第2話 我は神

誰がなんと言おうと俺は神だ

いや 正確には つい最近まで神だった

俺が他人に自分は神だったと言うと

間違いなくドン引きされる

でも本当のことなのだ

世の中には「我は神」と称している奴らであふれている

その中には本当に自分は神だと信じ込んでる妄想狂もいるし

その自覚は全くないのに金儲けのために自ら神を名乗り ヘンな宗教団体を作って教祖になる者もいる

しかし俺はそんな輩とは全く違う真の神だった

この宇宙やこの美しい惑星 そこに誕生した全ての生命体の創造主だ

ダビンチもアインシュタインもブルース・リーも それと‥‥

おっと この人物の名前を出すのだけはやめておこう とにかく歴史上の人物は全部俺が作った


本当の神ならそれを証明して見せろ?


もっともな意見だが 今はそれを証明することはできない

なぜかと言うと俺は神の地位を放棄して人間になることを選んだからだ

だから今は「ただの人間」だ もう神ではない しかしこの世界を創造した神であったことには間違いないのだ


なぜ神の地位を捨てたかって?


その理由は創造主であるこの地位にもう飽きてしまったのだ

人生はゲームだ そのゲームはとても楽しいはずだ

自分が構築したフィールドの中で

自分自身が人間というプレイヤーになってこのゲームに参加したかった


読者「なんじゃ その理由」


だから俺が神から人間になってしまったので今この世界の出来事はAI

によって自動制御されている


読者「AI?は?意味が‥」


俺はゲームをより面白くするために「難易度」を上げることにした

それは「境遇設定」で住むところも金もない極貧に近い圧倒的に不利な状況からスタートし知恵と行動力と運でどんどん上へ登り詰め 最終的には金と名声を手に入れる その時により大きなカタルシスを味わうために


読者「神のくせに考えがみみっちーな」


元 神な


今 俺はかつてデザインした日本列島にある新宿という街に生息している


読者「世界にいくつもの都市がある中なんで新宿を選んだんだ?」


知りたい?じゃあその理由を教えてやる

それは(ピーーー)が(ピーーー)で

(ピーーー)の(ピーーー)だからさ


読者「‥‥へーそうだったんだ‥だからわざわざこの日本の新宿という場所を選んだんだね さっきの話めちゃめちゃ説得力あるわ」


俺は自分が作った人間たちに混じりこの街の片隅でひっそりと暮らしていた

このゲームは思った以上になかなか難しい この境遇から脱出するのは容易なことではない


深夜1時すぎ今日も俺は誰もいない夜の公園のベンチに横になっていた 雨が降ってなければいつもここを寝ぐらに使っていた 今夜は嫌な予感がした

深夜の公園に複数の男たちの会話や笑い声が響きその声と足音がどんどんこっちへ近づいてくる するとその音は俺が寝ているベンチの前でピタッと止まる

「おい おっさん」男から声がかけられる 俺は横になったままゴロッと体を声の方向に向き直すとゆっくりとまぶたを開けて男たちの姿を確認する


4人だな 見たところまだ高校生くらいの未成年かもしれない

「おっさん こんなとこで寝てんなよ」

若者たちから笑い声が起きる

俺は彼らを無視してベンチに横になり続ける

「ここみんなが座るベンチだろ?一人で占拠してんじゃねーよ」

そう言って一人の若者が俺の襟首をつかんでベンチから引きずり 地面へドスンと落とすと彼らはよってたかって容赦なく俺の体中に蹴りを入れる


知り合いに大怪我を負わせたのはこいつらだったのか


ストレス発散の遊びのつもりか?

こんなことして何が楽しいのか?


俺は腹部に強烈な蹴りを入れられ大きな声でうめいた

そして後頭部をおもいっきり踏みつけられた時 キーンという頭の中に響く金属音と俺が痛めつけられてる間 すぐ近くから聞こえていた彼らの笑い声がしだいに遠のいていく

どうやら致命傷を負ったらしい

もうすぐ俺は死ぬ

彼らはとても愚かなことをした


俺が死ねば俺が作った彼らもこの世界も全て消滅してしまうのに








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