スポーツ黒歴史

 スポーツやってる人って気色悪いよね。バイト帰り、柵の向こうで赤虫みたいな色をしたユニフォーム、とか格好付けなくていいよ、布を身に付けて金属の凶器やらを振り回す子供達と、文字通り肩肘張って、浮浪者一歩手前の醜い様相で一人の子供を叱りつけている中年と高齢者共を見て、率直に感じた。まだ幼いのに、辛いだろうなぁあんなことされて。あんなの自分からやりたいと思って始めた人間一人でもいるのかな。甚だ不思議だ。「辞めといた方がいいよ!」アドバイスを叫びに乗せてあげようかと思ったけど、脳筋と同類になりたくないからそれも止めといた。きっと無理矢理だろうな。大体の子供はゲームかニチアサアニメで休日を消化したいと思っているから。やりたいことやるだけ確かにその方が有意義だし。白髪混じり共も良い歳して野球だなんてみっともない。地域社会で健全な少年を育んでいるつもりで腕組んでいるのかな。自分が遊びたいだけなのを教えてあげていると称して恩着せがましくこびり付く大人の姿。お前がいなくても本当にやりたい子は勝手にやるだろ、余計な世話であることに、子供だったら気付けないもんね。なんて思って歩きながら不躾な使われ方に苛まれる校庭が見切れた。

 何故スポーツに価値を見出す人がいるのだろう。実際経済回している訳だけど、そんな価値あるかな。狩猟採集の時代は身体能力が必要だっただろうが、結局人間がどう頑張ったって生身じゃ熊や猪には勝てないのに。筋力が知力に劣るなんて猿でも分かるはずだ。こいつらが肉体労働のストレスで脳の髄まで筋肉になるのが仕方ないとしても、休日を子供諸共溝に捨てるまでしてしまう程なのか。健康の為だとしてもランニング、ストレッチ、筋トレ辺りで済むし。結局熱中しちゃって客観的価値が本当はないことをスポーツを讃える風潮の利用で誤魔化している、といったところだろうなぁ。感動を与えるとか大会ごっこに勝ち抜いた当人だけだろ。所詮娯楽の癖にプロとか誇っているまたは誇らせているのがしたくもないのに見聞きしていて痛々しい。観客も観客で自分が動きもしないのに誰が何してどうとか、根暗らしく捲し立てて陽気者ぶって燥いで何が楽しいやら。歴史として残る精神と異なりやがて朽ち果てる肉体に嘘っぱちな熱意を注ぐ人口が多い、恐らく過半数である意味がわからない。つまり死んだスポーツ選手に今現在何の価値があるの。

 勉強とスポーツ、対等な訳ねーだろ。やはり人間死がある時点で、精神とりわけ知が優越するのは周知。あとそう言いたいならそこにゲームも加えればいい。スポーツもゲームもルールに基づく娯楽、身体を使うか頭を使うかの差だろう。両方嫌いだけど。自由度の高いパルクールやクリエイティブなゲームはましだけどね。ルールがある時点で、その枠内で一定の成果を目指す時点で、人間がやる意味ない。勝利目指して、一丸となって、虚しい響きだね。上手いという表現の対象について往々にして言えることだけど、ロボットの方が上手いに決まってる。人間は機械や動物とは違うんだよ。馬鹿だから分からないんだろうけど。スポーツが暇潰し未満の存在ということ、極まった人、特におっさんになると頑なに認めないよね。テレビの前で文句言ってる自分にビール飲みながら酔いしれるあの豚骨みたいな顔。スポーツが人生って生き恥晒して視野狭いんだよお前。サポーター同士で争うとか、熱狂的、暴力的になりがちなのも観てる奴らの資質だろうな。政治、宗教より遥かに下らないことで暴れるのは知能指数低い現れだよね。体罰にも貢献してるし。スポーツ選手屑多いし。

 スポーツが過大評価されていることに誰も不満を言わないのが不思議で仕方ない。スポーツやっている奴らが教室で粋がってその文化が定着しているからなのかな。狭い空間だと単体でも腕力で虚勢張れるから。でもそういう人に限って内心弱いもんなぁ。心が弱いが故に、みたいなパターン。そう思うとやや可愛い、いやキモカワかな。

 小学校に引き続き中学校横の道路を通ると、ここでもやってるよ。偶々昼過ぎの半端な時間に終わって予期しなかったけど、こんな道通るんじゃなかったと今もまた後悔させてくる。中学生になって辞めるチャンスだったのに部活に入れと睨まれて従順に入ってしまった。一応あの空間では下手ではなかったけど、興味のないことで評価されても知らんがな。と言っても指導と偽る説教、布教で何百回も怒鳴られた、ことを思い出してくると、あ、苛ついてきた。趣味でもないのに入部している、させられているオレの方が向こうからしたら不自然だろうが。そういう人は普通さっさと辞める、そう、野球部はアイツも辞めさせたんだった。アイツとの出会いは必然性が無いとは言え部活だった。オレはアイツと、多分アイツもオレと、あの空間の中では一番親しかったし気も合ったし、ずっと一緒に帰っていたし。アイツは優しくて容姿端麗の代わりなのか何なのかオレより下手で怒られもしなかったが、中三になると休みがちになり、そう思っている内に来なくなった。今思うとアイツは辞めるかどうか迷い助けを求めていたかもしれない、というか絶対に。形式上だとしても居場所を失ったアイツの隣にオレはいなかったのだ。連絡したのは辞めた後になって。オレはアイツの感情の機微を察知できず自分のことしか考えていなかった、いや辞めない自分のことさえ考えていなかった。そういうオレも含めて切り捨てるアイツの方が賢かった。アイツのことは好きだったのに終わりも始まりも部活だなんて皮肉が効いていて笑えない。部活を辞めてからアイツとの繋がりは希薄になった。

「おい〇〇!何でそこでそんなことしたん!」「ちゃんと注意して見ろよ!」「お前ベンチな」帰り道甦る甦る。一人家に着いて、荷物を洗面台に全力投球して引き出しから小型ナイフを取り出して、まず机から切り刻みたい。何回も再生される、野球をしていた頃の声と顔と態度。あの糞監督と何処から湧いて出てきたかも知らないジャージ姿のジジイが指差して言ってくるんだよ。 オレの中で怒鳴り散らしている。家族セットでお得に殺してやりたい。人殺しに行きたいな。殺したい奴の顔が次々と浮上する。うるせー黙れ。幼稚?なのはお前だよね自分のルールで動きやがって。「辞めちまえ!」は?殴り殺すぞ。てか辞めさせろよ。何で辞めさせてくれねーんだよ。何で油汚れみたく頑固に引き留めるんだよ。勉強辞めようとしてもそうは食い下がらねーだろお前本当に自己中心的だ。お前の操り人形じゃねーんだよオレは。あんたの為にスポーツさせた?よくそんな台詞吐けるな。そんで嘘つくなお前の為だろとことんご都合主義だな。オレがいつ楽しいって自分の口から言った。親父はスポーツ選手にしようとオレを産んだ。 他にやりたい事は何もさせて貰えなかった。挙句拳も振るわれた。こっちも対抗して今みたいに凶器を振るうべきだったと反省している。オレの半端な優しさが裏目に出た際たる例だ。「優しく指導した」は?どの口が言ってんの?オレがどれだけ罵声を浴びて我慢してきたか。娯楽の中で何故か怒られた。バットで背中を四回突かれた。これは注意だとだまくらかされた。オレはあの時納得させられていた。偽りの努力顔で受け入れる演技をして、偽りの写真撮られて、偽りの自分に気付けたはずの心まで偽って。死ねよお前人生捻じ曲げやがって。あぁぁぁファザーファッカー!頼むよ死ねよ糞親父。あぁぁぁぁオレも馬鹿だった!みんなも馬鹿だけど!死ぬ前には野球選手誰か殺してから死のう!それかナイフ持って人殺す競技ないかな。それだったらやりたいかも!恨みまだ晴れない、ただ時間経っただけ。殺せば落ち着くと思う。殺したいよぉ。死ぬまで謝罪してオレが飽きたら死ね娯楽に耽るな辛苦に沈み込め。野球はオレの恥、汚点、過ち、黒歴史。滅びろカルチャー、ファンと共に。頭の中の人、気持ち悪いから近寄らないでくれる?気持ち悪い奴らは殺そうでも我慢しなきゃ。うぇ頭がおかしくなっちゃったんだろうね殴り殺したくなる。ハンマーも頂戴いつまでも受け身じゃだめ、こっちから殺さないと!壁を割って家を壊そう取り敢えず何処か刺したい!

 辞めさせろ!部活を辞めさせろよ!辞めているはずなのに何でフラッシュバックしてくるんだよ。あぁでも直接下手なこと言わなくてよかったよどうせ殴られるから、腐臭の濃い八年間だったなーって。あんなもの一片も価値ない当然役に立たないオレの人生随一の闇。十年分の恥恥ずかしい気持ち悪いスポーツやってましたなんて身の毛よだって他人には言えない。履歴書に書くなんて考えられない世間は何考えているんだか。今でも頭を過ぎるからその恥が。そのせいで暴れてまたまた無駄な時間過ごす。もう朝じゃねーかよ死んでよ。お前頭から帰れよさっさと近寄るな邪魔だから辞めろよ。あんな部活入らなければよかった。もっと自分の為に生きていれば良かった。溝のせいで人生穢され自分が騙されていたことに気付けば人生の効率高まって皆を無視できていた。

 ……それでも可愛く、ね!ありたいもんね。失った人生は取り戻せない、他人の人生奪うしかない。だから早く死にますようにと祈るだけ。こういったことを忘れては駄目だ。また同じことを繰り返さないようにしなくちゃ。他人の妄言は無視して自分のやりたいことをやる。だってオレの人生は他人の何万倍も価値があるのに、その内の数時間どころか数年間を奪うとか犯罪だよ?失敗だよぉオレの人生。生まれ変わったらもっと違うことを、生まれたくもないけどなんで毎回毎回嫌な思い出腹立つな毎日毎日の生活毎日毎日ほら面倒くせー全てが。死と賠償金を以て償え。しかし正しく格好よく面白くあれる今は一番、楽しいな!まぁとっとと死んでくれって感じで、色々殴ったらスッキリした。

 でもこのままハッピーエンドで終わると思うなよ。こっちは今でも一人でいつも終わった顔している。まぁ嘘なんだけどね!みんなの糞みたいな顔の方がつまんねーから切り上げだ。店長は辛気臭い顔作りながら明日月曜日のシフトを送ってきた。この方が偽りでない本物の気持ちでいられるよ。朝八時から付けたテレビはスポーツコーナーを不適切ながら放送する。これはいかんなと思ってリモコンで優しく注意した。スポーツスポーツって言ってきたけど、まぁ馬鹿のやることは放置しまして。馬鹿の生存価値を担保する砦、みたいなところもあると思うのでね。とにかくみんなもスポーツなんてやらなくていいからね。本当に何の役にも立たないから。その辛い思いや後悔は大人になっても消えないよ。それより大事なものを見極めて、一回きりの人生、好きなように生きよう。青春の汗と涙は違うものに流そう。スポーツを滅ぼそ。

 ま。

 誰かを殺す程の事じゃないか、と冷静になって辺りを見回す。もっと貧困やら冤罪やらで、残忍に時間を奪われている人は沢山いらっしゃるはずだった。スポーツごときで癇癪起こすリッチな一時も程々だぞ。けれどこういう些細なことから事件は起きるから。スポーツが人格形成に支障を来したことは間違いない。アイツとの関係も拗れた。同時に辞めてれば今でも、とか。未練がましいな。ごめんねと謝りもしたい。スポーツ以外で、アイツと出会いたかったな。もういないけど。


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