第7話 一月六日 クラブ活動

 星暦二千百十一年一月六日 火曜日


 今日も登校日。学園(高等部)の案内と クラブ活動、生徒会の説明やらを午前中に行うらしい。


 色々とあったあげく、いつの間にか入学が決まっていて放り込まれた形の学園なので、正直 校風、特徴、その他 皆目見当も付かない。


 もっと言えば、住んでいた街どころか、日本はおろか地球から放り出されるとは夢にも思っていなかったわけで、成り行き任せの今日この頃。


 以前のことを思えば、今の方が絶対面白いけどね。




「おはよう」


 声を掛けながらホームルームに到着。まだ始業時間には余裕がある。


「「おはよう」ございます」


 挨拶を返してくれたのが、昨日知り合った二人。「さかき ルミ」 と 「みさき かおり」。


 他十数名はそれぞれのグループでおしゃべりに忙しく、此方こちらを向いていた幾人かは、手を上げたりして答えてくれた。


「鹿乃子、体格がいい。スポーツやってる?」


 ルミがいてくる。黒髪ショートに赤いカチューシャがワンポイント。前髪が眼の上半分を隠すような長さ。椅子に腰掛けているから判らないけど、昨日見た感じ百六十センチ無い位の身長だったはず。


「昔 護身用の格闘技を少し、、最近は全然だよ」


 物心ついた頃から、なぜか普通に日課として鍛錬たんれんを行っていた。十二歳くらいで色々あってやめちゃったけど、癖になってるからか、今でも気まぐれにすることもある。


「運動系のクラブ。入る予定?」


 また問いかけてくるので、


「そのつもりはないかな。集団行動って割と苦手」

 そう告白する。


「クラブ活動自体やりたくない感じなのかしら?」


 今度は かおり。茶髪のふわっとカールしたショート。眼はやや緑系。昨日見た感じ百五十センチくらいだった。


「集団行動をいられなければ特にいやだって訳でもないけど?」


「おっはよー」


 答えるのと同時に元気な声。ユリカだ。


「「「おはよう」」ございます」


 と、皆で。


「あー?もしかして勧誘してた?」


「その前。どうしたいのか訊いてた」


 ユリカの問いにルミが答える


「勧誘だったんかい」

 そう呟くと、


「ごめんなさい。嫌だった?」


 顔の前で可愛らしく両手を合わせた かおり に謝られた。シャツの袖 長。指しか見えない。


 慌てて、


「そっちへ話が進むと思ってなかったから。ごめん、声が出ちゃった。」 


 片手を上げて謝罪。袖の長さ?ぴったりですが何か?


「まあ、説明会訊いてから考えるよ」


 取り合えず、と言うと


「ウチのクラブ説明会に出ないから。それに勧誘でしか入れないよ」


 三人とも同じクラブ、しかも入会済みかい。それよりも、入会するの条件付き?しかも厳しくない?


「他のクラブと違って学部不問なんですよ。今は中等部から学院生まで十名ほど在籍してますね」


「わたし中等部から。ユリカは初等部から活動」


 ユリカに続けて かおり とルミが説明してくれる。


「まあ、入るかどうかはおいといて…何をするクラブ?」


「行ってみれば判るって」


「「わかる?」かなあ?」


 答えたユリカに続いて、顔を見合わせたルミと かおりの何やら不穏なつぶやきが聞こえてきましてですね。


 同時に始業時間の予鈴が鳴って、クラス担任が来た。


「皆さん揃ってますねー?これから高等部のクラブと生徒会活動について 説明と活動の紹介がありますからー 皆さんは至急大講堂に移動して下さーい」


 とのこと。ノーブレスで言い切ったなあの先生。ホンワカした感じでしゃべるのに肺活量すげー。


「さつきとユリアが来てない?」


 ふと気が付いて周りを見るが、やはり姿が無い。


「あの二人は会社のお仕事です」


「なるほど」


 ユリカが教えてくれて納得。そうすると、結構頻繁ひんぱんに休み?授業とか出席日数とか平気なのかいな?


 人ごとながら心配になるっていると、ルミが


「だいじょーぶ。会社の仕事が単位。二人とも記憶力もいい。テストも一夜漬け」


 なら安心だ。って、安心できない事案が! ここにも[エスパー(疑)]がですね。


「だから、わかりやすいんだってば。」


「えー?」


 ユリカに非難の目を向けるわたし。横では吹き出して、肩をふるわせるルミと かおり。

 


 講堂に到着し、指定された当たりに適当に座る。「大体この辺に固まって。」としか指示されなかったんだよ。


 一年生全員来ているけれど、全高等部生徒五百四十人が余裕で入場出来るこの講堂。七割以上が空席だ。


 途中小休憩をはさみつつ、クラブ説明兼勧誘と生徒会の組織、運営内容説明、件勧誘が無事閉幕致しまして。


 ちょうどお昼。食事の後は各自 気になるクラブへ突撃せよとのクラス担任からの指示を最後に本日解散。


 お昼をって、朝の話を忘れたふりで帰ろうかと思ったら逃走失敗。


「確保ー!」


 というユリカの声と同時に かおりとルミに左右の腕をられまして、そのまま彼女らの所属クラブとやらに連行されました。


 地下です。それも地下十階。要するに浮島となっている宇宙船の中。


 圧縮空気が抜ける音がかすかに聞こえてくると、目の前の扉が開く。一度奥に数㎝引っ込んでから横にスライド。


 ものすごーく頑丈そうな扉ですね。


 中には人影が二つ。ていうか、二人の先客が。


「はよー」


「おはよ」


「お早うございまーす」


「こ…こんにちは?」


 順に ユリカ・ルミ・かおり・わたし。おはよう?でいいの?


「おはよ」


 と返してきたのは高等部の制服に線2本。2年の男子生徒。明るい茶髪は襟元えりもと近くまである。男子にしては長髪。身長はわたし位?少し低いかな?多分百七十無い位。結構美形…?かわいい系?


「お早うございます」


 と、丁寧ていねいなご挨拶あいさつは、私服?の美人さん。ややみどりに輝く黒髪 長!。身長高そう。モデルさんみたいな体型。


 「お早う」でいいみたいね。


「これが副会長の島崎しまざきユウジ、高等部2年生」


 といいながら男子生徒をビシッと指さすユリカ。はぁ、と溜息ためいきの副会長。


「こっちが会長のミュラ・セシリア・ミュウラァ。学院一回生」


 今度は女性に向かって指をビシッと…あっ 指、つかまれた。


「ユリカちゃん?いつもいつも言ってるよね?人様を指さしたらいけませんって言ってるよね?ね?」


 おお、後ろ頭にでっかい汗を浮かべながら、指をつかんで放さない会長の腕を必死にタップするユリカが面白い。



 ようやく解放されて、指を押さえつつ涙目で部屋の隅っこでうずくまるユリカを放置してクラブの説明 拝聴はいちょう中。


「というわけで、簡単に言うと、あっちこっちから来る依頼物件を必要な能力ごとに適任者に割り振って処理する人材派遣はけんクラブだね。」


 とは、ユウジ副会長のお言葉。能力って何だ?[超]が付いたりするのか?[異]とか付いたりする?


「皆の特技の事ね。調べ物とか捜し物とか力仕事とか、わたしは電子機器類のプログラム全般が得意分野ですね。」


 ミュラ会長。[エスパー(疑)]持ってませんか?[エスパー(疑)]


「あら?鹿乃子ちゃんが判りやすいだけだと思いますよ?あたし。」


「えー?」


 部屋の隅っこで笑い転げているやつがですね。復活したのかい。




「今日は残念だけど見学できそうな依頼が無いんだ。」


「明日は一件有りますね。ユリカちゃん向きなのだけれど、お願いできる?」


 副会長に続き会長から、


「やりまーす」


 右手をげて元気な返事のユリカ。おまえ、内容かなくていいのか?


「元気なのは良いことだけど、内容を確認してからお返事してね?」


 溜息を一つ。小さなカードを差し出すミュラ会長。


「は~い」


 と、のんきな返事を返しながらカードを受け取るユリカ。自分の携帯端末にセットして何やらいじり出す。


「ぅげ!」


 やや有ってうめき声が上がった。どうした?と後ろから端末をのぞき込む。

 なんとも可愛らしくもメカニカルなコスプレの女の子の写真が表示されており…


「止める?捕まえる?」


 上目遣いにミュラ会長を伺うユリカ。


「止めてとしか訊いてないからいいんじゃないかしら?」


 それを訊いてほっと一息吐き出すと、


「りょーかい。明日登校前で良い?」


 と再度確認。


「大丈夫ですよ。必要な部署に連絡を回して、後 色々仕込んでおきますね。」


 部屋の一面、入り口から見て左壁面を埋めくしている何やら正体不明の機械群、かなり大型の高性能端末だそうで、それに向かうと何やら操作し始めるミュラ会長。


 少々物騒なお言葉と共に、


「それじゃ、鹿乃子ちゃんと明日朝九時から始めて頂戴。鹿乃子ちゃんは見学でお願いしますね?」


 操作を終えてから此方こちらに向き直りそう告げてくる。


「それじゃ、八時半にコミューター拾って迎えに行くねー。」

 と続けるユリカ。


「はいはい」


 拒否権がありませんか。そうですか。


 まだ用事の残っている正副会長を残して帰宅となりました。


 結局、人材派遣をするって事しか判らなかったんですけど。


 ふくらむ一方の不安を抱えつつ。色々片付けつつ就寝の準備。



 それでは、おやすみなさい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る