→【兄弟を見た。望んで見てるわけじゃないけど。】→他神の情事に巻き込まないでほしい。
→他神の情事に巻き込まないでほしい。
古今東西、問題ごとになりやすい事というものにおいて、テンプレートみたくある程度決まっているものはある。
価値観から生まれる者だったり、いつでもトラブルに好かれる種類の問題。
その中でも、幸も呼ぶが、どっちかというととびきり不幸も量産しているんじゃないかという、しかし生き物であるがゆえに避けがたいのだろうものがある。
愛情。恋愛。好き嫌い。そういった感情に根差すもの。
所謂、めんどくせぇ絡み方してくるやつが大好きなあれこれだ。無関係な他所のそれに露骨に嘴突っ込みたがる奴に碌や奴はいないのだ。
これは異性でも同性同士でも、とかく問題ごとに発生しやすい。問題ごとを発生しやすい。ぽこぽこ生み出す源泉だ。そういった、感情に根差すもの。同時に本能にも根差すもの。
これ一つで人は狂う。あるはずの、あったはずの理性が失われることなど珍しくもないみたいにされる。本能であるそれは、容易く理性を侵食するのだ。
恋は盲目。
というのはよくいったものだと思う。もちろん、いい意味ではいっていない。
何せ、恋は盲目とはいえど、それを患っている奴は見たいものは見えている。
他人から見れば盲目であるというだけで。
つまり、迷惑するのはそれ以外の他者である事が多い、はた迷惑な状態。それで関わらないならまだしも、盲目のまま巻き込み、迷惑を振りまくだけ振りまいていく災害のような奴は現実にいて、珍しくもない。
兄弟神には、幼馴染神がいた。なんでも後ろに神つけているが、名前がよく聞こえないのだから仕方がない。幼馴染神って自分で言っときながらそういう、なんか幼馴染優遇する神様みたいでちょっとおもしろいな。
こいつらにとっては、何も面白くはないんだろうが。
いきなり恋愛の事を考えたのは、こいつのせいだ。
どうみても、面倒ごとの臭いがしたのだ。
兄弟神は男で、幼馴染神は女である。
幼馴染神はこれまた優秀なほうではあったが特別というわけでもなく。
しかし、その人格……神格? めんどうくさいから人格でいいや。
人格も評判が良かった。
面倒見が良く付き合いも悪くないタイプというやつであり、少なくとも表面上は公平でもあった。
能力で人の好悪を決めつけない。ように見える。少なくとも、露骨に態度を変えたりしない。
評判や噂だけでも流されない。良く言えば自分で見て判断できる。悪く言えば自分の見たものしか信じない頑固さを持っているように見えた。というか、俯瞰で見れば全員同じような対応をしていることがわかる。
兄神が顔は良いがそれ以外ができないことを、幼馴染神は知っている。
知っているが、侮蔑の目を向けることはなかった。
変わらず笑顔を向けている。兄神にとって、それは『仕方ないなぁ』と許してくれているように思えた。それは、きっと弟神が嫌がっていないからということが大きいという事は兄神も察しがついていて、しかしどうしたって特別なものに思えてしまった。
『こいつだけは、本当の俺を知っていても嫌わないでいてくれる』
そういう、ありがちな勘違いをしてしまったのだ。
そして、勘違いを加速させるタイプでもあった。
『好きになってくれるかもしれない』
『受け入れてくれるかもしれない』
『いいや受け入れてくれる』
『好きになってくれるに違いない』
『だって否定しないのだからそうだ』
現代ならストーカーにでもなってしょっ引かれそうな発想の飛躍と思い込みである。思考まである程度トレースできる状態だからこそちょっと興味をひかれたから見てしまって、勝手ながらドン引きする。
もちろんというか、幼馴染神自体はそんなことを思われているという事は知らない。
割と人気者であったから、そんな視線が珍しくもなかったともいう。
何せ、神とは自称で加護が与えたられるその地の人が呼んでいるだけの不思議な力を持つ存在でしかない。ここまで眺めてきた限りでは、俺にはそう見える。むしろ人が見ていないところではさらに尊大で俗物っぽい。力があるのだし、まぁそうなるだろうな、という予測の範疇ではある。
誰かを恨むことができるのだ。誰かに欲望を向けもする。
神と呼ばれるそれらは、そもそも別に救いたいとかは表面上の話でしかなくて、いいように見られたいから見ろ、敬い跪け、尊べその信仰向けろと思っているのだ。人には見えないだけで。欲望を持っていないわけもない。
そしてそんな人みたいな欲を持つそれが、人にしか向かないという事もなく。
神は神でもお互いの思考は読みあえなかったという現実を兄神はもっと感謝すべきだろう。多分、読まれてたら初手でクソほど嫌われていたと思うし。ほとんどの神も離れただろう。その場合は皮肉にも内心を知ろうが引かないのが弟だけという現実を知ってしまって別方向に壊れていそうな気がするが。
まぁ、本音なんてものは誰だろうが知られれば引くような事ばかりではあるけれど。
ともかく。
兄神は幼馴染神の事をいともたやすく好きになったのだ。恋という穴を自分で掘って、誰も落ちろと言ってないのに勝手に転げ落ちたというか。
さて。
この時点でどうして女のほうが生贄が多かったのか、ということについてはわかってしまうようなフラグしかたっていない気がしてならない。見るのも嫌になるレベル。共感性羞恥まで覚えてしまう。
この時点で何も上手くいく事が想像できないんだから仕方ないだろう。
上手くいかない恋愛感情。
嫉妬心バリバリで、承認欲求も強すぎるくらい。
さて、想像通りにいかなかった場合どうなる? いい予感はまるでしない。
つまり、呪いなんて重い言葉を使っているが痴情のもつれで八つ当たられているだけなのでは……?
そういう結論になるわけだ。もしそれが想像通りなら、芽依――はよくわからないが、大祐や現在もそれに絡み取られている奴らも散々だな。いや、理由がどうであれ状況が変わらないなら同じか?
大体聞いていたのとだいぶお話と違うんですけど、それはどうなんですか。
八つ当たりといえば大体の『代々伝わる』みたいな呪いはほとんど当人たちにとってそうなるにしてもよ。
これは酷くない? 勝手に好きになって、勝手に勘違いしたあげくに、と想像通りにいくとしたらもはや人関係ないじゃん神の中でどうにかしろよという話で。
いや、昔からある神話ってめっちゃくちゃなのが多いというのは知っているけども。
やることも地味というか。やられたほうはたまったものじゃない事は確かだけど、なんか言うわりにっていうか。
地味さを感じるのはともかく、これからちゃんと聞いた話に似通った部分が出てくるという事なのだろうか。
今のところ、同じところって兄弟の神がいたっていう基礎のとこくらいだからな。
桃から桃太郎が産まれました、どころかおじいさんとおばあさんがいました、くらい基本のところだけだからな。
幼馴染神なんて影も形もなかったわけだし。のわりに、脇役というには兄神にとって重要な位置に入るっぽい当たりでもう。
しかし、話がねじ曲がったとしても不思議なことだ。
見ているこのどうしようもなくどうでもいい話の中で、この地を治めているのは兄弟神だけでなく、幼馴染神もだったのだ。
この先何か問題が起きるのは確定しているわけではあるが、そうだとしてもおかしいことがあるだろう。
頂上にあったのは、兄神の社だろう。聞いた話だと弟神のっぽくも聞こえたが、この流れで弟神がそんな呪いを発動するほど人に執着するようにはどうしても思えない。
勝手な考えでしかないが、呪うなら兄神だろうという考えが消せないし、これは確実だと思う。なんか、現時点ですでにさっきまで感じてた呪いの気配と同じようなものを感じているし。
しかし、そうすると弟神の社はどうなった? 元からなかったんだろうか?
さらに言えば幼馴染神の分は? こちらは元から加護のウェイトが低いようだから人的にどうでも良かったか?
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