第66話 断れない性格は損していると思う
ミクの下着を選んでから数分後。ようやく顔の熱さが収まってきた頃に、今度は
「今度はお風呂上がりにしよっか。少し髪が濡れたままの彩音さんが、ソファーで牛乳を飲んでるシチュエーションね」
帰宅路での汗を流すためにシャワーを借りた彩音は、着替えを持っていなかったために
「熱いね」なんて言いながらうちわで扇ぎつつ、こちらへも風を送ってくれる優しい彼女。
隣に座ると「私のことも涼しくして」と言われた莉斗は、うちわを受け取ってそれをパタパタと振った。
彩音は気持ちよさそうな顔をしながら、服の中へ風が入るようにTシャツの胸元を引っ張る。その際にチラッと見えてしまって――――――――。
「その時に私が身につけていた下着はなんですか!」
「うーん……」
莉斗の頭の中では、シチュエーションとしての妄想が完璧に出来ている。
しかし、どれだけ鼻の下を伸ばしながら覗き込んでも、一向に下着が見えてこないのだ。
「ああ、そういうことか」
「答えは出た?」
彩音の質問に彼は大きく頷く。ようやく見えたのだ、自分の求めているスタイルが。
「ノーブラだよ! だから見えなかったんだ!」
「……ん?」
「聞こえなかったかな、ノーブr――――――」
「恥ずかしいから何回も言わないで?!」
彼女は慌てて莉斗の口を塞ぐと、頬を赤くしながら耳元に口を寄せて小声で聞いてくる。
「私は『何を付けて欲しいか』って聞いたんだけど」
「だってお風呂上がりだよ? 付けてない方が自然な気がしちゃって」
「ならシチュを変えるね。昼休み、いつもの場所で彩音さんが押し倒した時は?」
「…………ノーブラかな」
「じゃあ、体育の授業をサボって保健室で押し倒された時は?」
「……ノーブラだね」
「え、えっと、旅館で同じ部屋に泊まって、隣の布団で寝てる私の胸元がはだけ―――――――」
「ノーブラ一択」
「なんでそうなるの?!」
要するに、問題はシチュエーションではなく彩音ということなのだ。
本人には言えないが、彼女の胸は莉斗から見ても小さい。ミクと並べばその差は歴然。
むしろ何も付けていないという方が、何とも言えない『グッとくる感』を強く覚えられるのである。
「いくら莉斗君でもそれはちょっと、ね」
「ミクは着てくれるって言ってくれたよ?」
「私の場合、着ないって言わないとなんだけど?!」
「絶対に無理?」
「そう言われると絶対ではないけど……」
初めこそ否定するという気持ちしか無かった彩音だが、うるうるとした瞳を向けられてしまえば、その決意はあっさりと崩れ落ちてしまった。
「っ……わ、わかったわかった! その代わり、学校では付けるからね?」
「えぇ……」
「文句言わない!」
その後、莉斗が視線で訴え続けたせいで折れた彼女は、結局事前に決めておいた1日だけノーブラで過ごすという約束をさせられることになる。
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