第9話 『艶魔魔都』 破

前回、GMの想定を超えた速度で事件解決に向かったが故に危機的状況に陥った一行。どうにか状況を打破するために、全員で作戦会議が始まります。


ミミィ:とりあえず交渉は初期状態まで巻き戻すにゃ


GM:了解。じゃあその上でどう打開するか頑張ってみて


ミミィ:核心に迫らないような話を延々して時間を稼ぐにゃ。名産は何かとかなんとか


ヒルダ:ラタイトランナーを使えば移動力的に逃げられなくもないけれど……


リファー:その場合行使したキャラクターが制限移動しか出来ないので捕まってしまいますね


ユスティーツェ:なら却下だな


GM:捕まるなら全員一斉に捕まった方がいいと思うよ。半端に残ると見せしめに殺されかねないし


ヒルダ:GM、不明な言語で魔法の詠唱をした場合ってわかるかしら


GM:ん?あ~、多分わかんないとは思うけど


ヒルダ:じゃあ獣変貌してラタイトランナーを全員にかけて、オーガウィザード共がタングの魔法を行使してる間に私も逃げるっていうのは?


GM:んん~、どうだろうな。ゲーム的には問題ないけど、ホントに詠唱に気付かないかどうかってところが悩む。ダイス振るか……?


ユスティーツェ:大公が一般人なら顔面パンチして気絶させて投降したいが


GM:ああ、大公は普通に一般人だよ。政治家であって魔法使いでもないし


ヒルダ:じゃあその方向で?


ユスティーツェ:良いなら動くが


一同:(頷く)


GM:OK、ではどうぞ


ユスティーツェ:「─────すまん、命を預かる」


リーゼロッテ:「お兄様……」


大公アスク:「む?どうされました?」


ユスティーツェ:「まどろっこしい、死にたくなければ歯を食いしばれ」


大公アスク:「なっ……!?」


ユスティーツェは律儀に命中力判定と威力表を振り、キッチリ大公を気絶させました。そして……


GM:ではその光景を見ていたオーガウィザード達が襲い掛かってきます


ヒルダ:「あらあら、豪快ねユスティーツェ」


ユスティーツェ:「…………すまんな」


リーゼロッテ:「いえ、仕方ありません。脱出の機会をうかがいましょう」


ミミィ:「……蛮族にしては温情だにゃぁ」


オーガウィザード「生かして捕まえるように言われている」


ミミィ:「ふむ? じゃあ前の使者たちはどこかにゃ?」


オーガウィザード「食ったさ」


ミミィ:「扱いの違いが不思議だにゃあ」


GM:まあ一般の使者と違って、君ら……特にミストルティア兄妹を大々的に処刑すれば人族の士気は一気に下がるからね。トアランが蛮族に支配されていたという絶望も加えて


ヒルダ:武器とかは?


GM:流石に武装解除はされますね。装飾品以外の武器防具、発動体関連は持って行かれた。お金と所持しているアイテムは無事


ヒルダ:素の状態の投げで1人くらいは倒せるかしら


ミミィ:そういうことならヴォーパルウェポンとクリティカルレイを投げるから檻を壊すにゃ坊ちゃん


GM:アルケミーキットも発動体関連に含まれてるっての(笑)。そういうことするのはちょっと待ってくれ。イベントあるから


地下牢でしばらく過ごしていると、足音が聞こえてくる。その足音は君たちが収容されている牢の前で止まる。美しい女である。妖艶な女である。淫靡な女である。豪奢なドレスのスリットから見える白い足は、男なら誰もがむしゃぶりつきたくなるだろう。10人いれば10人が見とれる美貌の持ち主であった―――――――その顔に張り付いた、酷薄な笑みさえ無ければ。


ヒルダ:「(あらあら……女狐って感じかしらね?)」


ミミィ:「噂はかねがね、でいいのかにゃ?」


女:「アハハハハ!無様ね!あのサーガに手傷を負わせた英雄サマが、今はこんなところで死を待つばかり、なーんて!笑っちゃうわ!ええ、アタシもアナタたちの話はいっぱい聞いてるわよ」


ヒルダ:「それはどうも、ね?」


ユスティーツェ:「…………」


リファー:「…………」


ヒルダ:この男共は欠片もなびいてないでしょうね……


ユスティーツェ:口を開くと罵詈雑言しか飛ばんぞ


女:「はーい、ここでネタバラシ!この街で裏から糸を引いてたのは、邪王軍のお色気担当、サキュバスのミグドノレシアちゃんでした!どう?驚いたァ?」


ヒルダ:「……なるほど。其処の線があったわね……」


ヒルダ:素で忘れてたァ~~ッ!


そう、彼らが忘れていた種族というのはサキュバスのことでした。ファンタジー小説などでは今やお馴染みになっていますが、ソード・ワールド2.5においては高レベルかつ、魅了といえばまず先に吸血鬼が思い浮かんでしまうので、想定から外れるのも致し方ないかもしれません。


“妖艶魔将”ミグドノレシア:「ほんっと間抜けなんだから。随分頑張って情報収集したのに、敵の本拠地に真正面から乗り込んでくる奴がいるゥ?」


ユスティーツェ:「人の神経を逆撫でしないと喋れんのか、毒婦」


“妖艶魔将”ミグドノレシア:「あらぁ、話には聞いてたけど良い男じゃないアナタ。ま、すぐに殺しゃしないわよ。あ、そうねぇ、アナタが私のモノになってくれるんだったら他の皆は助けてあげても良いけど?」


ユスティーツェ:「────くたばれ」


妖艶魔将ミグドノレシア:「あ、そういうこと言っちゃうんだァ?うふふ、言うこと聞かないなら、アナタの可愛い妹ちゃん、目の前で蛮族共に犯させてやろうかしら?」


リーゼロッテ:「お兄様、惑わされないでください」


ユスティーツェ:鉄の檻か?


GM:え?ああうんそうだけど


ユスティーツェ:じゃあ壊れないと期待して魔力撃パンチで殴る


GM:あっはいどうぞ


ユスティーツェ:デモンズアームとマッスルベアーもかける(コロコロ……)29点。


GM:凄まじい音がしますが壊れはしませんね


妖艶魔将ミグドノレシア:「怖いこわぁい。ホントだったのになァ、助けてあげるっていうの。じゃ、明日には殺すから。精々残された生を噛みしめなさいね?」


ヒルダ:あら、一晩くれるの?


GM:あげますよ


ユスティーツェ:一晩あれば殴り壊せるぞ


GM:気付かれるしその前に拳が壊れるよ。絶対に出来ないと判断出来るような判定はさせないことが出来るってルールがあるんだぞ


ユスティーツェ:ぬう……


GM:ちゃんと脱出イベントは用意してあるからちょっと落ち着いてくれ……


男:「なあ、アンタらも冤罪で捕まったクチか?」


GM:そうやって向かいの檻から話しかけられます


リファー:「何者ですか」


男:「いやあ、しがない盗賊だよ。まだ何も盗んじゃいないのに捕まっちまったんだ」


ミミィ:「それ、盗賊って言うのかにゃ?」


男:「ははは、痛いところを突かれた。実は脱獄しようとしてたんだが、一人じゃどうにも頼りなくてな、アンタ達協力してくれねえか」


ヒルダ:あ。盗賊ギルドとかで聞き込みすれば彼のことが聞けたりしたのかしら?


GM:そうだね。別途救出の依頼とかが出たかも。君たちはあんまり受けそうにないけど。アングラな案件とは無縁でやってきたし


リファー:「協力?」何をすればよかろう


男:「一緒に逃げてくれるだけでいいんだ。人数が多いと逃げられる確率が高くなるからな」逃げる準備自体は整ってるらしい



ヒルダ:「んー……一つだけ、条件があるんだけど……いいかしらね?」


男:「言ってみな」


ヒルダ:「――――――多分、あのサキュバスが出てきたら私達がブチ殺すわね?」


男:「戦うつもりかよ、好きにしろっての」


ヒルダ:「ありがとうね?」


男:「俺の名前はアルセイヌ。んじゃ協力してくれるってことで良いんだな?」


ユスティーツェ:随分名前負けしてるヤツだな……


GM:盗賊とか怪盗の名前のバリエーションがGMの中になくてな


当然、元ネタはアルセーヌ・ルパンです。


アルセイヌ:「よし、ちょっと待ってろ」


GM:アルセイヌは食事を運んできた看守を手際よく気絶させると鍵を奪い、牢を開けます


リファー:おお、すごい


GM:看守の部屋にあった君たちの装備も回収してくれるよ


アルセイヌ:「脱獄する『のは』得意なんだよな」


GM:で、彼が掘った脱出用の穴から逃げ出すことが出来るようですね。穴掘りも得意らしい


ユスティーツェ:スプーンで掘った穴だ


GM:そうそうそういうの。穴はちゃんと街の外に繋がってるよ。最近捕まったにしては手際が良すぎないか?


ミミィ:自分でツッコんでりゃ世話無いにゃ


GM:まあまあ、多少のご都合は許してくれ。脱出には無事成功するよ


アルセイヌ:「いやあ、何事もなくて良かった良かった。そんじゃな!なんか用あったら遺跡ギルドまで来てくれよ!」


ヒルダ:「えぇ。次があったら頼むわね?」


リーゼロッテ:「魔将の仕業だったのですね。これからどうしましょうか……」


ヒルダ:「――――――当然。ぶっ潰すべきよね?……とはいえ、まずは冒険者ギルドに報告ね……」


ミミィ:「どこまで言って信じてもらえるかにゃぁ」


ヒルダ:「信じられないようならアルセイヌにも証言してもらいましょう」


サギリ:「思った以上に根が深いようですわね。ふぅ、それにしても、初恋叶って最期が牢の中でなくて良かったですわ」


リファー:「しかし、向こうも慌てているはず。追ってくると考えていっそ罠を仕掛けるのも有りかもしれません」


ヒルダ:「うーん……正直、それも上手く行くかどうか……」オーガウィザード10体、ほぼなんでも出来ると同義だからね……


ミミィ:「正面から突っ込んでくるとは思わなかった……と言っていたにゃ。いっそ正面から突っ込み直したら意表を突けるかもにゃ~。まぁ手が足りるかが問題だけど」


GM:じゃあ正面突破ルートで?


ユスティーツェ:侵入するルートもあるかそういえば


GM:ああうん。改めて屋敷に侵入することは可能


ユスティーツェ:いや、さっきの穴から奇襲を仕掛ける


GM:ああ、なるほど(面白いアイディアだしやるなら色々考えるか……)


ヒルダ:でもそれ穴の中で戦闘になった場合は?


ユスティーツェ:……凄まじい泥仕合になるだろうな、やめておくか


GM:まあ、裏目が出やすいというのは警告しておこう


リファー:まあ素直に突っ込みましょうか


ヒルダ:じゃあ報告に戻ろうかしらね


そういうわけで冒険者ギルドへ帰還します。


ヒルダ:「――――――というワケで、出来るだけ早い内に大公邸を襲撃したいの。動員できる戦力はどれくらい居るかしらね?」


ギルドの受付譲「そうですね……ギルドから報酬を出すことにして、今の時間帯で活動している冒険者さん達を集めると……」そこそこ集まるっぽい


ミミィ:「みんな、抱えてる剣のかけらがあれば集めとくにゃ。守りの剣への再補給は迅速にしたいにゃ」


リファー:「敵には魔法使いが多数居ますので、魔符は可能な限り用意するよう伝えておいてください」


受付嬢:「了解しました。情報提供ありがとうございます」


GM:OK、具体的な報告だ。GMとしてもありがたい。では遺跡ギルドにも連絡が行き、守りの剣奪還部隊も結成される


GM:時刻は夜になる。このまま行くか、明るくなるのを待つかみたいな話が出てるけどどうする?


ミミィ:不眠ペナは避けたいにゃ


ヒルダ:相手は全員暗視持ちだし朝に行きたいわね


GM:夜であるメリットは迅速だから対策されにくい。デメリットは暗いので暗視無い種族の皆さんが大変。早朝であるメリットデメリットはそれぞれ逆ですね


ヒルダ:フラッシュライト軍団とか、ライト貰うとかでも間に合わないかもって事?


GM:多少明かりがあっても暗所に人数いるのは危険だからね


ヒルダ:それもそうか……あまりオーガウィザードの群れに時間を与えたくはないけど……


GM:まあぶっちゃけフレーバー的な問題で、人死にがどれだけ出るかの話だよ


ユスティーツェ:じゃあ夜でも良いか……(殺意マン)


GM:こら主役。ではまあ翌朝、妖艶魔将撃滅作戦、開始……の前にロールプレイしたいことあればどうぞ


ヒルダ:じゃあちょっとユスティーツェと話したいことがあるわ


ユスティーツェ:良いぞ


ヒルダ:「――――――ユスティーツェ、少しいいかしらね?」


ユスティーツェ:「……なんだ」


ヒルダ:「……お礼を言っておくの、忘れてたから、ね……」


ユスティーツェ:「…………礼?」


ヒルダ:「えぇ。マリアンヌを許さないでくれた事あの子がした事は……紛れもなく許されない事。だから、私は止める為に拳を握った」


ユスティーツェ:「…………許さないこと、か。礼を言われるようなことでもあるまい、俺の私情だ」


ヒルダ:「フフッ、いいのよ……ただ、私が救われただけなのだから、ね?」


ユスティーツェ:「──────そうか」


ユスティーツェ:ここで久しぶりに少しだけ笑って終わりにしようか


ヒルダ:そうね


GM:よし、では翌朝――――――



***



ピンチに陥ったPC(PL)達から提案される様々な行動に何度か慌てましたが、おおよそ当初の予定通りボス戦へと突入していきます。次回、ミグドノレシアとの決着!お楽しみに。

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