相澤紗枝の本性

「蒼太……」


「クソっ!!ふざけやがって!」


財布としていいカモだったから付き合ってあげたのにこんな仕返しされるなんて。

神代の猿も金としか見てない。

神代はヤッたらヤるだけ高級品貢いでくるから付き合ってるだけなのに。

こんなことになるならまだアイツ蒼太の方がマシだった!


「アイツの母親と妹をこっちの味方にさせたのに意味ないじゃないの!」


神代にアイツの母親と妹をヤるように仕向けたり、自分の行為の写真を送らせたのは私だ。

適当に媚薬でも混ぜれば簡単に堕とせると言ったら性欲盛んな猿だけに神代は実行した。

これでアイツからのめんどくさいことはないと思っていたのだ。


「どいつもこいつも使えない……!」


相澤は込み上げる怒りを近くに置いてあった机にぶつける。


「くそっ!くそっ!くそっ!!」


相澤は何度も何度も机を蹴った。

次第に机は軋むような音を立てて崩れていく。

それを見た相澤は満足したのか、蹴るのを辞めた。


「はあ……はあ……なんとかしないと」


「あの女…あの女から排除しないと」


また媚薬を使って神代にヤラせる?

いや、それは無理だわ。あの女見ただけでもわかる。

警戒心もヤバイけど、何を考えてるか全く読めない。

これまで金持ちを相手してきたけど、あれ程金の匂いがする奴は初めて。


「厄介ね…」


しかもそーちゃんそーちゃんって、あの男の何がいいんだか。


「……!」


「そうよ…!アイツがいるじゃない!あの女が大切にしてるあアイツが!」


敵を潰すならまず周りから。

あの女が大切にしてるアイツを人質にすればなんとかこの状況を打開出来るかもしれない。

神代を利用してアイツが一人になる時間を作る。

その隙に攫えばいい。

相澤はスマホを取り出して電話をかける。


「もしもし?檜山?」


『紗枝か?久しぶりじゃん!』


「久しぶり。それより頼みたいことがあるんだけど」


『紗枝ちゃんの頼みならなんでも聞くよォ!でも、見返りは……わかるよな?』


「はあ…いいわ。幾らでも付き合ってあげる」


『よっしゃ!じゃあ今日いつものホテルでよろ〜』


「わかったわ。それで、荒川蒼太って言う男を攫って欲しいんだけど」


『オーケーオーケー!』


「それじゃあ夜の八時ね」


『ちょちょちょ、一人だけ?』


「そうだけど、なにか問題あるかしら?」


『いやいや、ないない!夜の八時ね!楽しみにしてるわ〜!』


そう言って男は電話を切った。

相澤の着信履歴の一番上には、檜山と記されていた。


「ふふっ。暴力団なら安心」


相澤は晴れ晴れとした表情で校舎へ入っていく。






「へえ……暴力団…ね…」


「千聖?どうしたんだ?」


千聖はハッと我に返った。


「ううん!なんでもないよ!」


「そうか?」


「うん!それよりジュース飲む?」


「お!あるのか?ならメロンソーダを頼む!」


「りょーかーい!」


誰であっても、もうそーちゃんを傷つけさせない。

それに、暴力団なんて私の足元にも呼ばない。

だって私の家は────────。

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