クラスなので問題なかった(安堵。)が。
俺は、昔からの友達なので、いつだったかXV750Eを貸してやったら
うまくUターンできずに、エンストしてたりして「乗りにくいバイクだ」と
怒っていたが、なぜかこいつはドカティの750ssを欲しがっていた
(...たぶん..無理、かな?^^;)
そんなユニークなこいつは車のセールスマンだったが
仕事サボッテバイク屋に入りびたっていたり、ケガで休んでばかりでうだつが上がらず
首になって。
バイク用品屋へ転職した、とあるとき他のバイク屋で聞いた。
俺は、ある日、冷やかしにその店に行ってみた.....が。
奴は居なかった。
ので、機嫌悪そうなオバちゃんの店員に
「すいません、Nか山くん、います?」と俺、聞いて見た。
おばちゃん「...........。」 ーー#;
俺「.....あ、あの....。」....なんか悪ぃ事、いったかな.....。^^;
「あんた、Nか山の友達?辞めてもらったわよ。連絡先知らない?。」
と、オバちゃん、御立腹。(笑)。
「い、いえ、友達ってわけじゃ..(ヤベぇ....)それじゃ、。」
俺は、メット担いで逃げ出した。^^;
俺の背中にオバちゃんの怒鳴り声。
「見かけたら、店に顔出すように言ってよね!。」
俺は、すたこらさっさ、と逃げた。
...なにやったんだ...あいつ.....?
後で聞いたところによると、どうも、また入院してたらしいが(笑)。
それから、数年。
ある時、俺がバイトしてたバイク屋にひょっこりNか山は顔出した。
RZ250Rの最終型が欲しい、という(1988年頃のお話しです)。
当然、男の60回ローン。
ローンがブラックでなかなか通らず、俺はいろんなテを使ってローンを
通してやった....が。
一週間後。
店のサービス課に電話が入って、軽トラでサービス課の若いのが
暗い顔して出て行った。
俺は、ちょっと気になって、サービス課のチーフに聞いた。
「なんか、あったんですか?。」
チーフは、禿頭を撫でながら..
「事故だってよ、お前の友達。」
....またか....^^;.....。
1時間後、軽トラの荷台にシートレールが空を向いて。
族仕様みたいになったNか山のRZ。(笑)
トラックの助手席には奴の笑い顔。
「いやぁー、全開くれたら、いっちまった。(笑)。」
....その後、こいつのRZはしばらく店に放置してあった。
聞くところによると、ローンの残債が払えずに、また修理代も出せず.....
....と、いうこと、らしい。^^;
Nか山くん、今どうしてるんだろうか。
ちょっと、気になる。
生きてりゃいいけど(笑)。
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