第7話  無邪気に

 フォルクスとべソンは紙を扱っている店で文字の練習をする為の紙を買っていた。パルプから作られている今の日本で売っている紙とは天地の差がある品質なのだが、それでもやたらと高かった。


 手帳代わりにと装丁が施された無地の本を6冊買う。1冊金貨5枚もするのだ。また、練習用の用紙は書き損じや裏紙が売られていたのでそれらも買う。新品も買うが、金貨50枚にもなった。この世界で生きるには文字を覚えないと苦しいと思い、必要経費と割り切っていた。

 万年筆のようなペンは高かったが、インクと羽ペンは安価だったので6式買う。


「なあフォルクス、1つ多いんじゃないか?」


「ああ、ひょっとしたら6人目の仲間が入るかもだろ。だからだよ。まあ、入らなければ予備になるしね」


 べソンは頷いていた。お金を払い店を出た後、服屋に向かう。  


「なあ、権利の買取とか勝手に進めたけど良かったか?」


「問題ない。俺も強い女は好きだ。あいつは少しベタベタし過ぎだが、悪い奴じゃないしな」


「そうか、なら良いんだ。ああいう子がタイプだったか?」


「まあ綺麗な子だし、性格もがさつだが、常にあの二人を見守っている優しい子だ。うん、ああいう強い女は好きだぞ。お前はいずれ二人共娶るのか?」


「うん。それなら良いんだ。二人についてだよな?うーん、どうだろうか。カーラはともかく、シーラには嫌われているんじゃないのかな?妙に俺に突っかかってくるし」


「いや、二人共お前に気があるぞ。特にシーラはぞっこんで、まだそれを認めていないだけだ。大事にしてやれよ」


「そうだな。なあ、いずれジャニス達と合流して、あいつとさ、この大陸を統一したいと言ったら笑うか?」


「いや、初夜権を潰すと言っていたから驚きはしないよ。まだすべての力が覚醒していないようだが、お前にはその力が有ると思うぞ。勿論俺も許せないから一緒にやろう!」


「うん。あの歳でさ、自分の処女が売り買いされているのって可哀想過ぎるだろ。やっぱりさ、初めての相手は好きな奴とじゃないと駄目だろ。政略結婚も許せないんだよな。俺さあ、あの子達の目をまともに見れないんだよな。涙が出てきそうなんだ。巻き込んで悪いな」


「巻き込んでなんかいないさ。俺も同じ意見だから気にすんな」


 べソンはいつの間にか泣いていたフォルクスの肩をポンポンと叩いていた。


 そうこうしていると、服屋の入り口が見えて来たが、丁度買い物した服がぎっしり入った袋を抱え、きゃっきゃっ、きゃっきゃっと談笑しながらご機嫌な3人が店から出て来た所だった。 


 シーラは満面の笑みを浮かべ、フォルクスに手を振っていた。フォルクスは彼女達の笑みを見て安堵した。


 フォルクスも手を振り駆けていく。


「おお!沢山買ったようだな」


「ちょっと悪いけどこれを持ってよ。まだあるから取ってくるから」


 てててと駆けて行く。リズもどうやらべソンに荷物を押し付けて中に戻る。


 カーラは申し訳なさそうに


「全くあの子達と来たらフォルクスさん達にお礼も言わず荷物を押し付けて。フォルクスさん、本当に感謝をしています。あの子達の笑顔は久し振りなの」


 フォルクスはカーラから荷物をひょいっと取り上げ


「俺はカーラの笑顔も見たいな。まだ荷物があるんだろ?行ってきなよ」


「ご、ごめんなさい。行ってきます」


「なあ、カーラ、こんな時は笑顔で有難うって言って、頬にキスをするもんだよ」


「ふふふ。そうですわね。有難う!」


 フォルクスの腕を引っ張り頬にキスをして中に戻って行く。少し大人びたカーラだが、店に戻る様子や、店を出てきた時の感じからは年相応な女の子なんだなと、無邪気に喜んでいる様を見てフォルクスはほっこりしていた。


 直ぐに戻ってきた。やはりもう一つ大きな袋を抱えていた。


 フォルクスは持っている袋を背嚢に入れる振りをして収納に入れていった。


 するとシーラがてけてけとフォルクスに駆け寄り抱きついて


「有り難うフォルクス!大好き」


 そうやってやはり頬にキスをされた。

 しかし、シーラはハッとなり、


「言っとくけど、感謝はするけど、こんな事位で私が靡くと思ったら大間違いだからね。でも、その、有難う」


 シーラの服は先程のと殆ど同じ赤のワンピースだが、上品なステッチが入っていた。カーラは青のスカートに白に青のステッチが入ったブラウスだ。リズは黒の体にぴったりなパンツルックに、茶色のシャツに青っぽい上着を着て、動きやすそうな感じだ。


「早速着てきたんだね。うん。似合っているよ」


「うん、あ、ありがとう。そっちの買い物は終わったの?」


「ああ、目的の物は買えたよ。まだ時間があるから靴を買いに行こう。俺も予備が欲しいんだ。とりあえず今日は冒険者向けのを買いたい」


「仕方がないから私達美少女三人組が付き合ってあげるわよ。だから有り難く思いなさいよ」


 フォルクスはシーラの頭を撫でて


「じゃあ、美少女御一行様、私目の買い物にお付き合い下さい」


「やればできるじゃない。さあ、さっさとあんた達の買い物をして宿に戻るわよ。あんた達に文字を教えなきゃならないんだから。ほら、そこ、ボサッとしてないで早く動く!」


 そうは言うが、フォルクスの腕を引っ張り


「ありがとう」


呟きのような小な声では有るが、感謝を述べ腕を組むシーラであった。

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