Episode3-1 誘い合い
◇第三章よりマドカ→ルーガへの呼称を「ルーガ先輩」に変更します。併せて過去の話も「ルーガ先輩」に変更していきますのでご了承ください。理由は後輩キャラなのに勿体ないと思ったからです◇
小鳥のさえずりが陽気な朝を知らせてくれる。
カーテンを
「うーん、なんて清々しい朝なんだ」
外の空気を浴びようと窓を
澄んだ自然の匂いが肺を満たしてくれる。
世界が輝いて見えた。
リオン団長のおっぱいで世話をしてもらったあの日から俺は絶好調。
これからも団長に管理してもらえるのかと思えば今までイライラしていたことなど些事にしか感じられない。
戦場でも、金玉でも二つの意味で俺のピンチを救ってくれた団長のおっぱいはやはり偉大であると改めて認識させられた。
隊服に着替えて部屋を出て、リビングへ向かうとすでに団長やカルラさんたちがいた。
朝食が盛り付けられた皿を取り、定位置の席に座る。
「おはようございます、みなさん」
「おう、おはようさん。ルーガ
「ははっ。おかげさまで元に戻れました」
「ここの副団長はルーガ先輩しか考えられませんから、やっとですね。おはようございます」
「おはよう。マドカも今までフォローありがとうな」
「おはよ、ルーガくん。今日もなんだか元気そうだね」
俺がなぜ元気なのかを唯一知っている団長が微笑む。
……しかし、あれだな。
胸だけなら我慢できていた。
あれ以来、今まで意識したことなかった唇に目が誘われてしまう。
くっ……! ダメだ、ダメだ!
一度でも自分に甘くなると団長だけでなくカルラさんたちまで、そういう目で見てしまうかもしれない。
条件反射のごとく足の甲をかかとで踏み抜いて桃色思考をキャンセルした。
「ええ。もう活力が溢れてますよ。お休みもいただいてますし」
「左腕の調子はどうなんだ? 結構重症だったんだろ?」
「少しずつ慣らしていきます。そしたらカルラさんとも一戦できますね」
「先輩、私も! 私もまた稽古つけてほしいです!」
「わかった、わかった。だから、ちゃんと座りなさい」
頭を撫でてやると、マドカはご満悦の様子でおとなしく従ってくれる。
なんだかんだ暴走癖はあるけど可愛い後輩だ。
みんなとのやりとりで日常が戻ってきたのを実感する。
ガリアナにいた時はハラハラと綱渡りで、童貞と命を懸けた毎日だった。
やはり俺はこういう穏やかな時間がいい。
できれば、ここにミューさんもいてくれると嬉しかったけど……またどこかで会えたなら今度こそ誘ってみよう。
「団長。よかったら今日は執務を手伝わせてください。マドカは巡回当番ですから一人は辛いでしょうし」
「いいの? ルーガくん、お休みでしょ?」
「やることがなくて困っていたんです。もともと趣味の多い人間でもありませんから」
単身調査を終えた俺には腕が完治するまで休暇が与えられている。
なんでも聖女様曰く、すぐにまた割り振られる任務があるみたいで戦闘ができる状態までいち早く戻してほしいとか。
今度は単身ではないらしいから少しばかり気持ちも楽だ。
話は戻すが、俺には趣味がなく時間を持て余している。
鍛錬を積むといっても一日中やっているわけじゃないし、愛棒と戯れる必要もない。
学生時代からひたすら剣や戦闘技術に時間を割いてきた弊害が出ていた。
「あー、たしかにルーガの部屋って物少ないもんな」
「普段から寝ること以外にあまり使っていませんしね」
「では、今度一緒に買い物に行きませんか、先輩。私も本を買いに行きたくて、先輩にもおすすめしたいです」
「いいな。俺もついでにシャツとか買いたいんだよ。なぜか任務前より減ってるんだよな」
「……へ、へぇ。不思議なこともあるんですね。あっ、そろそろ巡回の準備をしないと」
なぜか声を震えさせたマドカは一気に口に詰め込み、そそくさと席を立つ。
「ごちそうさまでした! それではお先に失礼します!」
「お、おう。気をつけてな」
「はぁ……。じゃあ、アタシもいってくるわ」
「うん、いってらっしゃーい。ルーガくん、私たちもそろそろいこっか」
「わかりました」
食器を片付けて、俺と団長も執務室へ向かう。
談笑でも交わしながら歩こうと思っていたのだが、なぜか団長の歩く速度が速い。
つまり、それだけ上下に揺れて眼福なわけだが……以前までなら俺は視線を外していた。
俺たちはすでにおっぱいを見た見ていないで怒られる関係じゃない。
だって、もっとすごいことをしているんだ。
俺と団長は定期的に肌を重ねる契約をした肉体関係を持っているんだから。
……最低じゃねぇか!!
あれ!? 今の俺って団長の優しさに甘えて性欲処理してもらってるただのクズじゃないか!?
なんて汚れた関係なんだ。上司と部下よりもよっぽどひどい。
そうか……団長はなるべく管理の話にならないように早く執務室へ行きたいのだ。
まさか職場でエッチなことをする人間が聖騎士隊にいるわけない。
あの時はあくまでご褒美。これからも管理してくれると言っていたが、それでは団長に負担がかかるばかりだ。
俺は毎日でも団長に管理されたい。だが、それは俺のわがまま。
しかし、どうにかして関係を正さないと……。
とりあえず、何かいい案が浮かぶまでは管理の期間を空けよう。
「ルーガくん? なにか考え事?」
動きを止めた俺に気づいた団長が心配気に尋ねてくる。
さすが優しさの塊でできている人だ。
「いえ、問題ありません」
「ふーん……」
「な、なんでしょうか」
いろんな角度から顔を覗き込んでくる団長。
それからキョロキョロと周りを見渡し、一つ頷くと俺の手を引いて執務室へと入った。
「だ、団長?」
「ルーガくん……もしかしてシたかったりする……?」
「……は?」
「だから、その管理……してあげようかなって」
「いいえ、結構です。仕事しましょう」
「別に私はいいよ? その気にしな――ん?」
頬を赤くさせ、管理の話をしてくれる団長の横を通り過ぎて席に着く。
すみません、団長……。
俺が紛らわしい態度を取ったばかりに、その優しさを無碍にしてしまって。
俺が団長の胸に気を取られていたのがバレていたんだろう。
だから、管理しようなんて言い出してくれた。
しかし、俺は決めたんです。
この管理をしてもらう肉体関係を清きものにしてから、おっぱい性活してもらうと!
「そ、そうだね。今日も量がいっぱいだし、終わらせちゃおっか」
団長も机に向き直ると、ペンが紙の上を走る音が部屋に響きだした。
互いに無言なので余計に大きく感じる。
その中でさっきから団長の手が止まって、チラチラとこちらを見ていることにも気づいている。
一体どうしたのだろう。
気になるが、今は別のことに意識を集中させたい。
団長と清き関係になる方法を探さねばならないのだ。
やはり管理を解消するのが一番手っ取り早いだろう。
しかし、それは団長を傷つける結果になるのではないだろうか。
『私のおっぱい性活が気持ちよくなかったんだ……女としての自信失うなぁ』なんてことになったら……!
恩を仇で返したくない。
決して団長に管理してもらうチャンスを手放したくないからではなく、団長の女性としてのプライドを傷つけないための配慮だ。ああ、そうさ。決して違う。
ならば、対価を支払うというのはどうだろう。
団長におっぱい性活してもらう代わりに何か物をプレゼントする。
これならいける……わけないわ!?
もっとひどい図になってるじゃないか!
「ルーガくん? 頭抱えてどうしたの? 痛いの?」
「すみません、団長……! 俺は最低のクズ野郎です……!」
「すごく悩んでる!? ルーガくんはクズじゃないよ? いっぱい私たちのこと考えてくれてる優しい人だよ!」
違います、団長。
俺はどうやったら団長に嫌われずにおっぱいで管理してもらえる性活を送れるか考えるような変態なんです……。
「私に何か手伝えることあるかな? ほら、素直になったらスッキリできるかも。スッキリしよ? ね?」
素直に……。
……そうだな。認めよう、自分の欲望を。
そのうえで団長の望むことも叶えればと思う。
「団長はいま俺に何をしてほしいですか? 教えてください」
「私!? えっと……その……ルーガくんから誘ってくれたら嬉しいかな……なんて」
「誘う……? ……あっ」
思い出した。
ガリアナに赴く前、団長とシャツを買いに行く約束をしていたことを。
それなのに俺は今朝、マドカと買い物にいく約束をしようとしていた。
今までの団長の不可解な行動にもすべて説明がつく。
団長は怒っていたのだ。先約していた自分よりもマドカと服を買いに行こうとしていたことに……!
愛棒の管理なんて関係がなかった。
リオン団長は俺の不義理な態度にご立腹だった。
これが正解。
くそっ! ここまで言われるまで気づかないなんて……!
決めた。俺は団長を買い物に誘うぞ!
「リオン団長!」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
「明日の終業後になんていかがでしょうか?」
「そ、それなら今からでもよくない?」
「今からですか!? なら、外に出ますか?」
「刺激的すぎるよ!? いきなりお外は私もハードル高いというかなんというか……」
「でも、外に行かないとできませんよ?」
「つ、強気……! ……わ、わかりました。ルーガくんがそれを望むなら私も受け入れます……」
「ありがとうございますっ!」
頭を下げて、感謝を告げる。
本当に団長はお優しい方だ。
俺のミスなのに団長自身がお願いする形で言及することで、余計な罪悪感を抱かせないように配慮してくれるなんて……。
これは団長のシャツは俺が代金を出してプレゼントさせてもらうしかないな。
「じゃあ、はやく仕事を終わらせましょうか。楽しみにしておいてくださいね、団長」
「う、うん、すごい楽しみ……」
ところで、さっきからなんで団長は頬を赤くしているのだろう……?
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