Episode-Service3 脱衣ジャンケン1
聖騎士隊の中でも第六番団は最も優秀な逮捕率を誇る。
犯罪が起きてから即座に現場で対応できる巡回システムを構築してあるからだ。
そんな効果もあって夜遅くになっても街に明かりが灯り、喧騒が飛び交う店も少なくない。
かくいう業務を終えた俺たちもその中に混ざりこんでいた。
「いやぁ。悪いな、ルーガ! アタシまで奢ってもらって」
上機嫌に笑いながらおしぼりで手の汚れをぬぐうカルラさん。
通された個室タイプの座敷に男らしく胡坐をかいている。
仕事終わりという状況もあり、今日は動きやすさ重視のラフなシャツ姿だった。
あまりおしゃれに興味なさそうなのも理解があるし、何より薄着なため非常に眼福である。
もちろん凝視するなんて下手な真似はしない。
こう……視界に入れるように自然と……コツは全体を俯瞰するイメージを持つことだ。
「いえいえ、いつもお世話になっていますから」
「私は納得いかないけどね。カルラちゃんはもっと先輩として威厳とかないの?」
そんな彼女に厳しいツッコミを入れるのは我らが第六番団のトップを張るリオン団長。
おっぱいの大きさでもトップを張っているし、今もぎゅうぎゅうと息苦しそうに服に詰められた胸が張っていた。
身体はドスケベだが中身はいたって清楚な彼女もまた性格を表わすが如く、胸元にフリルが刺繍されたベージュのシャツを着ていた。同系色の濃い目なスカートに黒革のサスペンダーを付けている。
サスペンダーがまっすぐではなく、おっぱいの圧力に負けて歪んでいることについては触れない。触れてはいけない。
そして俺から二人に言わせてもらいたい。
なんで、そんな無防備なんですか……!
ここは隊舎じゃないんですよ!?
店に到着するまでの道中、視線がバンバン集まっていたのを感じていた。
この区画の人間は普段の団長たちの働きぶりを見ているからある程度は自制してくれる。
それでも男は性欲には逆らえないのだ。
さりげなく視線をカットするのにどれだけ苦労したか。
その分、恨みがこもった視線を向けられたのは言うまでもない。
「どうしたの、ルーガくん? しかめ面しちゃって」
「ああ、いや、実はこういう店に来るのって初めてで……評判と耳に挟んだのでお連れしたのですが」
「じゃあ、ルーガは酒を飲んだ経験ないのか?」
「お恥ずかしながら、そうなりますね」
「仕方ないよ。成人したばっかりだもんね」
「よーし。なら、アタシがおいしい酒の飲み方って言うのを教えてやるよ! 今日はめっちゃ飲むぞ!」
「カルラちゃんは自分が飲んだ分はきちんと払うようにね」
「えー! 今日はルーガのおごりなんだろー!?」
そう。今日の会計は全て俺持ちである。
発端はこの間のリオン団長マッサージ事件。
彼女が無意識にまき散らす誘惑から逃れるために口にした「あれ? 太った?」発言が尾を引き、謝罪と親睦を深めるという名目でお誘いしたのだ。
すると、どこからか聞きつけたのかカルラさんまで参加した……という流れ。
「ただ酒と聞いたからには参加するしかないからな」
「もう……幼馴染として恥ずかしい。ごめんね、ルーガくん。あとでちゃんと払わせるから」
「あはは……大丈夫ですよ。カルラさんにも日ごろお世話になっていますし、お金を使う趣味もしていないので」
「よっ! さすがはルーガ! アタシが認めただけの気概がある男だ!」
気をよくしたカルラさんが俺にヘッドロックをかけて、グリグリと乱暴に頭を撫でる。
あっあっあっ。
柔らかいものが……おっぱいが頭に当たってる……!
もうこれだけでお代は十分にもらったようなもの。
だらしない表情にならないように頑張って引き締めているが、グリグリと強く抱き寄せられているのでおっぱいの誘惑に負けそうだ。
カルラさんはこんな風に男勝りな性格なので、あの夜の戦いの後はこういうスキンシップもよくしてくれる。
彼女からすればただ後輩を可愛がっている感覚なのだろうが、俺からすれば死活問題で……。
今もムクムクと大きくなりたがっている息子を必死に太ももで挟んで我慢させていた。
いつか挟み過ぎで血が止まって壊死しないか心配である。
「……せっかく二人きりでご飯のチャンスだったのになぁ?」
「団長? 何か言いました?」
「ううん、なんでもない! 戯れもそこまでにして料理頼んじゃお? 明日も仕事はあるんだから羽目は外しすぎないようにね」
「「はーい」」
まるで母と子供である。
リオンママの言葉で俺たちは各々の席に戻る。
呼び鈴を鳴らせば、しばらくして店員がドアを開けて入ってきた。
「ご注文はお決まりですか?」
「はい。とりあえずエール3つとリリ鳥の炭焼き、それから……」
てきぱきと注文していく団長。
こういうのは経験者に任せておくのがいちばん。
俺は口を出さずに、確認の目配せにただ頷くのみ。
「あと店員さんのオススメってありますか?」
「そうですね……」
ん? なぜかこっちをチラリと見たぞ?
「お仕事でお疲れでしょうし、精が付く海の食材をふんだんに使った鍋などいかがでしょう?」
「へぇ……美味しそう。じゃあ、それも」
「かしこまりました。それでは少々お待ちくださいませ」
あ、また俺を見て今度はニヤリと笑った。なぜかサムズアップ付きで。
よくわからないが、悪意があるわけじゃなさそうだし会釈を返した。
この時の俺は知らない。
店員の勘違いによるサービスから引き起こされる地獄を。
料理が運ばれだしてきて最初の方は順調だった。
慣れないアルコールに苦戦しつつも大人の味を楽しみ。評判通りの品々に舌鼓を打ち。
本日の主役とばかりにやってきた鍋が運ばれてきた。
「結構独特な匂いがするんだね」
「ぷはぁっ。いいじゃねぇか。この貝なんかすごいうまそうだぜ」
「本当だ。すごいプルプルです」
「いただいちゃいましょうか」
海鮮と野菜がたっぷり詰められた鍋を食していく。
すると、なぜか腹の底から体に熱が宿っていた。
その熱は伝播していき、血流が巡って元気をなくしていたマイサンが起き上がろうとしている。
なっ、どうしてだ……!? 今はただ楽しく食事をしていただけなのに!?
この場においてまず大切なのは隠すこと。
慌てて気づかれていないか、二人に視線をやると異変が起きていたのは俺だけじゃなかったことを悟る。
「それにしてもこの部屋、なんだか暑いね……あっ」
胸元を手で仰いだ瞬間、パツンとボタンが弾けて飛んでいく。
ほんのりと赤らんだ谷間があらわになる。
その瞬間、むわぁぁぁ……と広がる色気。
この団長……スケベすぎる……!
いや、スケベなのは前からなのだが今はいつもよりも目のやり場に困る。
「ルーガくん……ごめんね……」
「いえ、お気になさらず」
幸いにもボタンが視界を封じる形で貼りついているので事なきを得た。
そのボタンも色気にやられたのか勢いはなく、しっとりとしている。
「団長。とりあえず、これを羽織ってください」
「うん、ありがと……」
ボタンを目に貼り付けたまま、自分の上着をリオン団長に渡す。
目がとろんととろけているが、ひとまずは放置でいいだろう。
問題はこっちだ。
「あ~……暑い。服脱いじゃお~」
シャツに手をかけて下着一枚になろうとするカルラさん。
へその辺りまで日焼けした素肌と、たくましい腹筋がチラ見えしていた。
俺はとっさに飛びついて腕をつかむ。
「ルーガ離せ~。好きにさせろ~!」
「させられませんって!」
俺の社会的地位のためにも全力で防がせてもらう。
ていうか、酔っぱらってるのに……力つよ……!
「えぇ~」
「えぇ~じゃありません! ほら、お水飲んで――もがっ!?」
しまった、油断した!?
目を離した瞬間、口に突っ込まれたのはカルラさんが飲んでいた酒瓶。
抵抗もできず、どんどん喉を熱が通り過ぎていく。
あっ……ダメだ、これ……意識が……保てない……。
「――ほぁたっ!!」
「おおぉ! いい脱ぎっぷりじゃねぇか、ルーガ!」
「ルーガくん格好いい~」
二人がパチパチと拍手してくれる。
気が乗ったカルラさんは腕をグルグルと回してこちらに向かい合うように立つ。
「よ~し。じゃあ、アタシが可愛がってやろうじゃねぇか。第六番団の隠れ歓迎行事……脱衣ジャンケンで!!」
「脱衣ジャンケン……!?」
火照っていた体に燃料がくべられ、さらに熱さは増す。
「そうだ。先に全部脱いだ方が負け! 簡単だろ?」
「それは不味いでしょう……!?」
その言葉にわずかに残っていた理性が頭を冷静にさせる。
「なんだ? やらないのか?」
「やりまぁす!!」
しかし、カルラさんが挑発するようにシャツに指をかけて、胸元をチラチラとさせたことで全てが吹き飛んだ。
これは完全合意! 絶対におっぱいを見る!
強い決意を抱いた俺はぎゅっとこぶしを握り締めた。
◇脱衣ジャンケン2に続く……そちらが終わったら、幕間の方へと移動します。
リハビリに短編。マドカがいたら完全にR-18まで持ち込もうとするので残念ながら出番なし。時系列的には一章と二章に間くらいに思っていてください。◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます