第8話水瀬さんは可愛いものが好き
さて、あれから俺と水瀬さんは地元でちょっと大きいデパートに来ていた。
「わ〜!広〜い!」
「ははっ。楽しそうですね」
俺がそういうと『はっ…!』としたような顔をしてこちらを見てわたわたし始めた。
「えとえと、す、すみません…。田舎から出てきたものでこういう広いスーパー?とかは来たことないもので…」
と、顔を少し赤らめ話す姿も…うん。可愛い。
「あはは!水瀬さんここはスーパーじゃ無いですよ。ここはデパートと言うものです」
「デパート?」
「えぇ。見てわかる通り色々な商業施設の集まってできた場所…って言えばいいんですかね」
「へぇ〜…デパート、ですか」
と、物珍しそうに周りを見渡す水瀬さんは見た目もあってかちょっと幼く見える。
けど、本人には言うまい。なんか気にしてるようだし…。
「とりあえず、今日は時間もありますしのんびりと見て回りましょうか」
「…いいんですか?」
「もちろん。それに…先程からあのお店を気にしてるようですし」
そういい俺は水瀬さんが見ていたお店『集まれぬいぐるみ好き』と言うそのままの意味のぬいぐるみのお店を見た。
「あはは…バレてましたか」
「バレてましたね。さ、行きましょうか」
「はい」
そして俺と水瀬さんはそのお店に入った。
『いらっしゃませ〜!』
と、店員さんの声を聞きつつ見て回ると確かに色々なぬいぐるみが置いてあった。
「わぁ〜…猫に犬にナマケモノまで!か、可愛いですね…」
そういい水瀬さんは色々なぬいぐるみを手に取り目をキラキラとさせていた。
「ははっ。水瀬さんは可愛いものが好きなんですか?」
俺がそう聞くと水瀬さんは人差し指で自身の頬をポリポリしながら頷いた。
「恥ずかしながら…そうなんです。昔から可愛いものが大好きで…あ!これなんて和泉さんに似てません?」
そういい水瀬さんが俺に見せてきたものは…魚のぬいぐるみだった。
「お、おぅ…。見事に目が死んでますね」
うん。俺と負けず劣らずの死に目っぷりだ。
「ふふっ…でも、意外と可愛いですよ?ほら、これ3枚下ろしバージョンもあるみたいですし」
そういい水瀬さんはその魚の身を剥ぎ…見事に3枚下ろしにされた魚を見せてきた。
「…なんでしょうか。こう、シンパシーを感じてた物がこうなると…心に来る物が有りますよね」
しかも、目は取り外しが出来るようでそれを取り外すと目が×マークの新たな目が出てくる仕組みになっている。
ははっ…これは皮肉かな?俺の将来は骨と皮でこうなるぞ!っ的なね…?
俺がひっそりとダメージを受けていると水瀬さんは何を思ったかその魚のぬいぐるみを手に持ち歩き始めた。
「え…それ、買うんですか?」
「えぇ!なんか、面白いですし、何より可愛くないですか?」
「えぇ…」
いつも思うのだが女性の可愛いって男からすると謎過ぎないだろうか。
ハゲでデブのオッサンでも可愛い。
タピオカを見ても可愛い。
謎の人形を見ても可愛い。
そしてこの不気味な魚も可愛いと来た。
ふむ。謎すぎる。
「あ、これも可愛いですね!お、こっちには猫ちゃん!うわぁ…色々あって悩みますねぇ〜」
と、楽しそうにぬいぐるみを見ている水瀬さんを見ると俺も癒される気がする。
「水瀬さん。これも可愛いですよ?」
そういい俺も一緒にぬいぐるみを楽しむのであった。
そして15分くらい物色した後俺と水瀬さんは早速目的の小物系を買うために100均に来ていた。
「100均でいいんですか?」
「はい。最近の100均は凄いんですよ?グラスにお皿、生活用品。なんならお鍋も売ってるし…素晴らしいですよね!」
と、水瀬さんは胸を張って答える。
「あ〜…確かにそうですね。へぇ…釣竿なんて物も売ってるんだ…」
「ふふっ…和泉さんって釣り、好きなんですか?」
「えぇ…幼い頃に父親に連れて行って貰った時にハマりまして…」
「そうなんですねぇ…。じゃあ休日とかにも釣りに行ったり?」
うぐっ…休日に釣りなんて行けるわけが無い。休日は一日中寝て過ごすのだ。てか、起きたら夕方だしね…
「ははっ…そんな
「えっ!だ、大丈夫ですか!?なんか、更に目が死んできましたよ…?」
「お気になさらず…ははは」
「え、えぇ…」
まぁ、そんなこんなで俺と水瀬さんは買い物を済ませ後はブラブラとお店をめぐり始めた。
「水瀬さん。あと、必要な物ってありますか?」
「ん〜…小物は買えましたし、冷蔵庫、テレビ洗濯機はありますし…今の所は大丈夫そうです」
「そうですか。それじゃあ…甘い物はお好きですか?」
俺がそう聞くと水瀬さんの耳がピクピクっと反応した。
「あ、甘い物…控えめに言っても大好きです」
「それならオススメのお店がありますけど…どうですか?」
ふっふっふっ…社畜歴約2年目の俺を舐めちゃあいけない。普段から仕事で調べることには慣れている俺は昨日のうちにスマホで調べておいたのだ。
「はい!是非行きたいです!」
よしよし、
「了解です。天使のパンケーキって言うお店なのですがそれが凄く美味しんですよ?」
「へぇ〜!流石は都会。凄いですね〜」
と、俺は昨日調べた事を駆使し上手く会話を盛り上げるのであった。
そしてお店に到着し俺と水瀬さんは注文を済ませ、料理が来るのを待った。
『お待たせしました。当店自慢のふわふわ天使のパンケーキ。お召し上がりください』
「「ありがとうございます」」
そしてテーブルに並べられたパンケーキを見て水瀬さんは…
「わぁぁ!見てください和泉さん!ふわふわでプルプルです!凄いですよ!とっても可愛くて美味しそうで…食べるのがもったいないですね!」
そういい写真をパシャパシャ撮っている姿は…うん、お察しだ。
「ははっ…写真を撮るのもいいですが温かいうちに食べちゃいましょう」
「うぅ…確かにそうですね。写真は十分撮れしたし…では、早速…」
水瀬さんはテーブルに用意されたナイフとフォークを手に持ち入刀した。
「お、おぉ…ふわふわが凄いです…」
と、若干言葉がおかしくなりながらゆっくりと口元に運び口に入れた。
その瞬間…目には見えないが水瀬さんの後ろから幸せオーラが飛び出し…
「んん〜!おいふぃ〜!」
と、自分の頬に手を当ててウットリとし始めた。
「気に入って頂けたようで何よりです」
と、済ました顔で俺はそういうが心の中で…
くくく…作戦どうり!
ここは評価も高いし何より女性人気が高いのだ。しかも中々混むため昨日のうちに席を予約しといて良かった。
ふぅ…これで少しは恩を返す事が出来ただろう。
と、思っていると水瀬さんは俺のパンケーキをチラチラと見始めた。
「水瀬さん…1口どうですか?」
「え…!そんな…悪いですよ」
と、言いつつもパンケーキに目が釘付けの水瀬さん。
俺は取り皿を貰いそこに俺のパンケーキを切り取り、渡した。
「遠慮なくどうぞ。これはお礼も兼ねてるので水瀬さんには楽しんで貰いたいのです」
と、俺が言うと水瀬さんは少し恥ずかしそうにしながらも…
「そ、そういうことでしたら…頂きます…」
と、言いパクパクと食べ始めた。
「こ、これも美味しい…はぅ…幸せです…」
「喜んで頂けたようで何よりです」
そして俺と水瀬さんは美味しくパンケーキを頂きお店を出た。
時刻は11時20分。一応の予定ではこの後は帰るだけだ。
「水瀬さん。他に行きたい場所はありますか?」
と、俺が聞くと水瀬さんは軽く首を傾げ…考えた。
けど、何も思いつかなったようで…
「う〜ん、後は大丈夫そうです。それにあんまり体調の良くない和泉さんを連れ回しちゃうのも悪いので今日の所は帰りましょうか」
と、言ってきた。
俺は少し申し訳ない気持ちになり謝った。
「すみません…気を使わせちゃったようで…」
しかし、水瀬さんは笑顔でゆっくりと首を左右に振り答える。
「いいえ。そんな事はありません。今日は短い時間でしたがすごく楽しかったですし、それに…」
と、スタスタと俺の前を歩き…振り向いた。
「それに…また来れば良いだけですからね!今度はほかの所も案内して下さいね!」
と、言ってきた。
だから俺は答える。
「えぇ、もちろん」
と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます