第150話 奪われたら奪い返す、取り返しだ

「た、ただいま」


 シスターサマーもとい、夏菜さんに耳を弄られて30分。ようやくみんなの場所へと戻った莉斗りと彩音あやねとミクに怒られたことは言うまでもない。

 どうやら、美月みつきあかねが戻ってきた時に、夏菜さんに連れていかれたということは伝えてあったらしい。


「もう、いつまで待たせるのよ!」

「莉斗君、まさかとは思うけど夏菜さんと……」

「そ、そんなわけないじゃん!」

「ならどうしてあんなに遅かったの?」

「それは……えっと……話をしてただけだよ」

「どんな?」

「どんなって言われても……」


 適当に世間話をしたと誤魔化そうとしたものの、彼はこちらをじっと睨んでいる2人の目を見てから、そんなことは出来ないと悟ってしまった。

 何を隠しても2人にはきっとバレるし、バレなかったところで自分が罪悪感に押しつぶされてしまうのだろうと思えてしまったから。


「……」


 だから、莉斗は2人をビーチに設置されたシャワー室の裏まで連れていくと、その場で土下座をして謝ったのである。


「ごめんなさい! 実は―――――――――」


 夏菜さんの正体、自分の体験したこと、全てを正直に打ち明けると、2人は多少彼を怒ってから仕方ないとばかりにため息をついた。


「まあ、莉斗がだらしないのは昔からだものね」

「そもそも、節操があるなら私に襲われてないよ」

「き、嫌いになったりしないの……?」

「クズだなとは思ってるわ。でも、大好きよ」

「甘やかしちゃダメだとわかってても、莉斗君のことが好きだから許しちゃうんだよね」


 二人の中には、莉斗のことを好きでいる気持ちに合わせて、『まだ自分のものでは無い』という一歩引いた感情も残っている。

 もしも付き合っていれば話は変わるが、やはり今の状態では彼のことを本気では怒れないのだ。


「彩音さん、ミク……」

「でも、だからって私たちが何もしないわけじゃないわよ?」

「……へ?」

「他の人に取られそうなら、それ以上に莉斗君を私たちの虜にすればいいんだよ!」

「あ、いや、ちょ―――――――――」


 そんなよく分からない事を言われて困惑している内に、莉斗は気が付けばシャワー室の中へと押し込まれていた。

 仮設ではあるもののしっかりと個室になっており、周りから覗くことはできない。ただ、3人で入るには少しばかり窮屈ではある。


「ま、待ってよ。こんな場所でなんて……」

「莉斗だって店の中でしたんでしょ」

「私たちがどれだけ心配したかわかってる?」

「そう言われると何も言い返せないけど……」

「なら、黙ってされるがままになってなさい」

「二人で夏菜さんの3倍気持ちよくしてあげるから」

「っ……」


 個室内に響きそうな音で生唾をゴクリと飲み込んだ後、莉斗は両側から一斉に襲いかかられてしまった。その後のことはご想像におまかせしよう。

 ただひとつ言えることは、時間がかなり経っていることに気がついて戻ると、妹たち3人がパラソルの下で川の字になって眠っていたことだけだ。


「可愛いわね」

「可愛いね」

「…………あ、2人の方が……」

「「今はそれを言う時じゃないから」」

「……はぃ」

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