2-2

 ……えっと……どうすれば……?


「どうしたの? セイ」


「この、おねえちゃんが、ずっと、ヒイのこと、見てた」


「ヒイのダンスを? どうして?」


「知らない。でも、ずっと、見てた」


「わかったぁ! ヒイのダンスが、すっごく上手だったからだよ。そうだよね、おねえちゃん?」


 突然、ヒイと呼ばれた子が、嬉しそうに笑顔で、わたしに話を振る。


 わたしは、頭の中が混乱したまま、声を出さずに、首だけを縦に振っていた。


 それを聞いたヒイと呼ばれた子は「ほらね」と自信満々に言うと、さっきまでダンスをしていた場所へトタトタと、スキップ交じりに戻ってゆく。


「じゃあ、続きも見ててね」


 え? ……続き? いや、ちょっ……とま……。


「ちょっと、待って!」


 大きな声を出してしまった。


 ヒイと呼ばれた子が、近くに戻ってきて、二人でわたしの顔を見る。二人の顔を見比べると、二人とも、双子のように同じ顔つきをしていて、二人とも、不思議なものを見るように、首をかしげていた。


「えっと……二人の……」


「あたし、ヒイ!」


「ぼく、セイ」


 わたしが質問を言う前に、二人は名前を答えた。求めていた答えとは別ものなんだけど……。


「そ、そうなの……じゃあ、二人は……」


「ダンスをしていたのっ」


「……観察」


 ……また先に答える。やっぱり、求めていない答え。それ以前にセイって子の言った観察って何? 何を観察してたの? わたしか?


「……そ、そうじゃなくて、こんな時間に何してるの? お父さんとお母さんは?」


 私が尋ねると、二人は歳相応の興味津々と言わんばかりの純粋な瞳を私に向けた。


「おねえちゃんって」


「大人、なの?」


 大人、わたしが? たしかに、この二人から見れば大人に近いかもしれない。それでも、十七歳、高校三年生で受験戦争真っただ中のわたしが、大人であるはずがない。


 大人であってほしくない。大人になんか……。


「ち、違うっ! わたしは、わたしは大人なんかじゃない!」

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