第112話<部下>

「商人の人間なら話した事は在るけど、あれが人間の冒険者というものなのか…… 」


「俺達獣人は、種族に捕らわれ過ぎているのかもしれないな…… 」


背負われた状態で再び目を覚ましたギズ隊長が口を開くと、隊員は驚きの声を上げる。


「ギズ隊長喋ると傷口が開きますよ」


「助けに来てくれた、お前達のお蔭で大丈夫だ……」


人間の手を借りたからか、救出に来た隊員達は恐縮して黙っている。


其の時。

ギズ隊長を背負っている、隊長に庇われ救われた隊員が口を開く。


「隊長お願いですから無茶しないで下さい、俺のせいで死んでしまったかと…… 」


魔物が居ないせいか、静かなダンジョンに隊員の泣き声が響く。


「そんなに泣くな……、例え俺が死んだとしても気にする事は無いぞ」 


「気にしないなんて、そんな事は無理です…… 」


「俺には生き別れた自由奔放な姉が居てな。 お前達の家族に、同じ様な淋しい思いはしてほしくないのさ」


「……ギズ隊長」


「其れでも……、 隊長が居なくなったら自分は淋しいです」


余りにも正直な隊員の言葉に、ギズ隊長は照れ笑いを返す。


「どうやら俺は自分で思っていた以上に、部下に恵まれていた様だな……」


「そうですよ、俺達が居るのに淋しいなんて言わせないですよ」


「お前。そんな調子の良い事言って、また隊長に奢って貰おうとしてるんだろ」


「違うよバカ!」


「ハハハ騙される所だったよ、怖い奴だな」


「隊長信じて下さいよ~」


ずっと魔物とも遭遇しない上に、鼻の効くコボルト達に迷宮は意味を成さない。


此処が危険なダンジョン内だと思えない位に、コボルト達は笑い合っていた。


だが入り口に辿り着いた時、其の笑顔は凍りつく。


「な…… 」


剣では斬れそうにもない巨大な蔓が、何本も絡まり出入口を塞いでいるのだった。




其の頃、魔王城では。


「何処にも魔王が見当たらぬが、お主知らぬか? 」


「ククク、どうやら獅獣王国近くの塔で大きな戦いが在るみたいですよ」


魔王城に残されたクイーンは、退屈そうに欠伸をしながらウスロスに訊ねる。


「妾に一言も無しとは無礼な奴ぞ、どれ暇潰しに行ってみようかの」


「ククク其れは、お喜びされると思いますよ…… 」


こうしてクイーンはキラーアントもどきを引き連れ、魔王城から破邪の塔に向かい。


其れを見ていたウスロスは、不気味に笑うのだった。

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