第19話⁂達也はとんでもない事を?⁂
達也は弥生が出掛けるたびに「陽介と又抱き合っているのでは?」と嫉妬で気が狂いそうです。
弥生にしてみれば懸命に達也のリハビリにも付き添い支えているにも拘らず、時間を持て余している事を良い事に朝から晩まで達也の行き過ぎた監視に辟易して息が詰まりそうな毎日です。
又陽介もそんな事など知る由も無く、仕事が終わると我慢が出来ずに「会いたいほんの少しでも!」と電話が掛かります。
監視されている事が分かっている弥生は達也が眠った時間を見計らって陽介に電話を掛けています。
すると達也がコッソリ盗み聞きをしています。
うつらうつらとはしていましたが、なにせ弥生の事となれば別です。
眠いにも拘らずピクリと目を覚まして聞き耳を立てています。
それだけ弥生を愛しているという事なのです。
達也は弥生と陽介が会う約束をしているのを聞き、{これだけ言っているのにまだ懲りずに会うなど到底許せない!}
等々達也は「陽介と弥生は○月○日○時〷〷ホテルのラウンジで会う約束をしていますよ!」と貴理子に電話をしたのです。
怒り心頭、早速2人が会う日に貴理子はそのホテルに向かいます。
するとやはり2人はやっと会えた高揚感からか、貴理子が今まで一度たりとも見たことのない幸せそうな陽介の姿を目の当たりに只々涙がとめどなく溢れ出ます。
2人は食事を終えるとホテルのスイ―トル-ムに消えたのです。
{どうして~?グウウウ~😭子供まで授かったのに、その子供より弥生が大切なの~?許せない!}
貴理子は今直ぐにでも飛んで行って陽介に詰め寄りたい!いや今すぐにでもあの美しい仮面を被った裏の本性!只々男を狂わせる魔物!淫乱女!あの女の喉ぼとけをぐっさし葬り去りたい激しい衝動に駆られるのです。
夜遅く陽介は帰宅します。
一方の貴理子はもう何時間こんな状態で泣きじゃくっていたのか?
夜の11時だと言うのに洗濯物は干しっぱなし、坊や遥斗の世話もままならない状態で只々延々と泣き続けています。
「ワァワァ~~ン😭こんなに遅くまで弥生さんと愛し合っていたの~?何故?遥斗もいるのにどうして~?ワァ~~~ン😭」
「チッ違うよ~!誤解だよ~!仕事!仕事だよ!」
「何を言っているの~?私は見たのよ!あなたと弥生さんがホテルに消えたのをワァワァ~~ン😭お願い!行かないで!弥生さんの事は忘れて~!ワァ~~~ン😭」
「…………」
一方その夜弥生も達也に詰め寄られて大変な目に合っています。
「お前と言う女は俺と言う者が有りながらどうして陽介とそんなふしだらな事をするんだよ~?この阿婆擦れ女!」
そしてその夜も散々な罵倒と暴力です。
{こんな達也と今すぐにでも別れたい!ちゃんと回復して仕事に復帰できるようになったら絶対別れよう!}そう強く心に誓うのです。
協調運動障害も徐々に回復している達也ですが、まだまだ仕事に復帰できる状態ではありません。
産婦人科は若い医師に任せて何とか回っています。
暇を持て余していた丁度1996年7月クロ―ン羊ドリーが誕生
クロ―ンとは、いわば生命体のコピ-。
もうすっかり冷め切った夫婦関係。
修復の可能性はゼロに等しい達也と弥生。
気持ちは完全に陽介に傾いてしまい手の施しようがありません。
そんな時に生命体のコピーが現実のものとなった現在、達也は有る事にたどり着くのです。
羊でクロ―ンが再生できるのであれば人間だって絶対出来る筈。
{愛のないこんな砂漠の中で、いつまでも傷つけ合い無駄に時を重ねる等以ての外!何も現実の弥生だけが弥生じゃない、新たな弥生を生み出せば良いじゃないか!
弥生と別れてやる代わりに弥生のクローンを作らせる条件を突き付けてやろう。
現実の弥生は俺を愛してくれなかったが、クローンは違った環境で育てられれば性格や態度が全く異なる別人格になるらしい。クロ―ン人間の弥生ならひょっとしたら俺を愛してくれるかもしれない、そうだ!子供もいない俺にとって弥生がすべて!他の女など考えられない絶対に!それでもそんな簡単にはいかない、誕生しなかったら絶対に別れない!誰があんな陽介なんかに渡してたまるもんか!クロ―ンが生まれれば弥生は自由にしてやる。だがそれまで今までの何十倍も大切にしてやろう。ひょっとしたら弥生の気持ちが和らぐかもしれない。そうしたら又弥生が戻って来てくれるかもしれない}
日本ではクロ―ン人間は禁止されています。
とんでもない犯罪です。弥生がそう簡単に首を縦に振る筈がありません。
それでもどうしても弥生の細胞から新たな生命体を誕生させようと奮闘する達也です。
『クローン人間の作り方は、生殖細胞(卵子や精子)以外の
普通の細胞(体細胞)の核を取り出し、
核を取り除いた未受精卵に移植して培養し、
母体の子宮に移植→妊娠→出産。
体細胞の核には遺伝情報が詰まっていて、
生まれた人は、使った体細胞と同じ遺伝情報を持つことになるが、
外見は瓜二つになるが、だからといって同じ人(完全なコピー)にはならない』
果たしてこの異常なまでの愛の化身は本当に誕生するのか?
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