第8話 とある貴族side


---ある貴族令息side---


今日は卒業パーティーだ。

実にめでたい日である。


そのはずなのに、王太子がセレナ様に向かって婚約破棄をすると宣言している。

前々から、バカだバカだとは思っていたが、まさかこんなことをやらかすとは。

さすが、天下に轟くバカ王子といったところか。


ん?王太子のそばにいるのはたしか、評判のすこぶる悪い男爵令嬢じゃないか?

つまり?王太子は浮気していたということか。


バカなのか?

浮気していた側から婚約破棄?


いやいや、ありえない。

普通、浮気がバレて婚約破棄されるとかならわかるけど。


なんかよくわからんことを言い出したな。

セレナ様がいじめ?

ありえないな。

セレナ様は、というかオルステイン公爵家は、国にも貴族にも、平民にも、多大な恩恵を与えている家で、公爵家の人たちはそれぞれ才能にも恵まれているため、いろいろな事業をやったり、セレナ様に至っては王妃教育を受けたりしている。

だから、セレナ様は多くの人から慕われ、常に周りに誰かいたし、本人も忙しい。

そんな方が、たかだか男爵令嬢に対していじめなどしている暇はない。

というか、する必要もない。

だって、セレナ様が王太子殿下を嫌っていることは誰がみても明らかだったし。


お?なんか男爵令嬢が泣き出したな。

いや、あれは嘘泣きだな。

王太子がそれを慰めてるし。

もう2人だけの世界じゃん。


はあ、もうみんな呆れてるよ。

ほら、周りの貴族だって軽蔑の眼差しを2人に向けてるし。


あ、セレナ様帰っちゃったな。

どうしよう、このままここにいても卒業パーティーはもう台無しだし。

それに、公爵家はもう王家を見限るに決まってる。

公爵が息子と娘を溺愛してるのは有名だしな。


だいたい、この国が公爵家なしで成り立つわけがない。

公爵家はこの国で唯一、ミカルネス王国との交流がある国で、天然資源のほとんどは公爵家を通してこの国に入ってくる。

その上、公爵家の長男は商売の天才だというのは有名で、大陸でもかなりの大商会を持ってる。

この国の税の4割は公爵家から出ている。

いくら大国とはいえ、公爵家がこの国を大国たらしめていた存在なのだから、この国は終わりだ。

公爵家がいなくなれば、帝国が攻めてくる。


ならば、沈没寸前の船に乗り続けるわけにはいかない。

公爵家に対して、王家に味方する者ではないとアピールの意味も込めて、早くここから出よう。

そして、家に帰って父上に報告しなくては。


なんだ?後ろで王太子が騒いでるなあ。

まあ、無視してもいいか。

どうせ、もうコイツらは終わりだしな。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る