【一幕】魚々島 洋 VS 松羽 烏京

【抄録】魚々島 洋 VS 松羽 烏京


抄録:抜き書き。

本作では、試合および物語のハイライトを指す。


                ▽▼▽▼▽



「オレの師匠は隻脚カカシだぜ。

 片足で戦う方法くらい教わってる。下がってな、忍野」

「おまえに泳ぎ一つ教えられなかった、無能な師か」

「いや、まったくだぜ」

 烏京の横やりに、洋は白い歯をこぼす。

「あのジジイ、オレが泳げねえと見切るや、海を脅しの道具にしやがった。

 『魚々島は海で命を賭ける。おまえも船で命を賭けろ』つってよ。

 トラウマ抉られまくりで、もう一生泳げる気がしねえ」

 烏京は息を呑んだ。

 片足を潰され、勝ち目のない状況下で、継戦を選ぶ。

 そんな悲壮さは微塵もない。これから戦に出るような顔ではないか。

 シュルルル……ル。

 巻き戻る《鮫貝》の白線が、2メートルを余して止まった。

 掲げた洋の腕にいざなわれ、頭上で回り始める。

 速度を上げる──唸りを上げる。


「魚々島を出る時、その師匠が言ったんだよ。

 『おまえはおか一番の魚々島になれ』ってな──」



                ▽▼▽▼▽


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