第52話 キョウキック

 今日は爽やかないいお天気なので、転移を使わずのんびり田舎道を歩いて南下している。

 プラチナブロンドに藤色の目の冒険者フジの姿で、髪を三つ編みにしUVカットのつば広の帽子を被って、ローブではなくポンチョを着た春の旅装だ。

 

 先日のアーズ町のお祭りでの福引きはなかなかの客入りだった。お祭りで財布の紐が緩むのは異世界でも変わらないようである。

 福引きは商品毎に価格を考えなくていいから楽だ。猪鹿蝶の商品は価格をどうするかいつも悩む。カヒロさんが相談に乗ってくれるので助かっているけど、適正価格が表示される魔道具があったら欲しい。


 行商では価格を高めに設定しないとな。運搬の経費を価格に上乗せしてる他の行商人に迷惑をかけちゃいけない。

(行商しながら各地のお祭りを巡るのもいいな。フーテンのハナさんと呼んで)


 今日のお供はダンジョン蛇食鷲のキョウだ。

 ジャクも連れてくるつもりだったが、寝ていたのでやめた。巣にみっちりはまって寝ているジャクは何度見ても可愛い。


 キョウは私に付き合って飛ばずに歩いてくれている。

 この数か月でぐんぐん大きくなって、横に並ぶと頭の位置は私より少し低いくらい。足の付け根は私より高い。モデルがウォーキングしてるみたいだ。


「おい、女が派手な鳥連れてるぜ」

「見たことねえ鳥だな」

 

 前から男二人がダミ声で話しながらやって来た。

 今は行商ルート開拓のため王都方面ではなくゴダール領南部に点在する村に向かっている。利用者が少ない道なので、人とすれ違うのは今日初めてだ。


 男二人は私達を見てニヤニヤしている。格好からすると冒険者だろうか。一人は槍、一人は剣を持っている。

 とても感じが悪い。

 

「生け捕りにしようぜ。金持ちに高く売れそうだ。ギャハハ」

「ヒヒヒッ、鳥も女もな、ゴフッ」

 キョウが男Aの腹に蹴りを入れた。


 私の横でバサッと羽を広げたと思ったら、キョウは一瞬で男達の前に移動し攻撃していた。うずくまって動かなくなった男Aに続き男Bに襲いかかる。

「やめ、ぐあっ」

 ガッガッガッガッガッ

 倒れた男Bの顔を何度も踏みつけるキョウ。

「うっ…」

 あら〜、弱〜い。


 キョウが男Aに追撃する。

 ガッガッガッガッガッ!

「!!!」

 あら〜、股間に蹴りが入ったみた〜い。


「キョウ、人間の死体は始末に困るからほどほどにね」

 うちのキョウは綺麗だけど戦闘スタイルはめっちゃガラ悪いからな。

 その容赦ないところが素敵。


 キョウは締めに転がってる二人の頭にキックを入れてから、何事もなかったかのように優雅に私の隣に戻ってきた。

「お疲れさま」


 邪魔だから帯剣してなかったけど、人がいる場所では攻撃力をアピールするために武器を持ってた方がいいかな。


 今回は雑魚相手にちょっと過剰防衛だったかもしれないが、男達の自業自得だ。相手が悪かったね。

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