58 Q:A-O3D-Rw【乙3D攻略の報酬】

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 一先ずアリアを伴い乙3DカブラマルクのCルートを攻略した後、脱線したカツゾウを探しに別ルートでの攻略を試みた。

 入り口が複数ある乙3Dでは核座からの転移は入場した門に飛ばされる。また博打入場となるので運が悪ければ再度Cルートに挑戦しなければいけないところだったが、二周目は群れで現れる蟲系魔物とのバトルラッシュが待ち受けているBルートだった。


 カツゾウを探すための周回なので楽しんでいる場合ではないのだが、バトルラッシュはそれはそれで楽しくレベリングが出来て、とりあえずモチベーションは上がった。


 残念ながらBルートではカツゾウと出会わないまま核座まで辿り着いてしまった。核座ではアリアが一人素振りをしており、カツゾウはまだどこかしらのルートで攻略に励んでいるようだ。


 何か言いたげながら見送ってくれたアリアを背に再度転移からの博打入場。今回も初見のAルートに跳べたので順調に攻略していたが


 「カツゾウ殿が戻った」


 途中、短く一言だけ通信が入ったことで、スピード突破に拍車を掛けて核座に直行。

 ところが三度目の核座に帰ってきたところで思いもよらぬ光景を目にすることになった。


 何と魔物が出現しないはずの核座で頭胴長十メートルはある巨大な狼がぐったりとするアリアをくわえてたたずんでいた。


 全身黒毛に所々金の文様が入った巨躯、今まさに道中で狩ってきた乙3DのAルートに出現する中ボスクラスの魔物 金紋狼こんもんろうだ。

 核座で魔物が人を襲うなどNSVではあり得なかった光景だ。まさかこんなタイミングで不確定要素に当たるとは。

 安全と申し付け待たせたアリアが襲われている。息はありそうだが今は一刻も早く救出を、と一先ず弓を取り出したところで


 「あ、満嘉さん。おかえりなさい」


 狼の影からひょっこりとカツゾウが顔を出した。


 「…………森さん!?」


 と、思いがけず目に入ったカツゾウの姿に思考が全て持っていかれる。

 すぐに爆速で駆け寄りその手を取ると、間違いなく生きた人間の温かみがあった。


 「…………良かったぁ~」


 「あっ、あっ、あのっ、ごごご心配おかけしましたっ」


 狼も、狼に咥えられたままのアリアもはばからず、その場に膝を着いてカツゾウの温度を確かめるように小さな両手をぐっと握る。金紋狼如きこのシチュエーションでも小指一本くらいの力で瞬殺できる。それよりもまずはカツゾウだ。


 と、急な接近に驚いたのか一瞬あたふたしていたカツゾウだが、俺の手を引き寄せると膝立ちの俺を抱きしめた。


 「……ご心配おかけしました」


 丁度胸の辺りに頭が埋もれ、自分から手を取りに行った癖に突然の接触でパニックに陥った俺は、条件反射でカツゾウを押しのけて飛び跳ねようとした身体を必死で押え込み、NSV中期以来久しぶりの操作不順ジャム判定でガチガチにスタンしてしまった。


 「生きてて良かった」


 「満嘉さんも」


 そんな平和なやり取りをして、一瞬後我に返ってこっぱずかしくなった二人はよそよそしく身体を放した。



 そんな様子を何を言うでも無くお利口に……アリアを咥えながらではあるが待っていた金紋狼に目を向ける。


 「あ、この子、テイムしました」


 カツゾウは金紋狼の横腹を何の気無しに撫でながらそう言った。


 「……あぁ。はぁ~……そっか」


 瞬時に色々察し、安堵の息を吐く。


 「アリアさん……これ生きてる……よね?」


 「何でもすると土下座してきたので……無碍にするのも憚れるような怒気でしたし、玩具になってもらいました」


 いい笑顔でそんなことを言う。

 まぁうん、大筋はそうなんだろうな……


 そんなこんなで無事(?)合流できたのだが、さすがに乙等級ソロ二周分の時間が経っているのでいい加減に撤収。

 砂漠は夜行性の魔物が活発になるが、早速カツゾウが手なずけた金紋狼『金山キンザン』が乙等級中ボスクラスの威光を発揮し、無事颯爽と砂漠を駆け抜けて帰路に就いた。


 テイムしたものの召喚魔法が未育成なので普通に引いて帰ろうとしたところ、砂漠近くの馬屋に預けていた彼女の愛馬 百段ヒャクダンが怯えて暴れてしまい一悶着あった。




 ………




>Quest : Adventure -丁 2 Dungeon - Rewards




 「か、解体場にご案内します……」

 

 その足でギルドに向かい、金山の従魔登録がてら攻略の成果報告と依頼要件の提出を行おうとしたところ、報告した受付嬢を筆頭に職員がてんやわんやし、一先ず解体場に通された。


 並べられた乙等級攻略の戦利品とお利口に佇む金山を前に、急遽集まった集計と鑑定職と興味本位の職員たちはまたも固まった。


 「本当に乙等級を攻略されたんですね……」


 そこそこ役職が高そうな職員がそう感嘆を漏らす。


 「乙3Dカブラマルクは……ご存知の通り複雑なダンジョンなので、過去数百年ほどは攻略実績が無く、探索ですら忌避されがちなダンジョンだったんです」


 マジか。あの宝の山が数百年も放置されていたとは。

 まぁ丁1Dですら年単位で放置されていたのだから乙3Dが放置されるのも仕方がないか。


 ともあれ、レアドロップや必要な素材を除いて粗方を提出し、明日朝集計結果を聞きに来る手筈でその日は早々にギルドを後にした。


 当初「修行したい」と意気込んでいたアリアは「自分の至らなさを痛感したので出直したい」と、全身金山のよだれまみれでデロデロのまま部下を引き連れて帰って行った。


 マリスとメリサ兄妹が突然連れ帰った金山を見て揃って腰を抜かしたのは言うまでもない。





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