自称聖女の従妹に陥れられ婚約破棄追放されましたが、私が真の聖女だったようです。

第1話：冤罪

「神託が下りました、間違いありません、ルイーセは不貞を働いています」

　何を言っているのですか、この狂人は。

　自ら聖女を名乗り神託が下されると言いだす事すら親族の恥だというのに。

　今度は私に冤罪を被せようなんて、恥知らずにもほどがあります。

「何を言っているの、アストリッド。

　いい加減嘘をつくのは止めなさい。

　どこをどう調べようと、やってもいない不貞の証拠などでてきませんよ。

　これ以上エドムンド一族に恥をかかせるのは止めなさい」

　本当にアストリッドの虚栄心にも困ったものです。

　小さい頃から事あるごとに本家の私に張り合おうとします。

　確かに本家に生まれるか分家に生まれるかなんて運にすぎません。

　本人の能力とは全く何も関係ありません。

　そんな事は前世の知識がある私の方がよく分かっています。

　ですが分家とはいえ伯爵令嬢として生まれたのです。

　それだけで十分運がいいではありませんか。

　転生した私だから言えることすが、貧民に生まれる事だってあり得たのです。

　自分の子供を間引かなければいけないような、極貧の家に生まれる事だったあり得たのですから、伯爵令嬢でも十分以上に運がいいのです。

　それともアストリッドは聖女でなければ価値がないと思ってるのでしょうか。

　それとも単に本家の私が妬ましいのでしょうか。

「不貞の証拠が出ないのは当然です。

　ルイーセの不貞相手は人間ではありません。

　事もあろうに悪魔と情を通じているのです。

　ルイーセの不貞相手は悪魔なのです。

　神をも恐れぬ所業とはルイーセがやっている事を言うのです」

　アストリッドのバカは言うに事欠いて何という事を言うのですか。

　教会の力が強いこの世界で、神託が得られる聖女だと嘘をついただけでなく、悪魔の情を通じたという嘘までつくなんて、極悪非道にもほどがあります。

　もう絶対に許しません、今までついてきた嘘を全部暴いてあげます。

　前世の知識がある私には簡単な事です。

「神を畏れぬ悪魔の所業とは貴女の事ですアストリッド。

　本当は神託を受けることなどできないのに、伯爵家の力を使って嘘を誠にしてきただけではありませんか。

　私が貴女の神託が全部、伯爵家が金と権力で創り上げた嘘だと証明してあげます」

「聖堂騎士団、直ぐにその魔女を捕らえなさい。

　これ以上悪魔の呪いを唱えらないように口を塞ぐのです。

　今直ぐ口を塞がないとこの場にいる全員が悪魔に誑かされてしまいます。

　急ぐのです、急いで魔女の口を塞ぐのです」

「やめなさい、止めるのです、全部アストリッドの嘘偽りです。

　私はエドムンド公爵家の令嬢ですよ、無礼は絶対に許しませんよ」