第2話<ユニークスキル>

人を蔑む魔物達の暴言から察すれば人間は食べ物で、確認出来る範囲内に人間は自分だけ。


状況は最悪だった。




だが沢山読んだなろうの小説やアニメから考えれば大抵チートな能力を持っていて、こんな所からでも簡単に脱出出来るはずだ。


きっとそういう事だと自分に言い聞かせ、一呼吸して落ち着かせる。




そうと決まれば先ずは能力確認。


取り敢えず説明書が欲しいけど、そんな我が儘も言ってられない。


その方法すら解らないから、思い付く方法を試していくしかない。




能力確認。そう頭で念じてみる。


結果は何も起きない。




「クククッ、ククッ」




まだ背後では魔族の笑い声が響いているが、流石に気付いてではないだろう。




気にするな。負けるな俺。


折れそうな心を抑え、自分に言い聞かせる。




何かポーズが居るのか?。


そう思った俺は、閉じていた右手を開きながら能力確認。再び頭で念じてみる。


何も起きない。




「クククッ、グフッ」




何も起きはしないが、さっきよりも魔族の笑い声が大きくなった気がするし。余程面白かったのか咳き込んでいるから、気付いているのは間違いないだろう。




超恥ずかしい。


きっと赤面しているだろうが、其れが見えない位に薄暗いのがせめてもの救いだ。


そんな事まで気付かれたら、それこそ笑い泣きされそうだ。




能力確認と声に出すのを確かめたいが辛すぎる、もう心が折れそうだ。


流石に其れを実行する気にはなれない。




落ち着け。冷静になるんだ俺。


他の魔物も「ギャハハ、食いて~な」とか色々騒いでるが、もう後ろのクククと笑ってる野郎しか気にならない。




こういう時は脳トレじゃないけど、柔らかく考えた方が良いはずだ。


言葉が違うのか?


何だか根本的に間違ってる気がする。




ゲームと云えば。英語だ。間違いない。


数分前の自分に説教してやりたい気分だ。




ソレっぽい英語を念じれば出来るだろう。


観てろよ後ろのククク野郎、今その笑いを止めてやるからな。


ステータスオープン。そう頭で念じてみる。




出た。何も無いはずの空間に白い枠で囲われた能力値が。


どうだ。ざまぁみやがれククク野郎。この勝負は俺の勝ちだ。


今から確認する能力でぶっ叩き、クククと笑ってスミマセンでしたって言わせてやる。




どれどれ先ずは性別・男。


種族・人間。


まあそうだろう特に問題は無いな。




職種・囚人。


間違ってはいない。間違ってはいないが、普通は勇者とか賢者ではないのか?。


何か心に引っ掛かるが現状では事実だから認めるしかない。


きっと行動次第で変わっていく、そういうシステムだと信じよう。




そしてLV1・HP20・MP5。


来た-!。


MP5!まあ体力が低いのはLV1だから当然だろう。


だがMPに数値が有るという事は、魔法か特殊能力が使えるという事だ。




素晴らしい。勝ち確だ。


俺は神様の事を誤解していたよ。


やはり世の中見る人は見てくれているもんだ。


取り敢えずMPも異常に少ないから多発は出来ないだろうが、この状況は挽回出来るだろう。




重要なのは次の能力がどんなチート能力かだ。


決して選べる訳ではないが、やはりラノベの様な無双を夢見てしまう。




瞬間移動とか時間停止とかが理想だが、何でも切れる剣を操れるでも良い。


剣を奪う必要が有るから大変だけど、剣を持ったら最強だ。


どれでも上手く使いこなせれば全ての問題クリアだろう。




元の世界に居る両親には悪いが、なんにせよ夢が溢れてる。


伝説的な物語の始まり。


果てしない冒険の末に魔王を倒し、守った美しい姫様と結婚。


これで決まりだろう。




牢屋からスタートとか神様もニクい演出してくれるな。


だが俺にはバレてる。


其所は敢えて気付かない振りしておくが、そういう筋書きだろ。




この先の展開を想像しただけでニヤツキが止まらないが、先ずは確認だ。


ユニークスキル・擬態。




ん?擬態って何だ?。


確か虫が葉っぱの見た目に変化したりするって感じじゃなかったか?。


そのままの意味だったら、こんな牢屋の中じゃどうしようもないだろ。




マジか神様?


ユニークスキルのユニークって、そういう意味じゃないだろ。


絶望の底に叩きつけられた俺の心の叫びは誰にも届かない。




「クククッ、ククッ」




両手を冷たい床に付け、落ち込む俺を背後の魔族が笑っているがもう気にもならない。


実際は解らないが、そんな俺の精神LVは一つ上がったのかもしれない。


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