第123話<微笑>

硬いつぼみの外皮を容易く踏み潰し、セトは降り立つ。


皮膚の色は緑に変わり、紫色の瞳孔。


葉に似た外皮が、衣服や鎧の様に所々覆い。


姿形は人間に似てはいるが、明らかに種族が違う。


どちらかと云えば魔簇。

だがウスロスとも違う不気味さが漂う。


何を言うでも無く合った視線の後、セトはニヤついた表情を浮かべる。


エミリが襲われた、あの時と同じ。


忘れ様も無い、

口角を片方だけ上げた薄気味悪い不気味な微笑。


見た目は変われども、見間違うはずがない。


何が在って姿が変わったのかは解らないが、間違いない。


コイツの中身は非道な、あの時のまま。


絶対に何も変わっていない。


もうルミニー達の助けは得られない今、エミリを守るには自分が戦うしかない。


人間の時ですら負けた事を考えると、勝率は無いに等しい。


其れでもエミリの前に立ち、セトに向かい身構える。


せめてガオン達が来る迄、其れまで持たす事が出来れば。


其の思いを見透かす様にセトは、アハハ…… と大きな声を上げて笑い。


其の場に居る者を指差し、一定のテンポで差す先を変えていく。


まるで今から食べるのを何れにしようかな、そう言わんばかりに。


決死の覚悟で身構える、そんな自分を気にもせず。


馬鹿にした様な其の動作は、エミリを指差した所で止まり。


再びセトは口角を片方だけ上げ、薄気味悪く笑うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る