第2話 やっぱり分かっていないのね



「貴様!この期に及んでまだアイリをいじめるのか!」


まったく、この状況でそんな言葉を言える殿下を逆に尊敬しますわ。


「はい?殿下の目には今のやりとりが、わたくしが、デプス嬢をいじめてあるように見えたのですか?」


「うるさい!もともと私は貴様が気に入らなかったのだ!

いつもいつも私を見下したような態度を取り、私を馬鹿にしていたではないか!」


はて?殿下を馬鹿にした?

ええ、たしかに、頭の残念な方だとは思っておりました。

実際、社交界では、王太子殿下は顔だけは王族らしく美しいものではあっても、それ以外が全て最低と言われておりましたし。

王太子殿下より、第二王子殿下の方が数倍、いえ、数十倍優れていることは周知の事実。

しかし、わたくしがそれを口にしたことはありませんわ。

これでもわたくしは元婚約者でしたので当然といえば当然ですが。


「婚約の破棄は承諾いたしますわ!

しかし!その理由を、しっかりとお聞かせ願いますわ?」


「なに!?だからそれは、貴様がアイリをいじめたからだと、」


「ですから、それに関しては、まったく証拠がない、どころか、わたくしには不可能なものまであるということはすでに明白です。」


「そんなもの!アイリにだって多少の勘違いはある!

だいたい、お前が誰かにやらせたに決まっている!」


そんなに声を張り上げて何を宣っているのやら。

はあ、この不毛な会話はまだ続きますの?


「ですから、証拠はありますの?

もちろん、証拠もなしに私を断罪しようとしているのではありませんわよね?」


「なに?証拠など、アイリの証言で十分ではないか!」


本当に呆れる。

周りをご覧になってわからないのかしら。

今周りにあなたの味方は1人もいないのですよ?

それどころか、このままいけば王家も国も破滅ですわよ?


「それでは証拠にはなりませんわよ?」


「なっ!?ふざけるな!

貴様!アイリが嘘をついているというのか!」


「ちなみにお聞きしますが、殿下とそこのデプス嬢とは、どのようなご関係でいらっしゃいますか?」


「ふんっ!まあ、教えてやろう、私とアイリは愛し合った仲、真実の愛で結ばれているのだ!」


はい、浮気を声高らかに宣言致しましたわね?

ここにいるすべての方々が証人ですわよ。

それと、デプス嬢が何故か胸を張っているのがイラつきますわね。

さっきまで殿下に泣きついていたのはなんだったのでしょう。

殿下もあの程度の令嬢に騙されるなど、全くもってバ、いえ、少々頭が残念ですわね。


「分かりました。では、殿下とアイリーン嬢は真実の愛で結ばれており、それにあたり、わたくしとの婚約は障害となっている状態のため、婚約破棄をする。と、それでよろしいですか?」


「なんだ、物分かりがいいではないか。

そういうことだ、悪く思わないでくれ。」


ふふ、偉そうにしてますけど、わたくしに無実の罪をなすりつけようとしたこと、浮気をして婚約破棄をすること、その罪をすべて償っていただきますわよ?


「しかし殿下、殿下はわたくしとの婚約破棄によって生じる損害を、どう補填するおつもりですか?」


「なに?貴様との婚約破棄に損害などないわ!」


やっぱり分かっていないようね。

わたくしとあなたの婚約の意味を。

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