僕は、風船になった。

@ramia294

第1話  風船の僕

 ユラユラ。


 ユラユラ。


 僕は、空を登っている。


 気持ちの良い春風が、少しずつ僕たちを何処かに運んでいく。


 そう、僕たちだ。

 僕だけでは、ない。


 気がつけば、周囲に風船仲間は、たくさんいた。


 緑だったり、青だったり、黄色もいた。


 赤は、めずらしく、周囲には、僕だけだった。


「あら、君は、赤なのね。お気の毒に」


 緑の風船に声をかけられた。


 何が気の毒なのだろう?


 フワフワ。


 黄色い、風船が、そっと近づく。


「落ち込まないで。きっと次は、大丈夫だから」


 意味が、分からない。


 ブーンという音が、聞こえてくる。


 ハチドリだ。光沢のある、青い頭部と、真っ赤な羽根。首には、金の襟巻きを持ち、飛んだ軌跡に銀色の光の粒子が、現れては、消えていく。


 ハチドリって、こんなに美しい鳥だったかな?


 ハチドリは、風船をひとつ、ひとつに近付き、声をかけている。


 それから、そのくちばしで…。




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