第10話  首都へ

 フォルクス達は翌朝のかなり早い時間に出発する事にした。時間的に余裕がなくなり、今までのようにのらりくらりとゆっくり景色を楽しみながら行く事が出来なくなったからだ。


 というのは、年に1回ある魔法学校への入学申し込み手続きの締め切りまであと3日しかないという事が分かり、急いで向かわないといけなくなったからだ。


 空荷で馬に乗る場合であればなんとか2日、つまり期限内には着くだろうというような距離だそうだ。また、ギルドにて懸賞金や盗賊から奪った金貨等を全て大金貨に換金して貰った。勿論普段使う為のお金もそれなりに持っているが、魔法学校への入学時に出さなければならないお金は基本的に大金貨での支払いになると言っていたからだ。


 大金貨は金貨100枚で1枚になるのだが、普通の生活の中では中々使わない種類だ。生活費などに必要な分は通常の金貨や銀貨が必要になるが、それ以外のお金は全て大金貨にしてある。


 町を出た後、2人はひたすら首都を目指し馬を走らせていた。勿論全力ではないのだが、 馬がバテない範囲で軽快に走らせていく。


 馬の負担を減らしたいので、自分達の装備品等を極力外していた。最低限皮鎧だけは外せないので、防具は革鎧のみだ。武器は短剣と投擲用のナイフを数本のみだ。尤もいざとなれば収納から武器を出して対処する事としている。それにフォルクスには魔法があるので、武器を出納から出す時間を稼ぐ位は十分可能なのだ。

 

 道中は何事も無く順調に進み、期限の前日に首都に辿り着いた。


 町に入る手続きをする為の時間は何とかなる。試験の申込みにも何とか間に合いそうなのだが、首都について2人共殆ど知らなかった。情報を集めないと町に着いてからどんな街なのか、どこに何が有るのか等何も分からないままいきなり手続きをしなければならない。道中魔法学校についても場所以外調べる時間的余裕がなく、殆ど何も知らない状態で向かう事になる。


 その為に多少なりとも日程については余裕が欲しかったのだが、実際は行き当たりばったりだった。


 2人共大男なのだが、殆ど装備を身に着けていない為、馬に掛かる負担が少なく順調に歩みを進めてくれた。馬も頑張ってくれたので、なんとか魔法学校への入学試験の申し込みの締切日の前日に町に入ったので2人は安堵していた。ただ、馬には可哀想な事をしてしまった。


 夕方少し前だったのもあり、とりあえず魔法学校の入学試験の申し込みの手続きをする場所を門番の所で聞いていた。流石に首都の為かなりの高さの防壁に囲まれた大きな町だった。町の入り口にある門での検査もかなり厳しかった。勿論犯罪者のチェックなども行われて行く。特に他の町から馬車で来た者達には厳しく、馬車の中の荷物まで確認されているような状態だった。


 だがフォルクス達は殆ど何も持っておらず、荷台をちらっと見るだけで済み、荷物検査の必要が無かったからそのまま通されていた。実際はギルドマスター発行の魔法学校への推薦状が有った為比較的あっさりと通されただけだった。


 魔法学校に着くと臨時の試験受付場所があり、そこに行ったのだが、必要な物が不足していた為に突き返されてしまった。まだ1日あるので準備をするように言われた。正式な町の滞在許可証、もしくは冒険車登録があるのならばギルドにてホームタウンとして住居登録をするように言われ、それが無いと申し込みができないと言われたのだ。


 そう、こういう事があると怖いので、せめて1日位は早く来たかったのだ。

 もう本日の試験受付は閉まってしまうのでまた明日来るように言われ、手続きに際して必要な事を教えて貰った。


 紹介状も有り、結果的に明日中にはなんとかなりそうだった。不足しているのは滞在許可証もしくは町の住人である事を証明をする物のみが足りない事が分かり、今日のところは宿にて休み、明日の朝一番でギルドに行く事にしたのであった。


 宿は一度は高級宿に泊まりたいとフォルクスが言い出した。高級宿の空き部屋を探したのだが、偶々どこも満室で、結局中級宿の中では比較的上等な部屋にした。6人が泊まれる部屋しか無く、割高だが学校に行き出したら寄宿舎か寮になるらしいので、今は宿での滞在を堪能する事にした。


 朝早く起きたフォルクス達は2人して近くの空き地で早朝稽古をしていた。その後食事を摂り、着替えてからギルドに向かう事になる。


 今日の装備はいかにも冒険者です!というような服装ではなく、予備にと思って取っておいたチェーンメールにした。そう兵役に就いていた時の標準装備の格好で行く事にしたのだ。万が一を考え、手持ちで一番防御力のある格好にしたのと、長い期間使っておりサイズもぴったりなのだ。重たい事以外は慣れ親しんだ相棒であり、使い勝手が良いのだ。何故ならば、もしも試験の申し込みをし、受託された後に即時試験となり、しかも何かと戦う事になった場合に備える事にしたのだ。何を血迷ったかべソンは大剣を背負っていく。場違いなのだ。


 フォルクスも愛剣を帯剣している。


「俺達ってマンマ兵士の格好だよな。やっぱり兵士に見られるかな?」


「そうだな、まあ見えるだろうな」


 べソンはボソッと言うのだが、まあいいかとフォルクスは軽く考え、その格好でギルドに向かうのであったが、フォルクスはこれからの出来事や魔法を覚える事に期待をしていた。また、魅力溢れる異性との出会いを期待し、心が踊るのであった。

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