小さなレコンキスタ(現代)

 かつてイスラム教徒に奪われたイベリア半島を、キリスト教国家が再征服をした、ということがあった。

 レコンキスタ――再征服運動、国土回復運動とも言うそうだ。

 なんと七世紀にも及ぶ長い長い活動だったとか。

 もちろん関わった国家は一国ではない。長い年月、多くの人々のたゆまぬ努力によって成されたものだ。

 わたしも、その精神にあやかって、侵食された領土を取り返す。

 七世紀どころか七年もかけるつもりはないけれど。


「あっくん、ちょっと荷物置かせてね」

「またぁ? ねーちゃん最近俺の部屋に物を置きすぎだと思うけど」

「そう硬いこと言わない。ここはもともとわたしの部屋だったんだし」


 そう、遠方の大学に通うのに家を出て行った間に弟がわたしの部屋を乗っ取ってしまったのだ。

 両親も、「もうあんたあっちで就職決まったんだし」とか言ってわたしの「領土」を奪った弟を容認した。

 むこうで就職っていったって家にちょくちょく帰ってくるんだから、自分一人の居場所は必要なのだ。

 中坊男子よりわたしの方がひとり部屋は必要でしょ。

 でも口で言っても親も「敵側」だから通じない。

 ならば実力行使しかあるまい。

 まずは隅っこに私物を置いておいた。

 それを横にちょっとずらして座ってスマホを見るぐらいのスペースは確保した。

 この調子で帰ってくるたびにわたしの活動範囲を広げるのだ。

 そしていつの日か、弟が音をあげて部屋をあけ渡すまで、わたしの戦いは続く。



(了)

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