第8話 帰郷

俺は55年ぶりに故郷へ帰った


55年ぶりに見た実家の小さなタバコ屋はそこの周りだけ時代に取り残されたような昭和の風景だった

俺が50年の人工冬眠から目覚めた時 すでに弟は三年前に他界 80を過ぎていた 俺の体は当時の35歳のまま


伊原商店 それが実家の店の名だ


ずいぶん久しぶりに実家の店を見た時思ったことは


こんな店よくつぶれないで続いてるな?こんな感想だ


地方都市にある駅からだいぶ離れた不便な場所にある小さな個人商店だが店の前にはお客が数人並び繁盛しているようだった


俺は前に5〜6人いる列に並んでみる

客層は高齢者から中年夫婦そして若者カップルたちの姿もあり様々だ

順番を待っている間みんなそれぞれの連れと楽しそうに喋ってる

店の前に路駐された数台の車のナンバープレートを見ると ここからかなり距離のある他県からや都内からもお客が来てるのは少し驚いた


列に並んでいた俺の番が来た


「ハイライト」と注文すると小窓の中でお婆さんが後のタバコ棚からハイライトを抜きとると


「お客さん タバコだけかい?」


「えっ?」俺は思わず聞き返す


「ここみんな遠くから宝くじ買いに来るんだよ タバコだけ買う人珍しいくらい」


「へーこの店 けっこう当たるんだ?」


「この前 大きいやつが出てね そこに貼ってあるでしょう」


そう俺に言うとお婆さんが窓口の横に貼られた用紙に指を差す


(この売り場から一等前後賞当選金5億円出ました!)


お婆さんは明るい笑顔で言う


「宝くじ様様だよ」


「あ 僕はハイライトだけで結構です」と小銭を出す


俺は小窓からタバコ代を受け取るお婆さんの顔を正面からまじまじと見つめる


もしかしてケイちゃん? 俺は心の中で彼女に問いかける


そのシワクチャのお婆さんの姿に若い頃のケイコの面影が

弟の妻だ 俺がアレに入る前 二人はまだ新婚だった 弟より6歳年下と記憶していたので今の歳は80か‥‥


するとそんな思いが相手にも伝わったかは知らないが そのお婆さんが俺の顔をちゃんと見て


「あら 」


「‥‥うん?」俺はお婆さんに返す


「いやね お客さん 死んだ爺さんの若い頃にそっくりだから」


実の兄弟だから似ていて当然だ


「ハハハハハ 」俺は冗談を聞いたように笑う


「そうよね?‥‥でもそっくり」


「僕そんなに似てるんだ?(笑)

でも今から僕が爺ちゃんの代わりできないからなー(笑)お婆ちゃん 元気で また来るから」


「お兄ちゃん ありがとね また来ておくれ 」


俺がハイライトを受け取りそこから立ち去る時一瞬そのお婆さん(たぶんケイちゃん)が名残惜しそうな切ない表情を見せる


俺は50年間人工冬眠していたことは国家機密になっていて親族には行方不明ということで伝えられていた そのことは俺は未練はなかったし親兄弟も俺の安否確認についてはもうあきらめていたことだろう

だからこの体で再会しようとは微塵みじんも思わなかった


そして5年が経過した しかしあるが俺を動かした

それは弟の孫タクヤのことだ 年齢は29になるが十代の頃から芸能界に入り若手の人気俳優になり伊原家自慢の子 いやこの街自慢の有名人だった


それが2年前 カツカレーを食べた容疑で逮捕されすべての仕事を失なった そして半年も経たないうちにまたである タクヤは実刑になり9ヶ月の間 刑務所で過ごした 出所した彼は今「カツカレー更生施設NANで同じカツカレー依存症の人たちと共同生活をしていた タクヤはということもありNANを通しての講演も年に何回か頼まれ自らの体験を踏まえカツカレー依存の恐ろしさを伝えていた 俺は今日○○公民館である予定のタクヤの講演を見に行く



SUCRE 本部(某所)

↑(何かの長い正式名称の頭文字を並べて省略した人類防衛特務機関)


SUCRE長官 丹下たんげ 若尊じゃくそんのオフィス

そこに黒いスーツ姿のノジマが来ている



(あえて人物描写はしません)

丹下長官「君を人類防衛の最前線であるこの戦略本部に復帰させたのは他ならぬ私だ」


ノジマ「ここでの私の出番はもうないと思っていましたが」


丹下長官「人類を脅かす深刻な事態が進行中だ だから君に来てもらった」


ノジマ「前任者のは私より遥かに適任だったと思いますが?」


丹下長官「には別の事案に専念してもらう ノジマ君 君が頼りなんだ」


ノジマ「例のはどうするんですか?」


丹下長官「例のは保健科学部から戦略本部が引き継ぐ」


ノジマ「その話は今初めて聞きました」


丹下長官「悪いなノジマ君 これまで君に話せんこともあってね

ところで彼は自分の肉体の秘密を?」


ノジマ「彼はまだ知らないと思います ですが いずれ気づくでしょう」


丹下長官「うーむ(うなずく)」


ノジマ「長官 その人類を脅かす深刻な事態とは何です?」


丹下長官「私も定年間近だが楽に辞めさせてもらいそうにない(苦笑)

昨日 予知能力者を名乗る男から我々にコンタクトがあった

その男が言うには90日以内に世界は終わるという内容だった」


ノジマ「その男の話に信憑性しんぴょうせいはあるんですか?」


丹下長官「その話は我々の得たデーターと合致している」


ノジマ「例の件と関係してると?」


丹下長官「まだ断定はできないがその件と関係している可能性は大いにある」


ノジマ「長官 私に詳しい経緯を」

↑読者にもね(笑)


丹下長官「 三年前 我々はこれまでで最大級の時空のゆがみを探知した それと同時に凄まじいエネルギー体もオーラセンサーによって確認されてる それによると新宿付近で発生したものと思われる」


ノジマ「そのエネルギー体の正体は一体?」


丹下長官「まだ確認には至ってない だがこれまでにない強大なパワーを記録している」


ノジマ「そんなに強大なエネルギー体なら我々で追尾できるんじゃないですか?」


丹下長官「それは不可能だ」


ノジマ「なぜです?」


丹下長官「そのエネルギー体は一瞬で消えてしまったからだ 地上に出た瞬間に」


ノジマ「消滅?」


丹下長官「そのものが消滅してしまったのかわからんが強大なパワーが消えたことだけは確かだ」


ノジマ「私にその解明を?」


丹下長官「我々に与えられた時間は残り少ない ノジマ君頼んだぞ」







○○公民館「 NAN主催 イハラ タクヤ講演 カツカレーを断つ」


有名人イハラ タクヤということもあるのか150席ある会場はほぼ埋まっている

聴衆はカツカレー依存症の人やその家族 もちろん一般の人も 中には芸能マスコミ関係の人間もいるだろう


俺は席に着き ほどなくタクヤの講演が始まった


「こんにちわ イハラ タクヤです 昔はよくテレビに出てました」

タクヤの自虐的なあいさつに会場はドッと湧く


「カレーはとても美味しい 国民食と言っていいです そして揚げたてのカツは

サクッと噛んだ瞬間 中から肉汁と油があふれ なんともたまらない食感です

でも‥‥カレーとカツを一緒に食べてはいけません!

私はその頃 自分で言うのもなんですが人気絶頂でちょっと👺になっていたのでしょうそんな時でした 私はカツカレーに手を出してしまったのです


そして逮捕されました 私は仕事とそれまでに築いてきた名声を全て失いました

私は大変後悔しました なんであんなことをしてしまったんだろうと自問自答の日々でした もう二度とカツカレーには手を出すまいと思っていました

でもカツカレーの誘惑に勝てず再犯です 今度は実刑になり刑務所行きになりました それだけカツカレー依存症はおそろしいのです 人生を破滅させます


私みたいなものがみなさんにこんな偉そうなこと言うのはおこがましいですが

カツカレーだけは絶対手を出さないでください!そしてカツカレーを食べているかも?という家族がいたらためらわず警察に通報してください その人はもう警察に逮捕されないとカツカレーをやめることはできないです」

↑ダイジェストです


「今日 私にこんな機会を与えていただきましたNANの皆様 私の話を聴いていただきました会場の皆様 本当にありがとうございました」そう締めくくるとタクヤは深々と頭を下げた そして聴衆から大きな拍手が起こる タクヤは歩きながら方々にペコペコ頭を下げ 退場する途中 会場のあっちこちから声が飛ぶ

「頑張って!」

「負けないで!」

「待ってるぞ!」←どこでだよ?


会場が暖かい拍手に包まれる中 俺は会場裏に消えるタクヤの姿を目で追った

5列前あたりに座ってる男が隣にいる男に耳うちする光景が目に入る その怪しい雰囲気に俺はすぐにピンときた 奴らはカタギじゃない そして俺の胸騒ぎは現実のものとなった


その夜タクヤが同じカツカレー依存症の人たちと共同生活しているNANのホームの前で俺はバイクにまたがりタクヤを張った

そしてその予感は的中した タクヤはこっそりホームを抜けだすとそこに待っていた黒塗りの外車に乗り込む 俺はバイクでその車の行き先を追った


飲み屋や風俗店が集まる地方の怪しげな歓楽街に到着するとタクヤは一人でサウナ隣にある地下階段を降りて行く


「イハラさん 美味しいカツカレーここにはありますよ」

いかにもヤクザ風の男がタクヤが着くなり声をかける


「‥‥まだ決心がつかないんだ」タクヤは弱々しく男に言う


「ここまで来てですか?イハラさん このカレーの匂い 食欲をそそるでしょ?

想像してみてくださいよ これをカツにかけるんです どうです?たまらんでしょう」

「‥‥じゃあ一口だけ‥‥」


「一口だけ?そんなこと言わず大盛りいきましょうよ」

男はタクヤにやさしい口調でそう言うとカウンター向こうの厨房に向かってさっきとは違う怖い口調で

「おい!大盛り」と注文を入れる


タクヤの目の前にカレースパイスの香ばし匂いと美味しそうに湯気の立ったカツカレーの大盛りが置かれる

「‥‥やっぱ俺には食えない」

「(タクヤの言葉を無視して)さ イハラさん 早く食べないと冷めちまいますよ」とタクヤに悪魔のようにささやく


それでもタクヤが食べるのをためらってるとカウンターの奥に座っていた二人組(会場にいた男たちと同一人物)がタクヤの前に顔を出し若手の鉄砲玉風の男が

「イハラさん ここまで来たってことはコレを食べに来たんでしょう?だったら食べていかないと ね? イハラさんよ」

「僕にはNANの人たちを裏切ることはできない」

タクヤがしぼり出すように声を出すともう一人の貫禄のある方の男が

「あんたここまで来て何も食わないで帰るつもりじゃねーだろうな?あんたが食わないんならこの秘密の場所を知られたからには こっちはあんたをバラさなきゃいけなくなるぜ」

「‥‥わかった‥‥カツカレーを食うよ」タクヤは降参したかのように男に言う

「そう来なくっちゃ! さ やっておくんなせー」

↑時代劇風


タクヤはカレールーとライスをスプーンですくい口の中に入れる

「どうです?美味うまいでしょう?」貫禄男が聞くとタクヤは口をモグモグさせうなずく

「次はカツと一緒に」そう言うと貫禄男はニヤッと笑う

タクヤはカレーのかかった一切れのカツとライスをスプーンですくい口に運ぼうとする その時だった 鍵のかかっているドアがバーン!と蹴破られ

「タクヤ!それ食ったらお前おしまいだぞ!」


タクヤは驚きスプーンの動きは口の手前でピタッと止まる

「誰だ? テメー」と店のヤクザ風(ヤクザだけど)男が俺を見て叫ぶ

そして俺は答える

「ただの通りすがりのものだ」

「嘘つけ!」←そうですよね(笑)


貫禄男がアゴで若手の鉄砲玉風の男に指示を出すと

「ヤロー!」と声を上げながら俺に殴りかかってくる

俺は男のパンチを顔面にモロにボコボコくらったが全くダメージがない

パンチをもらいながら平然と立っている俺に驚きの表情を見せる男

今度は俺のボディーにサンドバックのようにパンチを連打するが全く俺はノーダメージだ

貫禄男は店のヤクザ風(ヤクザだけど)男に「あいつバラせ」と指示を出す

男は手に持った包丁でズンと俺の腹をえぐり めった刺しにする


タクヤは殺人現場を目の前にしてヤクザの凶暴さに震える


男には十分な手応てごたえがあった 俺の腹から包丁を引き抜くと俺の顔を見る そんな時 俺は男に言う

「全然ダメージないんだが」

その言葉に男は目を見開いて驚愕きょうがくし俺の腹に視線を落とす

そして俺の着ているシャツをまくり上げ腹の傷を確認すると


「わーなんだこいつの体は?俺が刺した傷口がどんどんふさがって元に戻っていくぞ!信じられん!」と叫んで腰を抜かし尻を床につけたまま後退りする


貫禄男は若手の鉄砲玉風の男に

「あのバケモノをれ!」と指示を出すと自らも銃を抜いて男と二人で俺にパン!パン!パン!パン!と銃弾を浴びせる そしてカチッ カチッと弾切れの音


「あのー全然痛くないんだが」

その言葉を聞いた若手の鉄砲玉風の男が震えながら横にいる貫禄男の顔を見て

「ア、アニキ こいつヤバイぜ 普通じゃねー」

「ああ こいつとかかわると ろくなことにならねー おい!(若手とヤクザ風の男に←ヤクザだけど)行くぞ!」と逃げるように慌てて三人は店を出て行く


俺はうつむき銃弾を浴びたはずの腹を確認すると腹部からしだいに被弾した銃弾が浮き上がってきてバラ バラとそのまま床に落ちコロ〜ンと転がる


それを見て俺は両手を広げて叫んだ

「なんじゃこりゃー」

ノジマのやつ俺にこんなこと教えなかったぞ 俺の体に一体何をしたんだ?


「あんた‥‥何者か知らないけど 助かったよ またカツカレーを食うとこだった」

タクヤが安堵あんどしたように俺に言うと

「バカヤロー!お前 お前のこと一生懸命支援してくれてる人たちや応援してくれてるファンの人たちを何回裏切れば気がすむんだよ?甘ったれてんじゃねー!」


すると俺の怒りの言葉に我に返ったようにタクヤは号泣し

「わー(←これで号泣していることを一応あらわしてます)俺が、俺が、悪かったんだ こんなとこまで来て 俺は何て馬鹿なやつなんだろう でも目が覚めた もう人を二度と裏切らない 誓うよ」

タクヤの決意を聞いて

「その言葉を待っていたんだ もう二度と手を出しちゃいけない カツカレーに」

タクヤは泣きながらうなずき

「こんな俺をしかってくれてありがとう おかげで自分はまだこの環境に甘えてるんだなと気づかせてくれた これからはしっかり生きるよ」

「ああ 頑張れ」


「さっき思ったんだけど まるで親父に説教されてるみたいだった なんかあんた赤の他人とは思えないよ 昔の親父の姿にどことなく似ているんだ」


俺はお前の親父の父親の兄だからな


「ところであんた何者なんだ?ヤクザもビビるさっきのアレは‥‥」

「俺か?‥‥イハラ・タクヤのファンの一人だ ただそれだけの男さ」

↑タクヤは納得したのかな?(笑)



SUCRE本部(某所)


SUCRE統括本部長ノジマのオフィス


「君のを忘れるな ネオミ」


ノジマの元にネオミ・リーが来ている


「はい わかっています」ネオミ・リーはノジマにそう返事する


「今度の敵はヤクザやニンジャたちとはわけが違うぞ 」


「すると (どっかの国の言語で怪物のこと)がまた?」


「そう だ 我々が確認した6番目のになる だが今回の件はこれまでと違ってかなり厄介やっかいだぞ」


「我々SUCREはに対する攻撃能力を持っていますが?」


「その通りだ 我々が一匹倒すことなど造作もない 一匹 いや 数匹いようとも人類を滅ぼすことは不可能だ

だが 奴らがあるを攻撃すれば一瞬で全人類が消滅してしまう」


「そのとは?」


「それが最大の謎だ 我々に警告してきたを名乗る男でもそこまではわからないらしい 今わかっていることはその攻撃は新宿で起こる だから君を我々SUCREはシンジュク治安警察に潜入させたのだ」


「はい」


「新宿のエネルギー体がオーラセンサーによって確認されたのは三年前 そして三ヶ月前 そこに識別しきべつされるブルーオーラのエネルギー体が出現した たぶんは人間に化けて姿を隠しているはずだ」


「人間社会にまぎれていると?」


「おそらくの狙いは三年前に新宿で観測されたエネルギー体だ」


「どうしてが狙っていると?」


「複数のオーラエネルギーが一つのエリアで確認されるのは確率的にありえん 」

↑どういうこと?←知らんがな(笑)


ノジマは続ける


の捜索と奴が狙う目標の解明が急務だ それと‥‥気になることが‥‥」


「なんです?」


「それは半年前に確認されたオーラエネルギー体だ これまでこのオーラ体はノーマークだったが ここ一ヶ月でまるでしたかのようにオーラエネルギーがどんどん大きくなっている」


「それは最初に新宿で確認されたものと同じでは?」


「いや 我々はそれとは別のものだと認識している ひとつ目のオーラエネルギー体は逆にパワーが一気に消え確認不能状態となっている」


「その増大するオーラエネルギー体の正体を私に探れと?」


「その通りだ それが我々の味方なら人類の救世主になる だが‥我々の敵なら人類の大きな脅威になる」



新宿○○演芸場


霧笛むてき 兆治ちょうじは相方の中学一年生の天才漫才少年ひかると今日も演芸場の舞台に立っていた コンビ名「無敵の人」として


ひかる「おっちゃん ボクもうすぐ中間テストやからしばらく漫才休むわ 僕が休んでる間はおっちゃん一人や」


霧笛「ひかるくん テスト勉強頑張れよ おっちゃんも忙しくなるぞ」


ひかる「へー おっちゃん ピンの仕事いっぱい来てるんや?」


霧笛「朝から晩までスケジュールギッシリや」


ひかる「それならこっちが休んでも安心やわ」


霧笛「午前中はパチンコ打って午後から夕方まで競艇やって夜はナイター競馬や ああ忙しい」


ひかる「全部ギャンブルばっかやんか!仕事せいへんのか」


霧笛「君 ピンのボクの実力知ってるやろ?君が一緒やないと全然仕事けーへん」


ひかる「‥‥それは納得できるわ」


霧笛「おっちゃん これでもテストの順位はいつも学年で二番やったんやで」


ひかる「おっちゃん 頭よかったんやな 学年で二番でもすごいわ 」


霧笛「下からな」


ひかる「上からとちゃうんかい!」


霧笛「ブービー賞や」


ひかる「どんな例えや!」


霧笛「だから中学時代のボクのあだ名はブービーや」


ひかる「あだ名のルーツは言わんでもええわ!」


霧笛「あと これはあんま他人ひとに言うたらあかんけど

よくカンニングしてたわ それで今まで一度もバレんかった」


ひかる「カンニングしてその順位かいな!」


霧笛「カンニングせーへんかったらビリになってるがな」


ひかる「もう ええわ」→ツッコミの手


霧笛&ひかる「どーも ありがとうございました!」と客席にお辞儀する


笑顔の観客の拍手の中 軽快な音楽に合わせ小走りで舞台袖へ消えていく二人

会場でその漫才を見ていたネオミ・リーが客席から立ち上がり後方のドアから出て行く


舞台裏の楽屋(大部屋) 出番をひかえた数人の漫才コンビがネタ合わせをしている ひかると霧笛むてきの二人が出番を終えて帰ってくると他の漫才師の一人が声をかける


芸人A「ひかるくん おもろかったで」

ひかる「ありがとう」

霧笛「わしは?」

芸人A「おもろいわけないやろ?」(真顔)

霧笛「今 わしが舞台に立っていられんのもみんな師匠のおかげや な 師匠」

ひかる「おっちゃん いつまでもボクのこと師匠って呼ばんといて」

霧笛「ひかるくんはわしの師匠やで ひかるくんが拾ってくれへんかったら わしの人生どないなってたかわからへん そやから今がわしの人生で一番充実してる時や

師匠 ほんま感謝してます」

ひかる「もー おっちゃん ボクまだ中一やで師匠と呼ぶのええかげんやめてーな」

芸人A「ひかるくんはこいつの師匠でええやん 漫才のネタも書いてるしな」


その時 コンコンと楽屋のドアをノックする音が

「失礼します」ドアが半分開き劇場スタッフが顔を出す

「霧笛さん お客さんが見えてます」

霧笛「? こっち入ってもらえば?」

「いえ 廊下でと」

霧笛「‥‥誰や?」と廊下に出て行く


そこには見知らぬ艶のある長い髪の美女が待っていた

スタッフは「じゃあ 僕はこれで」と霧笛に挨拶するとスタスタと持ち場に戻って行く そして彼女が写真入りのIDカードを霧笛に提示し口を開く

「はじめまして霧笛むてきさん 私はSUCREのエージェント ネオミ・リーと言います 至急あなたにお話したいことがあります」



俺の体は一体どうなってんだ?があってから一週間がたった 俺は2021年以来一度も会っていないノジマとこの駅前で会う約束をした

まだ待ち合わせ時間には少し間がある 改札横にあるキヨスクに並ぶスポーツ新聞の見出しの文字が俺の目に飛び込んでくる まさか‥‥

俺はそこでスポーツ新聞を買う 一面の見出しは「イハラ・タクヤ六本木でカツカレー飲食容疑で現行犯逮捕 これで三度目 懲りない元人気俳優 NAN関係者ショック」


俺はそれを見てハーっとため息をつき

「馬鹿な奴‥‥」とつぶや


「久しぶりだな」

その声に紙面から顔を上げ正面を見ると全身黒いスーツのノジマの姿が

俺はノジマに早速

「あんたに聞きたいことがある」

するとノジマは

「ああ なんでも答えてやる だがその前に俺の話を聞いて欲しい

君にの話をしたい」













































































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