第135話<マオーのウオォオ->


……何も見えない、真っ暗だ。


これはウスロスの魔力の中なのか、さっぱり状況が解らない。


ウスロスの魔力を取り入れ、俺の意識は取り込まれてしまったとでもいうのか。


俺の意識が此処に在るのなら、外はどうなっているんだ。


其の頃。

破邪の塔頂上では、ウスロスの悪意に意識を染められ。

別人格と化したマオーが、極大結界魔法でセトを絞め上げ。


身動きの取れないセトは、何とか脱出しようともがいている。


「アハハハハ! デカイと思って調子に乗りやがって。握り潰してやるぞ」


「ククク……、 それでこそ魔王様です」


まるでマオーを指揮して操るかの様に、両手を振るウスロス。


「いったい、何が起きているんだ……? 」


不死鳥のスキルに依り甦ったトウが、震えるエミリに尋ねる。


「ウスロスさんの魔力を借りるって言った後、マオーさんが気を失って…… 」


「よく解らないがヤバイ状況で、正気じゃないのは間違いないな…… 」


極大結界魔法で絞め上げられたセトは、もう物言わぬ肉塊と化している。


「ククク……。 もっと!もっと粉々にですよ」


ウスロスの不気味な笑い声と、ギシギシッ、ミシミシッとセトが潰され続ける音が響く。


「もう大丈夫ですマオーさん、正気に戻って下さい……」


悪意に取り込まれたマオーを呼び戻すように、エミリが背後から優しく抱きしめ。


マオーの意識内では、奇跡が起きようとしていた。



エミリが掴んでいた辺りから

微かな光り


そして突然、背後から抱きしめられた様な温もり。

というか柔らかい。

背中に感じる、この感触は……!!


間違いない。

ウオォオ-おぉお--!!

意識失ってる場合じゃねー!


ウオォオ、おっぱー-!!


塔頂上の現実に意識が戻り。


「い---!!」


普通なら有り得ない言葉を、俺は現実でも叫んでいた。

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