ゴミみたいなプライド
『高慢ちきでクソ生意気な<メスガキ>相手に遜るとか、できるか!』
とか言う奴もいるだろうけどよ。そんなゴミみたいなプライドが何の役にも立ってねえから、今の境遇なんだろうが。ちったあ頭使えよ。
俺は自分の利になるなら相手が誰だろうと関係ないね。
すると、<お嬢様>は、
「あんた、ホントに役に立つわね。気分がいいから特別に私の名前を教えてあげる。私は、カティア。カティア・ルドエル。『カティア様』と呼びなさい」
衣装ケース三十個余りを丁寧に迅速に運んだ俺にそう名乗ってくれた。
「俺のことはマービンとお呼びください。ドート村のマービンです」
こっちも名乗ると、
「あんた、ギルドから派遣されてんの?」
と訊いてきたから、
「はい。その通りでございます。カティア様」
きっちり遜って応える。そんな俺にカティア様は、
「じゃあ、ギルドに正式に仕事を依頼するから、あんたはこれから私の従者として仕えるの。いいわね?」
提案してくれた。
ははは! これあ、幸先いいぜ!
「仰せのままに」
浮かれちまいそうになるのを抑えて、俺は改めて最敬礼で応えた。決まった仕事に豪商とのパイプ。一石二鳥とはこのことだな。
ちなみにカティア様が引っ越すことになったのは、家業が好調で、今の屋敷が手狭になったからだそうだ。屋敷の一部がオフィス代わりになってるそうだし、人の出入りも増えるし、何より、仕事で関わりの深い貴族の屋敷に近い屋敷に移るんだとか。まあ、道理だな。
で、カティア様の荷物については俺が気張って積み終えたから、一足先に引っ越し先の屋敷に向かう。
その中でもカティア様は、
「マービンはずいぶんと働き者ね。他の連中はどうやって楽をしようかってことばっかり考えてるのに」
俺を一緒の馬車に乗せてくれて、話し掛けてくる。普通の従者は荷馬車に乗るか、せいぜい、御者と一緒に座る感じなんだがな。これはそれこそ<侍女>あたりの扱いだ。ちなみに<侍女>ってのは、女性に仕える雇われ人で、まあ家政婦の一種なんだが、実は一般的な<召使い>や従者よりはそれなりに地位があって扱いは悪くない。もちろんそれは仕える相手にもよるのも事実ではある。
で、俺は、恭しく頭を下げつつ、
「それはひとえにカティア様のお人柄によるものでございます。カティア様のお役に立てるのがこのマービンの喜びになりますので」
満面の笑顔で応えると、
「そ…そう。じゃあこれからもしっかりと働きなさい……!」
なんか気恥ずかしそうに視線を逸らしたんだよな。
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