ダブルガールズトーク

 1;海美「あ、おはよーアンズちゃん!相変わらず学校来るの遅いねっ。それよりねぇねぇアンズちゃん、昨日のパン屋さん、行ってみた?どうだった!?一日限定のコーヒーチョコパン、食べてみた?あたしは食べれたよっ。残り三個だったから、全部買っちゃった。後ろのお客さんにすごい目で睨まれたけど、気にせずその場で食べたよっ。アンズちゃんは?」

 2:杏子「ヤっ、おはヨっ、うみちゃン。そうだそうダ、例のパン屋についてネ。いやぁ実は恥ずかしながラ、コーヒーチョコパンを買い逃してしまったんだヨ。本当はすっごく食べたかったの二、部活が長引いてさァ。授業終わってから、みんなダッシュで買いに行ってたものだからナ。部活終わってすぐ向かってモ、そのパンどころか他のパンまで売り切れていたヨ。部活終わりの癒しのパンが味わえないなんテ、悔やんでも悔やみきれなかったヨ」

 3:海美「えー、それは残念ー。濃厚なコーヒーのコクとくどくない甘さのチョコチップが絶妙なバランスで調和していて、それを包み込むパン生地のふわふわ感と言ったら爽やかな草原の中にいるかと思うほど素晴らしかったのに。お供に買ったコーヒー牛乳も当然のように相性ばつぐん。あーあー美味しかったなぁ。良い経験したなぁ。もう食べれないんだよ。どう、羨ましくない?羨ましいでしょ?」

 4:杏子「そうなんだヨ。辛いけド、部活第一でやってきたからネ。あれは小学生の頃だったかなァ。母親も学生時代バレー部だったらしくテ、よく家の前でボール遊びに付き合ってくれたんダ。小学生低学年の頃は趣味程度でバレーを楽しんでいたんだけド、四年生あたりからクラブ活動が始まってネ。校内のチームに所属してからハ、無遅刻無欠席で練習に参加したシ、試合にも出させてもらえたりしたヨ。中学生になってからもこの通リ、現役バリバリで続けているとこロ。朝練もしっかりこなすのさサ。でも代わりにお腹が空いて仕方ないヨ。お腹空いたナ。うみちゃんを食べちゃいたイ、なんテ」

 5:海美「おーおー、了解だよ。アンズ様のご命令になされるがままになろーじゃない。はい、よいしょ。うん、どう?これで満足?想像するまでもなく知ってたけど、近いね。顔と顔が触れ合うかってくらいの距離かな。そんな食い気に溢れた顔されたら、ドキドキしちゃうなー。よもや食べられちゃいそうだなー。きゃー…………あーれー、襲わないの?」

 6:杏子「う、うン………………でもいマ、ちょっと本気になりそうだっタ……」

 7:海美「そーかえー……お、チャイム鳴った!授業中もこのままお喋りしてよっか!」

 8:杏子「いやいヤ、そんなまさカ!一言も言わないヨ!沈黙の限りを尽くしているヨっ。沈黙だけを認めるもンっ」

 9:海美「釣れないなー。そこは許さないのが良いんでしょうに。あたしがドエムだと知っての狼藉ー?とにかくあたしに色んな言葉を吐いて、めちゃくちゃにして……?」

 10:杏子「おーケー。しーーーーーーっ、ネ」

 11:海美「はぅっ、あひゃんっ、ぐひぅう、はぁ、はぁん……!!!な、何じゃあこりゃ、この気持ち良さぁ…………さぁ、最高……!!良い……!!直球だからこそ伝わる最大の侮蔑……!そのたった一言が、あたしの心を蝕んでいく……!もちろん、良い意味でっ……はぁぁぁんっ」

 12:杏子「ねぇねェ、自分が言ったことだシ、激しく集中しているところ悪いけどサ、鉛筆忘れちゃったかラ、貸してくれなイ?昨日六月末が提出期限の課題を持って帰って家でやってたんだけド、置いてきちゃったみたいなノ。自分ったラ、おっちょこちょいなんだかラ。ドジっ子の才能でもあるのかナ。そんな訳デ、お願イ」

 13:海美「はぁ、はぁ……で、でしょ?わたしは気付いていたよ。アンズちゃんはそういうことに関しては天才だって。その能力はこれからも遺憾無く発揮して欲しいな。それがアンズちゃんの萌えるところで、あたしが刺激されるところだもの。じゃあこれは、貸し、になるね」

 14:杏子「ありがとウ。これで授業中の板書は解決したヨ。昼休みになったラ、購買かコンビニで新しい鉛筆を買いにいくとしよウ。それまで使っているネ」

 15:海美「あぁんもったいない。もっと使っていいのに。放課後までやっててよ。もっとぐちょぐちょに、出し尽くすまでかき乱して、わたしのそれを虐め抜いて欲しいのにーーー」

 16:杏子「了解りょうかイ

 17:海美「え、本当?どこまでシてくれるの?」

 18:杏子「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ア、チャイムが鳴っていル。もう昼休みだヨ。うみちゃン。反応無いけド、起きたまま寝てたりしてないよネ?うみちゃーン?」

 19:海美「はは、冗談冗談ー。もはや目と目で通じ合えているよ、アンズちゃんっ。わたし達なら目隠しで視覚を封じられても意思疎通できそうだけどねー。でも目隠しされたら理性が飛んでゾクゾクしちゃいそうっ。思い浮かべただけでご飯三杯投げつけられたい。熱々のご飯を無理矢理食べさせられたい。やはり食欲が収まらないよ。それか別の欲望かな?わたしって強欲ー。というか、こうしてイチャイチャしている間に昼休みになったよ!もうそんなに時間が経っていたとは。驚きですなー」

 20:杏子「そ、そうカ。流石うみちゃん、覚醒しているネ。まぁお昼になったことだシ、お弁当を囲もうヨ。鉛筆は後で買うかラ。今日のお弁当はちょっと豪華だヨ。昨日課題に取り組み中の自分を見テ、お母さんが張り切って料理を作ってくれたんダ。その余り物が大量に入っているかラ、お昼が楽しみだったのサ。部活で動く分モ、たくさん食べないといけないシ。じゃア、食べようカ」

 21:海美「どうぞー。……こうなると暇だなー。わたしもお金持ってくればよかったなぁ。そうすりゃアンズちゃんと一緒に居られる時間も増えたのに。そしたらもっと過激なプレイに興じられたかもしれないのに。あーあー、くっそー。一限の前に食べ物の話で優位だったわたしが、今では落ちぶれた気分だよ……。アンズちゃんが居ないと、マイナスの気持ちはプラスに変換できないんだよぅ。早く帰ってこないかなー、かなかなー…………あっ」

 22:杏子「うン、もちろんいいヨ。はイ、あーン。ふふフっ、近付く顔ガ、可愛いネ。うみちゃんのくちびル、ご飯粒が付いてるヨ。取ってあげル。そして、食べちゃウ。えへヘ、やったァ」

 23:海美みみ「……やっぱり、アンズちゃんのことが、好きだよぅ。プレイの関係なんて、関係ないよぉ。アンズちゃんのことが、アンズちゃんのことがぁ。同性として、大好きだよぉ」

 24:杏子あんこ「……自分もだヨ」


 1.5:餡子「おぅおはよ、みみぃ。例のごとく電車が遅延しやがったんだよ。園田市都線がな。もう慣れたけど、つい遅くなっちまうな。いざとなれば証明書あるから大丈夫なんだけど。で、パン屋?何だそれ?正門の向かい側のあの店のことか?アタシそんな話聞いてない。チョコ、コーヒー、パンだって?そんな甘ったるそうな食いもんより、昨日はカップラーメン食べてたっつーの」

 2.5:海未「あんこさんおはようございます。コーヒーですか。私、コーヒー苦手なんですよ。独特の癖、って言うんですかね。鼻の底にいつまでも残る感じがどうしても。皆は香り深いと評しますけど、私の舌には合いません。スイーツやパンは甘過ぎるくらいが好きですかね。それはともかく、部活、忙しそうですね。バレー部、そろそろ大会があるらしいじゃないですか。教室の他の部員さんも忙しそうです。新しく席替えしたためか皆の様子がよく見渡せます。あんこさんも尚部活着のままで、制服に着替える余裕なんて無いようですね。朝練ですか?」

 3.5:餡子「あぁ、朝から面倒だ。別に望んでないのに。アタシは甘いより辛いのが好きなの……って、こんな話してると朝からお腹空いてくるから止めろ。授業前から早弁って、恥ずかしい過ぎるし。バレー部のやつらは遠慮なく食ってるみたいだが。とにかく食い物の話題は却下っ。ほら、授業の準備でもしたした。席に戻りな、みみぃ」

 4.5:海未「分かりました。では私を食べてください……冗談です。今のは無かったことにしてください。ともかく、あんこさんは自分に厳しいのですね。欲も惜しんで精を出す姿、立派です。対する私は生徒会に参加していますが、二学年目なのであまり多忙じゃないのです。先輩方は夜遅くまで残っているとお聞きしますが。将来的には私も夜勤を務めるようになるのですかね。生徒会長に立候補するつもりなので、覚悟しておかねば、ですね。おっと、少し個人的な話が長引いてしまいました。では、席に戻るとしましょう」

 5.5:餡子「よしよーし、みみぃ。一旦落ち着こうな」

 6.5:海未「まぁ、席に戻ると言っても、直ぐ前なんですが……ん、何か言いました?」

 7.5:餡子「アタシの話聞いてないのかよ。全然反省してないな。まぁ許すけど」

 8.5:海未「それなら良かったです。ではもう先生がいらっしゃるので、引き続き静かにしましょうか」

 9.5:餡子「面倒くさっ……この機会に遠慮なく言わせてもらえば、みみぃ、お前本当は相当なアホだぞ。くるくるぱーのぱっぱっぱーだ。アタシが一番近くにいたから一番知っている。小学生の頃から頭が悪くて、ここに入るのも一苦労だったんだよなぁ?いつまでもそんな脳みそ天国状態だとこの先やっていけるのか?部活動もしないで、ただひたすらのんびりとお茶を啜っているような空間に存在して何になる?中途半端に女子中学生的な生活に身を置いて、将来のことは考えているのか?馬っっっっっっっっっ鹿じゃね?」

 10.5:海未「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 11.5:餡子「……全く。楽しそうで、何よりだよ」

 12.5:海未「まぁいいです。何よりも、あんこさんのことを尊重しますから。あんこさんは私の大切な人にちがいないので。ご自由に、どうぞ」

 13.5:餡子「前者は思い切り嬉しがるとあれだけど、後者はその通りだ。アタシが自らすることだからな。その言葉は素直に受け止めるよ。それにしてもみみぃは良い性格してな、おい。人になじられても嫌がるどころか、嬉々として受け入れるなんて。アタシだったら考えられねーぞ。って、こう言ったらまた罵詈雑言の嵐が再発するな。もう汚い言葉は止めておこ」

 14.5:海未「それですか。それでもいいです。私はまた集中モードに入りますので、どうぞよしなに」

 15.5:餡子「諦めろ、な?」

 16.5:海未「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 17.5:餡子「お前絶対日本語通じてないだろ」

 18.5:海未「……あ、本当ですね。分かっていませんでした。ただ薄々勘付いてはいました。少しぼーっとしていただけで。えぇそうなのです」

 19.5:餡子「あっそ。妄言はいいとして、確かにもうそんな時間だ。今日の授業は何だかあっという間に進んでいくな。じゃ、購買行ってくらぁ」

 20.5:海未「お昼ですし、それがいいですね。私は質素な手作りお弁当です。生徒会役員たる者、しっかりと自立した生活が求められますからね。では、いただきます。おぉ、あんこさんの持ってきたものは重箱ですか。とても美味しそうです。凄いです。本当に、本当に……少し、くれませんか?あまりに綺麗な食材達で、涎が出てしまいそうなので、役員としてだらしないと思われないように、一口分けてくれませんか?あーん、ってしてくれませんか……?」

 21.5:餡子「あーんしょっと。ただいま。おうおうどうした、勢いよく抱きついて。もしかして、この数分離れたのが寂しかったのか?たったこれだけで?子供っぽいというか、ドエムの割に珍しい反応するな、お前」

 22.5:海未「……もう、からかわないでくださいよ。でも、そんなあんこさんも好きです。改まって言うと照れますが、私、あんこさんのこと、友達として、すごく好きですよ。お茶目で、可愛らしいですし、世話焼きな部分も好きです。一生、友達でいたいと思っています。あんこさんは、どう思ってますか?」

 23.5:餡子あんず「は?何言ってんの?」

 24.5:海未うみ「そうですかっ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る