第6話 ツンデレとヤンデレ その4

 心当たりをいくつか考えてみる。


 だが、今この状況になりえるものはない。


 ……どうして、こんな状況が起こっているんだ?


 俺は、今回、明らかに無関係……だよな。


 日頃の行いからか、はっきりとは自信が持てないがーーっく、もとはといえば、直が勝手にーー。


 まっ、まさか!?


 視線を向けた先、そこには、両手で顔を隠し、わずかな手の隙間からこちらを覗き、楽しそうに笑みを浮かべている直の姿があった。


 ……この二人に、何を吹き込んだ。


「……直のやつ、後で覚えてろよ……ただじゃおかなーーあっ……」


 思わず心の声が漏れ、二人が更に俺を睨む。


 晴美ちゃんにいたっては鼻息まで荒くなっている。


 かわいい……じゃない、マズい……。


 何を吹き込んだのかは知らないが【完璧】に誤解されている。


 そして、吹き込んだ本人は、何事もなかったかのようにケロッとしてやがる。


 俺はそんな直をキッと強く睨む。


 その視線に気づいた直はーー。


 はい! 出ました!! 伝家の宝刀【下手】な【泣きマネェェ】


「相変わらず面白いわね。ここは」


 星奈さんは、この状況を枠外から見る【お客さん】となり、どこから用意したのか、上品にお紅茶を飲みながら、楽しそうに笑っていた。


 なんなんだ? この俺の扱い……こんなのなんの得も……。


「先輩!!」


 声のした方へととっさに振り向く。


 そこには、【マジ泣き】しそうな目をした晴美ちゃんが俺を睨んでいた。


 かわいい……じゃない! んっ? この流れさっきもーー。


 いや、違う違う。


 そう、そう! これが【泣く】ってことなんだですよ!!


 いや、本人はマジで泣いているんだけど。


 ……本当に、純粋なんだな晴美ちゃんは。


 直の奴に、爪の垢でも煎じて飲ましてーー。


 っておいっ!! 


 視線の先、そこには星奈さんと同じテーブルで紅茶をいただいている直の姿があった。


 おまけに、楽しそうに談笑までしている。


 俺の視線の先に気づいたのか、清美と晴美ちゃんも俺と同じ方向を見た。


 そして、状況を理解した二人が、騙されていた怒りも相まって、直へと飛びかかり(ついでに星奈さんも)もみくちゃ状態になった。


 俺は、その様子を見て思わず笑みをこぼす。


 さて、ゆ○ゆ○でも読むかな。

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