第127話<前例>

「うあぁあ-!!」


粘糸には、死にかけた悪い前例が在るから。


嫌な予感というのか、予想はしていたが最悪の結果だった。


先に階段を登り進んでいたゴブド達を、ガオンと俺が追う。


其処までは良かったが、頂上前の道は塞がれていて。


立ち止まっていたゴブド達に追い付いたガオンが、塞いでいた何かを戦斧で打ち飛ばす。


粘糸で繋がった俺が、其の勢いでぶっ飛ばされたのは云うまでもなく。


こうしてガオンを追い越した俺は、一位を手に入れたと同時に塔頂上の空に舞い。


恐怖の悲鳴を上げながら、落ちていくのだった。


「うあぁあ-!!」


ゴブドの粘糸で受け止められた俺は、何事も無かったかの様に。


「着いたな…… 」


そう言って、魔王らしく冷静を装おう。


「ガハハ流石は魔王様、遊びでも一位ですな」


「ああ、……当然だ」


さも狙ってやったみたいな空気にはしたが、こっちは遊びじゃね-よ。


ゴブドのお陰で助かったが、マジで死ぬかと思ったわ。



だが落ち着いて辺りを見渡すと、今の出来事が遊びだったと気付く。


見覚えの在る人達が、傷を負い倒れたままピクリとも動かない。


ガルのメンバーだ。

まさか死んでいるのか。

異世界なんだから回復薬とか魔法とか、何か無いか。

焦り考えても、人を生き返らす方法なんて知らず。


見知った人達の死に初めて直面した俺は硬直し、動揺を隠せない。


其れと同時に、エミリとトウを見付ける。


エミリに怪我は無く、微かに呼吸していて。


其のエミリを守る様に、エミリの前に倒れたトウは必死に立ち上がろうともがいている。


此処に何故ガルのメンバーが居るのかは解らないが、ガルのメンバーやトウが倒れている理由は明白だった。


トウをニヤついた表情で見下ろすソイツは、見た目は魔族の様に変わり果て禍々しい。


だが見間違うはずがない、二度もエミリを襲ったクソ野郎だ。

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