第4話 パトカー追尾不能



RZVとの出会い(4)







1984/8/y







慌てて、フル・スロットルにし、カウルの内側に潜る。

が、同じマシン同士では、一度ミスるとなかな挽回は出来ない。



...うーん、面白いな、イコール・コンディションってのは。



奴のスリップ・ストリームにでも入れれば。

そう思い、俺はパワーをロスらないようにレーン・チェンジ。


全開加速の、2スト・オイルの気流。

如何にパワーヴァルブ連動とはいえど、フル・スロットルの状態では

さすがに500ccなりの煙を吐き出す。


クリアー・シールドに、点々とオイル滓が付く。


...いくらか車間が縮まり始めた。


200km/hを超えているというのに、相対速度は、スローモーションのようだ....。


奴が、左にウインカーを出した。


「休むか」「OK」無言のコミュニケーション。


スロー・ダウンし、P/Aへの残り2kmで、エンジンを冷やそう。


水温計をちらと見たが、こんな状況でもオーバーヒートの兆候すらない。


冷却系は高性能のようだ。


(その後、16年間乗っているが、真夏トンネルの中で渋滞停止、とか

 アイドリングで意図的に放置したりしなければ、まず回らない電動ファン。

 ラジエーターの能力はかなりのもののようだ。)



P/Aへのエスケープ・ロードをゆっくり走っていると、猛烈な勢いで迫る

赤い回転灯がバック・ミラーに見えた....。


前を走っていたYに スピーカーで停止を命じ、全く人気のないP/Aの中央に

YはRZVを止めた。



なにやら警官が話し掛けている。


俺は、少し離れて傍観していた。



助手席にのっていた警官が、ゆっくり手招きをする。


仕方なく、歩いてそちらに向かった....。



「おめ、何キロだしてっぺ?」(茨城弁....。)


「あ、メータ見てなかったけど、100ぐらいかな?」(大嘘..^^;)



「ウソこくでねぇぞ!これ見ろ!」


警官は、クラウンパトのドアを開け

センター・コンソールにある大径の速度計を指差した。




....指針は、180フルスケールのところで停止していた......




「.....^^;..。」(こりゃ逮捕だわ..)



...と、Yは免許を返してもらい、こちらににやつきながら歩いてきた。



「おめらは茨城の道走るな!次のインターで降りて下、通ってかえれ!」



そう、言い残し、警官はクラウンを静かに発進させて去った....。



「どうなってんだ?これ....。」


「さあ、な.....。」



おまーりさん、ありがと。(^^)。




なんでも、後でYに聞いたら、インターの分駐所にいたらしいのだが、

ものすごい白煙を上げて吹っ飛んでゆく(俺の事だ..。)バイクが見えたので

追尾した..。が、追いつかないので、無線で連絡して先に網張ったらしい。

しかし、P/Aに入っちゃったので、追尾もできず、「網」も役立たす。


....ということらしい。(爆笑)



タイミング、良かった。



この後、しばらくの間、至るところに網が張られていた...。


おそろしや、警官の執念。



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