game 18:ポーション・エクスプロージョン
18-1 爆発の連鎖、つまり面白い仕掛け
日曜日に、
手土産はオレンジとヨーグルトムースのタルトだった。
そして当然のようにわたしも呼ばれて、兄さんの部屋でタルトを食べていた。
兄さんは遊びたいボードゲームがあると言い出したけど、それは霧の中を彷徨うゲームだったり、誰かが殺されるのを止めないといけないゲームだったり、逆に誰かを殺してお金を奪うゲームだったりした。
そんなものを体験したくはないから、わたしはそれを拒否した。そういうゲームを遊ぶなら二人で遊んで、と。
言い合いになったわたしと兄さんの間に、
「俺が選びますから」
そう言って、
一年生の最初の頃は、それでも
だというのに、こんなふうに「
タルトをもう一口。タルト生地が口の中でほろほろと崩れて、ムースの滑らかさがそれを包み込む。酸っぱさは刺激的で、でも甘さは優しい。
そうやっているうちに
ピンクの雲──煙かもしれない──を背景に、緑色の文字で『ポーション・エクスプロージョン』と書いてある。その下には、赤いローブを着た白い髪と白い髭の人が、何やら実験器具のようなものを手にしている。
その手の器からたくさん繋がったフラスコに注がれるのは緑色の液体。それはフラスコの中で赤紫色になる。そして、そのフラスコから白い
背景には黒板。白いチョークでフラスコの絵だとか、何か丸いものだとか、読めないけど文字らしきもの。あとは、液体が入ったらしきたくさんの丸い何か。
「ふうん」
値踏みするように目を
「いかさん、『ポーション・エクスプロージョン』持ってたんですね」
「第二版出たときに。排出器がプラスチックになったって聞いて、だったら持っておいても良いなって思って」
そんな会話を交わしてから、
「いかさんの気分としては、このゲームどうです?」
「俺が今遊びたいゲームはさっきも言った通りなんですけどね。まあでも、楽しいゲームですよね、これも。良いですよ、このゲームで」
「良かった」
ほっとしたように微笑んでから、
「どんなゲームなの?」
「舞台は魔術学園なんだ。そこの生徒になって卒業試験を受ける。卒業試験は、魔法薬を調合すること。魔法薬の材料を集めて、魔法薬をたくさん作って、たくさん点数をもらえた人が主席として表彰される、つまり勝ちってゲーム」
「魔法の薬を作るってこと?」
「そうだね。薬はレシピが決まっていて、そのレシピ通りに材料を集めるのがゲームの内容。材料集めが面白い仕組みになっててね。開けてみて大丈夫?」
問いかけられて頷けば、
蓋の下から出てきたのは、まずは箱より一回り小さい、箱と同じデザインのルールブック。
ルールブックの下には、ピンク色の内箱の仕切りに何かのタイルやチップが綺麗に収まっていた。そして、箱の大部分を占めているのは、茶色い箱のようなものだった。
箱の上の端っこに四角い穴が五つ並んでいる。その穴の反対側、箱の側面から飛び出した部分には五つの溝が並んでいた。その溝には傾斜があって、なんだか滑り台が並んでいるみたいに見えた。
「これが、材料排出器」
「材料排出器?」
何をするものなのかわからなくて、
箱の裏側に空いていた穴に指をかける。それは引き出しだった。その引き出しの中には、たくさんのいろんな色のビー玉が入っていた。
「このビー玉が材料玉。魔法薬の材料だね。これを、この上の穴から入れるんだ」
言いながら、
やがて、カラフルなビー玉が五列の溝にぴっちりと並んだ。
「こうやって出てきたビー玉を選んで取る。一つ取ると、上から新しいビー玉が転がってくるって仕組み」
「なんでわざわざこんな仕組みになってるの?」
「そこがこのゲームの面白いところなんだよ」
「例えば、ここの赤いビー玉を取るとするよね」
そう言って、そのビー玉を一つつまみあげる。そうしたら隙間ができた分、上に並んでいたビー玉が転がってきた。そして、かちんと小さな音を出して、下に並んでいたビー玉にぶつかった。
「赤いビー玉を取ったことで、ビー玉が転がってきたよね。この時、ぶつかったビー玉が同じ色どうしなら爆発が起きるんだ」
「爆発?」
不穏な響きの言葉に、わたしは顔をしかめてしまった。
「爆発って言っても、怖いことはないよ。逆に、プレイヤーにとっては嬉しいことなんだ。爆発が起こると、そのぶつかったビー玉と並んでいる同じ色のビー玉が全部手に入る。今回は、下に黒いビー玉が二つ並んでいて、そこに上から黒いビー玉が一つ転がってきたから、この三つの黒いビー玉を全部もらえるってこと」
ひょいひょいひょいと、
「そして、爆発は連鎖するんだ。今度は黄色いビー玉どうしがぶつかったから、この黄色いビー玉二つも手に入る。こうやって、できるだけたくさんの材料を集めて、自分の魔法薬の完成を目指すってゲーム」
「そっか、うまくいけば一度にたくさんの材料が手に入るってことか」
「そう。魔法薬を完成させたらいろんな効果が使えるようになるから、そんな効果も組み合わせて、一度にできるだけたくさんの材料を集められるように考えるのが、このゲームの面白いところ」
それに「良いよ」と頷く前に、耳の奥で「生徒諸君」と呼びかける声が聞こえた。それでもう、わたしは
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