第12話
僕の眼前にはまだニヤニヤと笑っている神が僕の反応を楽しむ様に見ている。話題を逸らしてみるか。
アキラ「それで、頼みたい事ってのは?」
神「ん? ああ。簡単な事だよ。僕が創った異世界に行って貰いたいんだ。」
アキラ「何をしたらいいんだ?」
神「いや、特には何も。」
アキラ「……は?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった。神とやらの目的がまるで見えないからだ。
神「君の好きな様に生活でもしてればいいよ。別にやって欲しい事がある訳でも無いから。特に期待もしてないし。」
アキラ「何の為に行くんだ?」
神「娯楽だよ。」
アキラ「娯楽?」
神「そう、君達の世界にもテレビや映画なんてあるだろう? それと同じで君に主役でも演じて貰おうと思ってね。」
ようやく理解した、こいつを楽しませる為だけに異世界は創られ、僕はピエロを演じる為に生き返らされた、だとしたら。
アキラ「お前は命を何だと思ってるんだ!?」
語気が強まる。
神「君はその命を軽々しく捨てたけどね。」
言葉に詰まった。正にその通りだ、こいつの言う通り僕はさっき死んだ。自殺でだ。そんな僕に言う資格は無いのだが、
アキラ「異世界の住民は関係無いだろ?」
神「別にいいだろ? 僕が作った物だ、君にどうこう言われる筋合いは無いよ。」
アキラ「確かに異世界の人達も創造主であるお前に感謝してるかもしれない。だけどお前は間違っている!」
あの世を見てきた僕は今なら胸を張って言える。命を弄ぶ行為なんて間違っている!
神「ははは! 君は二転三転したりと忙しいね? 今度は、あくまで僕に楯突くんだね? 媚を売ったりしないのかい?」
高笑いを浮かべながら神は言う。
アキラ「お前のご機嫌を伺ってどうなる? 機嫌を損ねたから殺すってか? 生憎だがお前が怖い訳じゃない! 死ぬ事が怖いだけだ!」
そうだ、遅かれ早かれいつかは死ぬ。回避できる方法などない。だから、今また死ぬ事になっても諦めよう。そう思えるほど、こいつの言動に対して冷静でいる事が出来ない。
神「へー、そうかい。今なら特殊能力や特別な環境を与えてから異世界へ送ってあげてもいいんだよ?」
アキラ「信用出来ないやつから信用出来ない物を貰っても意味が無いだろ。例え本当に特殊能力を貰えたとしてもお前は馬鹿にするんだろ?」
神「いやいや馬鹿になんてしないよ。ただ、僕の人間観察がより楽しめるんだよ。」
アキラ「それが馬鹿にしているんだ!!」
僕は今度は怒りで顔を真っ赤にしてしまった。
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