ゴキブリダッシュ
夏場だからってゴキブリ多過ぎるだろ。
夏に限らず奴らは生息するけど。とにかく生理的な気持ち悪さを本質として持つゴキブリは死ぬべきだと思うよ。私の部屋には滅多に現れることがないけどネットツールや外出先で間接的に閲覧しただけでも不快の渦が巻く。その場から逃げられない状況なら尚更酷い。だから私はゴキブリの嫌がる独特の空気を醸しているのだが、効果の程は未知数だ。何故なら奴らは私の知らない物陰で繁殖する。意識の琴線に一旦触れると隠居若しくは逃亡する癖して私達人間が少しでも油断すれば嬉々として襲来する。生命力を誇示して蔓延る昆虫の表情と羽音は私達人間の空間を穢すしかない。これ以上接触も一瞥もしたくないから死ね。今すぐ蝿叩きで潰してあげよっか。
この世界には一体どれだけのゴキブリが溢れているのだろう。一般的には私達人間より多いと言われているが実際全部のゴキブリを直視した人間はいない。憶測の統計が支配する世界でゴキブリは何処にでも出現する。目に見えない場所で今日も奴らが卑しく飛んでいると思うと、鳩尾から嘔吐を催す。奴らの行動全てが汚濁の塊に思えて、実態がその通りな訳だから本当に殺したいよね。根源的な性質と外見的な思考が負の掛け算をして尚負を拡張する奴らは手の施しようがない。殺すしかない。
人間とゴキブリの違いは理性の有無だ。知能の差異もあるが、何より知能をどう暴露するかが鍵となる。その点ゴキブリは理性の表皮を被った動物本能の傀儡と言える。雑菌だらけの外皮では如何に理性を繕おうと無駄に有り余る体力を浪費して生命活動や生殖活動へと一目散に駆り出る様が明確に無様で不細工であることに変わりはない。薄っぺらな自尊心の本能から放たれる自己中心の徘徊は人間にとって害悪であり醜悪だ。生物的な数の多さで圧制を図ろうと言うならば私が一匹残らず殺す。環境保全が進む現代で衆目を浴びる明言は淘汰されてきているように思えるがまだまだ普及が浅い。地域規模、個人レベルで調査すれば道端の昆虫主義が岩石の裏面に根深く張り付いたままで時には堂々と表側に露出することが理解できるだろう。その実理解が足りていないどころか理解しようともしない野生動物が自然を席巻しているからゴキブリはいつまで経っても消えない。ゴキブリを主語とした際補語が気持ち悪いにならなければならない脊髄の反応を保て。常に殺虫剤と新聞紙を携帯しろ。護身という消極的な理由でも殺傷という積極的な目的でも構わない。最終的に全部のゴキブリを殺そう。人間として。
……などという論理を頭脳で編み出してみた。
只今午後八時半。今日は終業式の日。つまり今日、正確に言えば明日から学生特有の夏季休暇期間が開始する。家に帰ることを部活とする私にとって多忙の二文字は忘却の彼方だが、夏期講習の四文字はカレンダーに記されている。この夏は自宅に潜伏するか塾に出陣するかコンビニにアイスを購入しに行くかの三つ巴の選択肢が嵐を呼ぶだろう。まぁ主に引き篭るから一つだけ図形が巨大だけど。私は可能な範囲で自宅、特に自室で毎日を過ごしたいのだ。それはもちろん、実物大の昆虫に遭遇しないため。外に居れば奴らが何処から羽撃いてくるか予測できない。私の精神を異常事態にさせるゴキブリとの縁を切るには一人きりで生き続けるのが最適解だと思う。そんな私の主張虚しく、部屋の扉の隙間から侵入してくる奴が稀にいるから厄介だ。アロマオイルで乙女の芳香を演出しているのにカサカサとゴソゴソと厳ついシルエットで這いずる姿には人間の私も虫酸が走る。前述通り殺せられれば本望だけど、流石に手強いので追い出すに留めている。ゴキブリは部屋に入れた時点で自分の失策だと思うようにしている。当然ゴキブリ自体が諸悪の根源だけど。
ゴキブリは人類共通の敵だと私は認識している。だから私が何故ここまでゴキブリを毛嫌いするのかと改まって問うお便りはポストに届いていないし今後も届かないだろうが、敢えて答えるなら気持ち悪いからだ。奴らの体は気持ち悪い
さて今年の夏休み、貴重な時間をゴキブリに囚われながら過ごす訳にはいかない。現在進行形で盛り上がるゴキブリへの怨みつらみは人間らしく記憶の箪笥に収納して勉強の時間を差し引いてまだ余る余暇を充実した思い出へと変換するには遊び相手の存在が必須であることに思慮を馳せよう。帰宅部、夏期講習、遊び相手、この三拍子揃えた三冠王として思い当たるのは……
ピンポーン。
思考の最中室内のインターホンが鳴った。反射的に時計を見遣ると、もう九時を回っている。電子音の後には人間の声も無論ゴキブリの音も聞こえない。これは慣例的な食事の合図を示す。夕食は家族の人間皆で食べる仕来たりだ。
せっかく夏休みの幸せ計画を練り始めた時でタイミングが悪いが、遊びの話は夕食後のお楽しみにして家族の元へ向かおう。家族の人間も嫌いじゃないから。
そんな訳で、鍵の掛かった部屋から出た。
エアコンの風を名残惜しく思いながら。
二人が住んでいるのは都市近郊の3LDK。
酸素が不足しそうな高さまで伸びるマンションの内、二人の部屋は螺旋階段を半周するだけで済ませられる二階に位置する。「2」と刻まれた鼠色のステップを超え、左右に分かれる通路を正確に辿った先がお目当ての場所だ。
薄っぺらいドアが番われた玄関を通過し、物音を控えながら消灯中の比較的短い廊下を進むと、いつもと変わらない二人の姿があった。一人はテレビを観ながら薄揚げのジャガイモをぼりぼり貪り、奥にいるもう一人はコーヒー片手に二本の脚を交差させる。アイボリー色のソファに座って、ゆったりとした時間を過ごしているようだ。二人が電化製品と飲料水に夢中なのを良いことに、私は雑音に紛れてリビングルームの周りを迂回する。長い長い環状線を特急列車のつもりで疾走し、部屋の隅に立つ観葉植物の裏へずばっ、飛び込んだ。
フローラルな香り漂う葉の隙間からは二人の後ろ姿が覗ける。視点が変わり、右側となった彼女は飲みかけのコーヒーカップを膝上に乗せて隣の人間と同様に四角形の機械へ目を奪われている。胸まで垂れ下がる黒髪が美しく電灯に照らされ、その光景に私の心がざわめく。彼女の名前は、アイ。短髪で
私はアイのことが好きだ。一目惚れというやつだ。彼女の黒染めの髪は今まで見てきたどんな色よりも心が惹かれる。植木鉢の影からもその美麗さは容易に見て取れる。対してイアの方は好きじゃない。嫌いまである。私の好きなアイの厚意をいつも独り占めしている、というか依存していることがその理由の一つで、後は単純にタイプじゃない。ガサツな人間よりもきちんと自立した人間の方が私には魅力的に映る。だからアイは性格外見共に私の好みなのだ。
このままずっと物陰でそのアイの休日の過ごし方を眺めていても楽しいけれど、どうせならもっと近くで見たい。そして今アイは画面に集中していて周りの異変を察知する余裕は伺えない。これは好機だ。意を決して陶器製の鉢から這い出る。床の交錯する網目を静謐に、かつ迅速に突き進んで行く。沸き立つ気持ちと脚音を抑えながら走り込むと、無事ソファの軒下に侵入することができた。
頭が掠れるほど低い天井と真っ暗な情景に意識を対応させる。無駄を惜しんで素早く環境に適応したところ、真上から二人の微かな声と雑多な生活音が響いてきた。ソファの軋む音、菓子を喰い千切りながらついでに落とす音、流動的な物体がずずずと流れる音。最初二つはイアで残りはアイだろう。聴覚から人間性が手に取るように分かる。特にソファから伝わる音は振動も同伴してきて微妙に鬱陶しい。視覚にも気を配ると、イアのだらんと崩れた両足とアイのすらっと伸びた足音が覗ける。その奥にはこれまた質素な色合いのカーペットとテーブル、さらに奥側ではテレビが腰を据えている。半分に見切れた画面では何が何だか分からないけどそれより重大なのはカーペット。イアの零した菓子の粉末が散乱している。そこから漂う匂いが絶妙に私の嗅覚と食欲を刺激してくるので、前に出たい衝動に駆られてしまう。しかし気付かれたら色々と終わる。多分死ぬ。こんなところで死ぬ訳にはいかない。何としても私は欲望を抑えなければならない。そこで私は食べ滓から離れるため、イアの雑音を遠ざけるため、そして単純にアイの付近に居座るための一石三鳥の行動としてアイの座る右側へ寄ることにした。奥から伝播する意味不明の絶叫の舞台裏でアイの足のエックス座標に位置揃えれば、魅惑な臭気もいくらか収まり、アイ自身の香りにも癒されて精神が安定を取り戻す。取り戻すや否や、アイの足が数歩歩けば届くほど間近に迫っていることを自覚して再度緊張感が分泌される。アイに関わると鼓動が不規則になることは今までの数少ない接触でも体験してきたけど、今回ほど短距離を維持するのは初めてで心拍数も記録更新へまっしぐらだ。一度意識を逸らそうと足の向こう側を見ると、外来種の美女が大海原で巨大魚と生死を賭けた鬼ごっこに没頭する映像が流れる大画面の縁に漆黒のカラーリングを装うテレビがあった。さっきの場所から移動したおかげでこの世の終焉間際のような顔面も全容が把握できるけどやっぱりそんなことはどうでもいい。私はアイの顔を見るため、アイと幸福な一時を得るためやって来たんだ。当人のアイから目を背けてどうする。
気を取り直してアイの生足を拝見する。私の不格好な脚とは違い、白く滑らかな曲線を縁取る足だ。爪先は奥まっていて見え辛いけど、綺麗なピンク色が浮かんでいるのは見て取れる。この局部を見られるだけでも今日訪れた甲斐があった。斜めに見据えるイアの足はアイの足と比べたら怠惰が形となっているようで、本当に何でこの二人が同居しているのか不思議に思う。それと少し羨ましい。二人がどういう関係なのかは未だに分からないが同棲していることは確かで、籍を入れた夫婦と何ら変わらない生活を送っているように見える。しかもその比喩に沿って言い表せば新婚というより二、三年の年月は既に経験済みの雰囲気を出している。今だってこの部屋は二人のゆったりとした空気で満たされているのだ。果たしてお互いが不釣り合いである方が共生しやすいのだろうか。だったら私にも可能性があるのでは、と期待してしまう。叶わぬ恋だと知っていても。それでも傍から見つめるくらいは許されるだろうと思って私はここに居続ける。ソファの下で綿埃を吸いながらアイのお尻の直下でアイの温もりを体感する。アイはテレビを見て、私はアイの一部を見るという関係性に甘さを噛み締める。
そうしている内に一時間が経った。それまで三竦みのようにじっとしていた私達だったが、二次元化された役者等が阿鼻叫喚から日常生活へジョブチェンジして感動のラストを飾った瞬間エンドロールを裁断するかのように画面が縁と同じく暗黒に染まり、リモコンをテーブルからソファの上へ軽々と操作兼運搬したアイが杓子状の機械とは対照的にソファから離れた。私の頭上の圧縮が和らぐと同時にイアも居場所を発ち、山脈が平野となった皿を抱えてアイの進行方向に連れ添う。アイは時計回りに、イブは近道の反時計回りに歩行し、各々食器を持ちながら玄関と壁一枚隔てた台所へ移動した。ソファの下で息を潜める私は二人の元へ行くべきか行かざるべきか迷って、結局その場に留まった。幾ら何でもリスクが高過ぎる。
代わりにソファの片隅へと移り、暗闇と同化しながら二人の様子を観覧する。全体像を少し遠くから見渡すと、二人の仲の深さが明確に映える。食器を置く際の親密な距離感や顔を見合わせて交わす日常会話のリズム感を見物客にひしひしと印象付けてくる。あの二人の間に入ることは許されないような気さえする。けれど負けじと見続ける。
するとアイが足元の戸棚からキラリと銀色に光る物を抜き取った。足から肘の高さまで持ち上げイアに何か指示すると、イアは冷蔵庫と思しき箱から色とりどりな食材を台所の台にあたる平面上の木製の板に乗せ、アイがそれらを切り落とし出す。なるほどあれは包丁かと理解する私には目もくれないアイがざくざくと食物繊維を削ってゆく。まぁ見られたらそれはそれで困るのだけど。野菜とその他各種の材料を加工したアイは筒状の鍋にそれらを投入し、本格的な味付けの段階に入った。このような風景は初めてだが、アイは料理が得意らしい。その後もアイは手慣れた所作で食材に魔法を振りかけ、時々イアの助けを借りながら料理を完成させた。イアがアイの役に立てたことを嬉しく思っているのか顔面を緩ませて、アイもそんなイアに応えて笑っているのが何とも憎らしいけど台所から放たれる芳醇な香味に騙くらかされて意識がそちらへ向く。
遠距離にあったアイと料理が、二種類の蠱惑を巻いて再びテーブルへと戻ってくる。イアは片手で二組の箸とコップを、空いた手で緑茶のボトルを持って歩み寄る。調理中ただ遠くを展望するだけだった退屈な半時間から一転、好奇溢れる未来の兆しが片鱗を現す。二人は位置関係は以前と同等に、位置自体は打って変わってソファの上ではなくソファとテーブルの中間地点に座り、恐らく食事の合図と思われる声を発した。私もアイに標準を合わせて移転すると、さっきは足のみだったアイの身体がウエスト以下を大胆に宣言してきた。至近な上横幅も増して見やすくなったアイの引き締まった腰は全く以て眼福に尽きるものだ。眼前の変貌に釣られて、ふとソファの下から部屋の小窓に視線を飛ばしてみれば、夜空の月がちょうど映り込む。そう言えばこの時刻まで誰かの家に入り浸ったことは無いかもしれない。それだけ私はアイのことが好きなのだろう。正直私自身感情というものを解釈できていなく、何故アイの見た目や中身が好きなのかと深く掘り下げた詰問を受ければ返答に言い淀むけど、アイと一緒に居たい気持ちは論理抜きに確信している。それを前提にアイの下半身を見ると、何故かそれまで以上に心が癒される。アイの温かさを身に染みて感じる。この感情は、アイの隣にイアが居るとしても、アイの隣がイアだとしても関係ない。アイの後ろで密かにアイを眺めることさえできれば、私はこの気持ちになれる。それで十分だ。
十分だった、はずなのに。
そうしてなびくイアからの風が、私の嗅覚を過去最高に刺激する。食材と調味料とアイの風味が混ざり合い、狂おしいほど妖艶な空気を撒いている。実際狂ってしまいそうな気分になる。食事の間は欲望を殺してひたすら耐えていたが、ついにストッパーは外れた。外した。もう、我慢の限界だ。
影で
私は何故ここにいるのか。
それは当然、アイの顔を見つめるため。
思い至った直後、私は飛んだ。
ソファから脱出し、アイの死角を掻い潜り、戸棚と並行した左奥の壁に貼り付く。床とは異なる凸凹な感触に、野生の適応能力を振るう。真上を見上げれば、蛇口が節穴を晒している。次に上空目指して、重量に逆らいながら壁を登る。私の前脚が水場に達すると、時を同じくして二人が台所に到着する。アイが手前でイアが奥側という配列を継続している。好都合だ。この機会を逃す訳にはいかない。二人が皿を置く一連の流れの隙を突いて、水場の外周を大外刈りのように回り込む。約二時間振りの高速移動に体が喜んでいるようで、
私がアイとの対面に自身の体液を体中で激しく巡回させる一方、アイはこちらを向かずに食器をシンクに重ねる作業を続けている。目線と頭を俯かせているので、アイの顔はまだよく見えない。ふとした拍子に角度を変えたかと思うとイアの方向へ向かっているため、中々真正面から拝めない。
とうとう痺れを切らした私は、ガラス戸から僅かに脚を踏み出し、下方へと臨む。そうしていたら、タイミング良くアイが蛇口に手を伸ばしてきた。
アイの顔が一面に広がる。
待ち望んでいた美しい様相に、体が喜悦を叫ぶ。
堪えきれず、つい手脚や毛をバタバタさせた。
すると。
アイと、目が合っ「☆&♪→"@.¥$*}!?」「‥‘#*%〉←×>#〒!!」
爆音が鳴る。
爆風が吹く。
非常識的な現象により、昆虫の本能が羽を開く。
急速にその場を飛翔した瞬間。
背中から強烈な打撃を受ける。
飛行のバランスが壊れ、震える視界で捉えたのは。
新聞紙を振り切ったイアと、膝から崩れ落ちたアイだった。
三十分後、私はテレビの中にいた。
メタファーではなく、リアルで、三次元のまま。
あの後イアは執拗に私を追いかけ回し、私が間一髪で新聞紙による薙ぎ払いを躱すという状況が続いた。しばらくして埒が明かないと悟ったイアは最終手段として市販の殺虫剤を何処かから持ち出し、散布してきた。死を予感した私は、イアの目が殺虫剤に向かっている内にテレビ裏へと渡り、細長い空洞を上手く潜り抜けてテレビの中へと入った。以上の経緯で今に至る。これは凶暴化したイアから逃走するための苦肉の策と言える。何せイアの指示により玄関にはアイの見張りが付き、窓等の隙間も全て塞がれてしまったから他に取れる策が無かった。仮にテレビが薄型だったらば即死だったかもしれない。それに関しては不幸中の幸いだ。
接触中の内蔵設備を一望してみると、複雑怪奇な電子部品が立体的に組み合わせられている様子が広がる。流石にテレビの内側まで探ることは無いだろうと安堵して、視線を外に返す。連続した隙間の一本からは、遠くで歩き回るイアの姿と猛々しい足音が聞こえる。アイはまだ玄関先にいるのだろうかと身を乗り出してみると、姿こそ見れないが、イアの足踏みに隠れて異音が流れてくるのが聞き取れた。人間由来の、何かを啜るような鳴き声。人間だから、この場合泣き声、か。アイは泣いているのだろうか?
アイの様子を見に行きたくても、少なくともイアの徘徊する間は不可能だ。
それに段々と、意識が朦朧としてきた。
殺虫剤の腐臭が、気門から染み込んでいるらしい。
時間が経つにつれ、容態が悪化する。あれれと思考を整理する間もなく、昆虫の自意識が表立つ。気分まで悪くなってくる。それまでぼやけていただけの目の前は唐突に奇妙なカーブを描き出す。すると、手始めに立体感が消失した。次に五感が自由気ままに麻痺して、同胞の死体が山盛りになって提供された。景色が一秒毎に切断された。夢で両羽が
カラフルに変色する檻に閉ざされて、視覚は死んだ。
それでも私は繰り返す。
本能へと変換した想いを、繰り返す。
私はこれから一生この家に、この場所に居続けてやろう。
アイが笑顔を向けてくれる、その日まで。
だって私はアイを愛している。
死骸になっても。
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