第18話 さよならメモリーズ その9 (涼宮晴美編)

 残った俺たちの間にはなんともいえない空気が流れていた。


 直も流石にその空気を読み取ったのか、黒板の文字を消すと俺たちの方を振り返った。



「さて、、では、今日は解散」

「はぁっ!?」


 直のその発言に驚いたのは、どうやら俺だけだったようで星奈さんもてきぱきと帰り支度をすでにしていた。


「ちょっと待てよ!! 心配じゃないのかよ!! 晴美ちゃんのこと!!」


 俺が怒鳴りながら、出口に手をかけていた直の手を掴むと直はゆっくりとこちらに振り返った。


「悪いな薫、今日は少し用事があるんだ。また明日、、必ず、明日また会議の続きをするからーー」

「そうじゃねぇだろ!! お前!! 意味わかってーー何、泣いてるんだ? お前……」

「……すまない、、今は、そっとしておいてくれ」


 直は、そういうと俺から逃げるように生徒会室を後にした。


 それと同時に、星奈さんも帰り支度が終わったのか鞄を持って、立ち上がった。


「星奈さん!!」

「これはあなた自身の問題よ。私たちには何も出来ない……」

「俺自身の問題って! どういう!!!!」

「自分で考えなさい!!」


 星奈さんは俺を怒鳴ると、生徒会室の扉に手をかけた。


「もう一つ、、あなたにヒントをあげるわ」

「ヒント?」


 俺は、星奈さんの以外な言葉に耳を疑った。


「それはあなたの過去。それも、、あなた自身が【封印した過去】に答えがあるわ」

「俺の過去……」

「私が教えるのはここまで。後は、自分で考えなさい……」


 星奈さんはそう言うと、生徒会室の扉を力強く閉めた。


       俺が封印した過去……。


 それには一つ、【心当たり】があった……。


 それは、ここ数年の記憶……。


 とある理由で俺は地元であったこの地を離れ、両親と共に少し離れた街に引っ越した。


 そこでは、とても仲の良い姉妹がいて……。


 姉妹……?


 それは、どんな姉妹だった……?


 顔は? 性格は?


 何か、、何か、その姉妹との思い出があった気がするのに、、仲が良かったような気がするのに、、何も思い出せない……。


 そもそも、その姉妹は本当に姉妹だったのか?


 俺の中で無性にこの【姉妹】というワードが引っかかっていた。


 晴美ちゃんは、一人っ子のはずだ。


 姉妹がいるなんて聞いたことが……。


 ちょっと待て……そもそも俺は、何で晴美ちゃんとその姉妹を……。


 何か掴めそうなまさにその時、また俺をあの【激しい頭痛】が襲われた。


 くそっ、、またか……またなのかよ! 俺は、、また……くそっ……。


 そして俺は、そのまま眠るように意識を失った。

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