第126話<ブービー>

「ガハハ!良い修行を思い付いたぞ!」


さっき迄アクビばかりしていて今にも寝そうなガオンだったが、やはりそんな平和は続かない。


ガオンの突然な爆弾発言に、ゴブドとウルルの表情は固まり小さく震えている。


コイツ達師弟とか、夫婦の関係は大丈夫なんだろうか?


そんな疑問が浮かんだが、俺も他人事ではない。


ガオンの言葉次第で、ダンジョンに取り残される可能性だって無くはない。


其の場に居た全員が息を飲み、ガオンに注目する。


「ガハハ!早い者勝ちで、頂上まで競争だ!」


安全そうなスピード勝負と聞いて、ゴブドとウルルの表情も和らぐ。


速くエミリに会いたい、俺にとっても悪くはない。


「お嬢様、此れは見せ場でごさいますな」


だが色めき立つ空気は、次に続く言葉で一変する。


「ガ~ハハ~!! 最後に着いた者は俺様と真剣勝負だ!」


ゴブドとウルルは、競う様に睨み合い。


開始の合図も聞かず、もう駆け出している。


コイツ達? 魔王で在る俺に気を使うとか無いのか。


当然、俺だってガオンとは戦いたくない。


まだ負けなさそうな、此のスピード勝負で終わらしたいのだが……


「ガハ~ハ~、其れでは勝負開始だ-!!」


遅れて駆け出したガオンだったが、予想していたよりもかなり速い。


筋肉パワー系って、鈍重じゃね-のか?


普通に勝負しても、負けそうな位速え-じゃね-か。


だが俺にだって、多少の作戦は在る。


二度とやらないと心に誓った方法だが、背に腹は替えられない。


こうして俺は粘糸をガオンに巻き付け、引き摺られない様に同じ速度で走り。


ゴール前の頂上で、粘糸に気付いていないガオンを転ばし。


最後は自分だったなと、ブービーを頂き勝負を無くす。


そういう作戦だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る