王子様がお姫様と恋に落ちるとは限らない

うにどん

本編

 ナビという動物を模した電子機器が当たり前になった近未来でも学園では王子と呼ばれる男子学生、姫と呼ばれる女子学生は存在する。


「見て見て、王子様と姫様が居るよ!」


「え!? どこ!?」


「中庭! 喋ってるみたい」


 とある学園の放課後、中庭にて王子と呼ばれた男子・白山嵐士はくざんあらし、姫と呼ばれた女子・鈴木瑠璃子すずきるりこは穏やかに談笑していた。

 二人を見つけた女子学生は「お似合いだよね」と言うと彼女の友人もそれに同意する。


 学園の王子と姫、まさに理想のカップル。

 誰もがそう言って持て囃す。


「でも、まだ付き合ってないんでしょ?」


「そうなんだよね。あんなにお似合いなのに」


「不思議だよね~、もしかして、どっちかに恋人が居るのかな?」


「いや、それはないでしょ! あの二人が他の人と付き合ってるなんて有り得ないって!」


「そうだよね! あの二人以外は絶対に認めたくないよね!」




「私達、お似合いだって」


 アハハハと笑いながら去って行く女子二人の会話を嵐士と瑠璃子は聞いていた。

 瑠璃子はお似合いと言われたのが嬉しかったのか頬を赤く染め上目遣いで嵐士を見つめる。

 嵐士はそんな瑠璃子にバレない程度にを一瞬だけ向けるが直ぐに笑顔を浮かべた。


「そうかな? ボクは鈴木さんには相応しくないよ。鈴木さんにはボク以上に素敵な人が居ると思うんだ」


 穏やかな笑顔でハッキリとそう告げられた瑠璃子は悲しげな表情をするが嵐士は背を向け、サッサとその場を離れ肩に乗っているリス型ナビのトーク機能を機動させた。


――今日の夜、会える?

――会えるけど、明後日はモチコと海エリアに遊びに行くから噛みつかないでね

――了解


 瑠璃子とのやり取りで気分は最悪だった嵐士だがこの世でたった一人の大切な存在からの返信で機嫌は良くなる、歌いたい気分になったが瑠璃子と会った後だから関係を誤解されそうなので止めた。


――――――


「ねえ、噛みつくなって言ったよね?」


 ベッドの上、散々愛し合ったのに嵐士の恋人・黒川理也くろかわりやは嵐士を睨付ける。

 原因は肩の噛みつき痕。嵐士は最中に興奮して噛みつく癖があった。

 友人と海エリアで開催されるカードゲーム大会に出る予定の理也にとって死活問題だった。

 常夏の海エリアは凄く暑い、肩出しの服で行くつもりで居たのだ。

 理也は噛みつき痕に触り血が滲んでいると解ると眉間に皺を寄せた。


「言ったわよね。噛みつくなって。アンタが噛みつき癖があるって知ったらファンの子達は泣くだろうな~」


「ふ~ん、俺は理也以外抱くつもりないしどうでもいい」


「あっそ。それは嬉しい限りね」


「其処は心の底から喜んでくれない?」


 相当お怒りの理也の頬に優しく撫でるも理也の機嫌は宜しくならない。

 むしろ優しくされて更に不機嫌になっていく。

 そんな姿の理也に嵐士はクスクスと笑う。


「な~に、笑ってんのよ」


「いや、俺の付けた噛み痕に悩む君を見るのは気分が良い」


「性格わるっ!」


「君の前だけさ」


 心底嫌な顔をする理也に顔を近づけ理也の唇に軽めのキスを降らす。

 理也は何を言っても無駄だと判断したのか黙って嵐士のキスを受ける。

 キスは軽めのものから段々と深いものになっていき嵐士は理也に覆い被さるようにベッドに沈めた。


「やるの?」


「君がいいなら・・・・・・」


「あら断ってもいいの?」


「意地悪だね」


「仕返し」


 理也は意地悪く笑うとんべっと舌を出した。

 

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