第7話:守護神

(ダメだよ、ルイーセ。

 勝手に神を名乗って罰を下してしまったら、神に処罰されてしまうよ)


 白昼夢という事はありませんよね。

 自分では絶対に勝てないのが分かる、圧倒的な力を感じてしまいます。

 転生してからは、この世界最強なのではないかと思っていたのに、それが恥ずかしい勘違いであったのだと思い知らされます。


(大丈夫、ルイーセはこの世界最強の一人で間違いないよ。

 何といっても僕が愛して聖女に選んだのだからね。

 他の神が選んだ聖女以外には絶対に負けないよ)


 この正体不明のモノは、とんでもない事を言いだしましたね。

 余りにも初めて聞く情報が多過ぎて心がついていきません。

 まず覚えておかなければいけないのは、この世界には神が複数いる事です。

 更に気をつけなければいけないのは、複数の神が聖女を選んでいるという事です。

 もしかしたら、アストリッドは本物の聖女だったのかもしれません。


(それはないよ、あんな性根の腐った女を聖女に選ぶ神はいないよ。

 悪神と呼ばれる連中だって、もう少し相手を選ぶよ。

 同じ性根の腐った女を選ぶなら、もっと才能のある女を選ぶよ)


 この存在は言いたい放題ですね。

 アストリッドが性悪で無能だと言い切っています。

 確かにその通りではありますが、もう少し遠回しに表現すべきだと思います。

 しかしもっと重大な問題があります。

 アストリッドの事など気にしている余裕はありません。

 なぜならこの存在は私の事を聖女に選んだと言い切っているのですから。


(寂しいなぁああ、この存在ってなんだよ。

 これでも僕はルイーセの守護神だぜ。

 ちゃんと神様って思って欲しいな。

 できれば守護神様って思ってもらえればうれしいな)


 ……気持ち悪い、恐ろしく気持ち悪い奴です。

 前世でも私が大嫌いだった性格、自分勝手で他人を平気で振舞わす奴です。

 本当なら絶対に近づきたくない性格です。

 ですが、この力を授けてくれたのがこいつなら、力を失わないために我慢して付き合わなければいけないのでしょうか。

 それとも死を覚悟しても自由のために戦うべきでしょうか。


(ああ、やめ、やめ、やめなさい。

 守護神だからといって私に媚を売る必要なないよ。

 それにルイーセの力は僕が与えたモノではないよ。

 いや、確かに僕も力を与えたけど、それ以前に多元宇宙の事故で偶然得た力の方が圧倒的に多くて強いから、僕に感謝する必要もないよ)


 なるほど、だったらこいつの事は無視です。

 アストリッドが他の神の聖女でないのなら、遠慮する必要もありません。

 天罰を演じたらダメだというのなら、教会に酷い目にあわされた者が恨みを晴らすためにやった事にすればいいのです。


(ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、あんな協会でも祭り上げられている神がいるんだ。

 そいつがヘソを曲げたりルイーセに目をつけたりしたら大変だから。

 どうしても教会を攻撃したいのなら僕がやるから)

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