第73話 2人からの提案

「……提案?」


 莉斗りとがそう聞き返すと2人は大きく頷く。そして彩音あやねが代表としてその内容を話してくれた。


「お風呂の中で少し話したんだけどね、莉斗君の了承も得たいと思って」

「どういう提案?」

「私とミクちゃん、2人で交互に莉斗君の彼女になるの。月曜日から日曜日まで、毎週交代でね」


 つまり、今週は彩音が彼女だったとすれば、来週の月曜日からはミクが彼女になるということ。

 倫理的には絶対許されることではないし、誰かに知られれば怒られはしなくとも、引いた目で見られるのは必至。

 彼女たちの様子を見る限り、それをわかった上でこの提案をしてきているようだった。


「あ、もちろん3人だけの秘密だよ? 人前で彼女だって発言は禁止にするから」

「あくまで3人の中だけの関係ってこと?」

「そゆこと♪」


 なるほど、それなら問題がないことも無いものの、全員が了承すれば悪いこととも言いきれない。

 何にせよ莉斗自身はどちらとも一線を超えるつもりは無いのだ。理性さえ吹っ飛ばなければ、いくらでも取り返しはつくはず。


「言わば、お試し彼女期間みたいなものね。彼女でない方は莉斗に手を出してはいけないの」

「バレた瞬間、キツいお仕置きが待ってるよ」

「お仕置き?」


 彩音はにんまりと笑うと、突然ミクをがっしりと捕まえて、彼女のお尻をペチンと叩いた。

 そこそこいい音が辺りに響いて何人かこちらを振り向いたけれど、すぐにみんな興味を失ったので問題は無い。ミクが痛がっていること以外は。


「た、叩くフリでいいわよね?!」

「リアリティって大事だと思わない?」

「少なくとも今は必要ないわよ!」


 ぷりぷりと怒る姿が愛らしくて、自分も叩いてみたいな……なんて思っていると、何かを察した彼女がキッと睨んできた。


「バレた時は莉斗も連帯責任よ?」

「なんで僕まで……」

「当然でしょう? いい思いするんだから」


 気持ちよくなっておいて自分だけ痛いのはなしとなると、魔が差して莉斗から迫る場合もありえないとは言いきれない。

 2人は彼を信じてはいるものの、やはり思春期の男子高校生。念の為のストッパーは用意しておくべきと判断したのだ。


「て、手加減はしてくれるよね?」

「私ははしてあげるかな。もちろん、代償は払ってもらうけどね?」

「代償?」

「首輪をつけて夜中に散歩させようかな」

「それじゃまるで犬……」

「私の彼氏になるってことはそういうことだけど?」

「……」


 そう言えば、前に足を舐めてもらうとかも言っていたような気がする。

 莉斗はあれがまさか本気だったとは……と身震いしつつ、ミクの方に顔を向けた。


「ミクは手加減してくれるよね?」

「もちろん本気ではやらないわ。莉斗に怪我させたくないもの」

「よかった……」

「その代わりに私を傷つけた罰は受けてもらうわ」

「ば、罰?」

「とりあえず精力増強剤を2、3本飲ませて、一緒にお風呂に――――――――――」


 その後、「我慢できなかったら本数を増やして……」だったり、「手足を縛って漏らすまでくすぐり続ける」だったり。

 聞くだけで震え上がる程の罰の数々を並べられ、さすがの彩音も青ざめて苦笑いすることしか出来なくなっていた。

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