第3話 中華まん

 今年は少しばかり冬が早い気がする。

 夏は夏らしかったが、秋をあまり感じる事無く冬が近づいている。

 そして冬は寒いが、暖かい食べ物が一番美味しく感じる季節でも有る。

 例外として、温々ぬくぬくの部屋でアイスを食べると言うのも有るが、やはり、温かい食べ物が恋しくなる。

 特に寒い外で温かい食べ物を食べると、体が暖まるが何故か心も温かくなる。


 寒い外で食べる食べ物。

 寒中水泳やマラソン等の寒い競技の後で食べる熱々の豚汁。

 わざわざ公園で食べるおでん。

 ラーメンももちろん美味しいが、片手で気軽に食べられる食べ物。もうタイトルでバレてしまっているが、そう、中華まんで有る。

 別にルーツを探ったり『ここのが美味しい!』とかはしません。

 私の中華まんの思い出話です。



 私が中華まんに初めて出会ったのは小学生高学年の頃で有る。

 今では電子レンジで簡単に中華まんが調理ができるが、当時は蒸し器を使うのが一般的だった。電子レンジは普及していたが、今ほど安価で無く、そして、私の親が電子レンジに対して興味を示さなかったので、電子レンジを活用する食べ物、ピザとかグラタンの食品には縁が遠かった。


 寒い冬のある日、数人の友達と駄菓子屋に行った時、友達は数有る中華まんの中から肉まんを買った。

 私は、中華まんの存在は知っていたが、当時の駄菓子屋での値段は1個100円で有った。それは私が、菓子類に使って良い1日の小遣いの上限の額と同じだった。

 当時は100円有れば、おやつを買うには十分の金額で有り、ミニカップメン(ブタメン等)が60円で買える時代だった。

 私の中では『中華まんを食べてみたい!』と思っていたが、それで小遣いを使い切るのは勿体ないと感じていた。


 最初の頃は、中華まんを買わずに他の駄菓子を買っていたが、遂に誘惑に負けて中華まんを買ってしまう。もちろん買ったのは肉まんで有る。

 駄菓子屋のおばちゃんに、唯一持っている100円玉を渡しながら『おばちゃん、肉まん下さい!』と言ったはずだ。

 おばちゃんは100円玉を受け取ると、何故か駄菓子屋に置いて有る炊飯器に向かい、炊飯器の蓋をおばちゃんが開ける。


 ブワッと蒸気が炊飯器から揚がり、その蒸気が落ち着くと、炊飯器の中に中華まん達が鎮座している。ご存じだと思うが、中華まんは見ただけで大体種類が判るので有る。

 つやつやのまんじゅう肌はあんまん。まんじゅうに餃子みたいに皮が絞られているのが肉まん。まんじゅうの皮が黄色いのはカレーまん。皮がオレンジ色はピザまんと一目で分かるので有る。只、最近は中華まん自体にスタンプが押されているのも有るみたいだ。

 おばちゃんは炊飯器から肉まんを取り出し、今みたいに袋に入れずにそのまま私に手渡してくる。


 炊飯器の保温モードで温めているかは判らないが、手に載せても温かいなと感じるだけで有る。

 店の中では食べては当然ダメなので、寒い風が吹く世界に出て、肉まんの底の油紙を外して肉まんをかぶり付く!

 かぶり付いた瞬間……あまりの美味しさに驚いてしまう。


 フワフワの饅頭まんじゅうの食感と中から出てくる肉汁と肉あんの旨み!!

 かじった肉まんの先には美味しいそうな肉餡がはっきり見える。手では熱く無かった肉まんだが、餡が意外に熱くて、口をハフハフさせながら食べる。熱い物を飲み込むと喉から胃袋に掛けて、一気に体が熱くなる。味わう暇無く肉まんに夢中に成って一気食べた。

 肉まんを食べ終えた私は、体が一気に暖まった感じがした。

 そして、その冬の駄菓子屋のおやつの大半は中華まんに成った。


 人気の中華まんの中でも、カレーまんは特に人気が有って中々買えず、肉まんも売り切れの時が有った。カレーまんを駄菓子屋で食べた覚えは無い。

 その時、あんまんを食べたのだが、その餡がこしあんだったため、口内をやけどした覚えが有る。

 しかし、あんまんは肉まんほどの感激が薄かった……

 簡単に言えば、出来たての饅頭を食べているのと一緒だから、私は、あんまんを積極的に買う事は無かった。

 残念な時は蒸している最中で買えない事も有った。中華まんは冬のおやつのアイドル的な存在だったので有る。


 私が中華まんに出会った当時は、コンビニが近場にはまだ無くて、又中華まんを取り扱う駄菓子屋も本当に少なかった。

 私の遊び場には3軒の駄菓子屋が有ったが、中華まんを扱ったのは先ほどの1件だけで有る。厳密に言うと2件なのだが、それは駄菓子屋の隣が八百屋で、其所が中華まんを販売していた。しかし、八百屋は子供には敷居が高くて積極的に買いに行く子ども、特に小学生は少なかった。


 私の遊び場で唯一、中華まんを取り扱った駄菓子屋だが、当時の私にとって、炊飯器で中華まんを蒸すという発想には凄く驚いた。炊飯器はご飯を炊く物だとずっと思っていたからで有る。

 今では炊飯器レシピが当たり前だが、その時の私は、まさにカルチャーショックだった!


 しかし、炊飯器で中華まんを蒸すから1回に蒸せる量は、コンビニ等に置いて有るスチーマーと比べれば当然少なくなるし、保温も炊飯器とスチーマーと比較すると、どうしても短くなる。

 言うまでも無いが、スチーマーは決して安くないし、子供の活動時間に中華まんを売るのに、駄菓子屋は其処までの経費を掛けたく無かったのかも知れない……

 とこれが私の中華まんにまつわるお話で有る。



 今でも中華まんは、冬の代表的食べ物で有るはずだ!

 この時期のコンビニに行けば、大抵レジの横で売っているだろう。

 値段は流石にセール以外で、100円で買うのは難しいだろうけど、200円位出せば大体の種類の中華まんは買えるだろう……


 大きさは私が子どもの時と比べて、大分小さくなってしまったが、これは昨今の原料高騰や人件費絡みだから仕方が無い……


 しかしコンビニも賢いので、肉まんのプレミアム版に当たる物やコンビニ独自の中華まんを販売している。

 もちろん、肉まんに関しては餡のボリューム感や美味しさも違うし、コンビニで色々な中華まんが買えて楽しめるのは嬉しい。1つ買うだけなら良いが、複数買うと成ると財布と相談するのが悩みどころだ。


 スーパーでもチルドの中華まんはもちろん買えて、コンビニと比べて安く買えるが、スーパーによっては仕入れの関係上、メーカーや種類が限られてしまうのが欠点だ。


 ネットの記事で見たのだが、中華まんの一番人気は、肉まんだそうだ。

 私はピザまんと悩んだが、味のバリエーションや入手性の良さから、やっぱり肉まんに成った。そのままでも美味しい肉まんだが、調味料を付けて食べる楽しみが有る。

 私の調味料の定番は、練りからしを付けて食べるのが定番だが、ビールや発泡酒のおつまみ代わりに食べる時は辛子醤油で食べる。ウスターソース、ポン酢を付けて食べる方法も有るみたいだ。肉まんを何個か食べるなら、調味料を付けて食べるのも楽しいかも知れない。

 コンビニやメーカー、お店ごとによって味が微妙に違うので、好きな味を見つけるのも楽しいかも知れない……


 寒い時期に頬張る中華まん!

 夏に汗を掻きながら食べても美味しいが、冬が一番美味しいと思う。

 そんな中華まんのお話でした!


 第3話 おわり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る