社畜さん痴漢に間違われてから始まるラブコメ

青の空

第1話社畜さん痴漢に間違われる

ガタンゴトン…ガタンゴトン…


軽快な音を鳴らし電車は次の駅に向かって進んでいく。


『次は秋津〜…秋津でございますお降りの際は…』


そんな中スーツを着た1人の男性が居た。


「はぁ…部長のせいだよ…なに、クライアントに渡す書類の不備って…それ作ったの部長じゃん…はぁ…」


そんな部長の愚痴を吐きながら乗っているのは社畜人生まっしぐらな俺こと和泉真琴いずみまことだ。大学を卒業してから1年…教授のオススメで入った会社ではあったが…


「さすがにキツい…もう2日も寝てないし…」


そう、部長の書類不備を俺のせいにし自分はルンルンで帰っていきやがった部長…まじ許すまじ…。


そう思いながら俺は自分の家から最寄りの駅秋壺駅に向かって乗っていたのだが…流石に2日も寝ていないため体力は限界…視界もなんかボヤっとするし。

そんな事を思っていると俺を現実に戻るような女性の叫び声が電車に鳴り響いた…。


『きゃ〜〜!!この人痴漢です!』


そう言い掴まれたのは…俺だった。


「…え?」


俺がその掴んでいる人を見ると…


少し気の強そうなツリ目の女性が居た。


「え…いや…違!」


俺は自分が無実だと伝えようとしたが…


『うわぁ…痴漢だってさ…ヤバくない?』

『ね〜…痴漢とかキモ』

『マジありえないんだけど…』

『世間は許してくれないだろうね…』

『ドンマイ…強く生きろよ…』


などと電車に乗っている人達は俺の事を犯罪者を見るような目で見てきた。


「いや、本当に違うんだ!」


俺はそう訴えるが…馬の耳に念仏…効果は無かったようで俺の腕を掴んでいる女性は怒り狂った様子で…


『はぁ!?私は貴方に触られました!なんで言い逃れができると思ってるの?さ!次の駅で降りてもらうわよ!』


と、俺にまくし立てるように訴えて来たのだ。


「嘘…だろ…」


俺は昔から運が悪かった。

修学旅行の時はインフルエンザになり、運動会前日に骨折をしたり…更には初めて好きになった女性と付き合えた時は…知らないイケメン野郎に寝盗られたり…。

そして今は両手で吊革を掴んでいたのに痴漢に間違われる始末だ。


「はぁ…俺の人生いい事無いな…」


と、俺は全てを諦めたように呟いた。


まぁ、何を言ってもどうせ信じてくれないんだ…それに会社も辞めれて一石二鳥か?


とか、吹っ切れた様に考えていると…


「あの、今見てたけど…その人痴漢じゃないですよ?」


『「え?」』


俺と痴漢だと騒いで居た女性は声をかけてきた少女を見つめた。


「私見てましたけど…その人は違いますよ。犯人はそこの携帯を見てるおじさんです」


そう言い彼女は汗を書いている太ったおじさんを指をさした。


『ふひっ!わ、私ではないですぞ!な、何を言って…!』


と、おじさんはそう反論したが…


「じゃあ携帯見せてよ。写真撮ってるのも見たし…何より…ほら」


そう言いその少女が見せたのはある動画だった。そこにはバッチリとおじさんが写真を撮り触っている姿が写っているものだった。


『こ、これは…!』


と、おじさんは反論しようとしたが…


『あんたが私のおしりを触ったのね!逃がさ無いぞ、てめぇ!』


と、痴漢された女性は怒り狂った様子でおじさんの胸ぐらを掴み駅に着いた瞬間引きずり降ろした。


『ぶ、ぶひぃ!は、離せぇ!』


『逃がさないよ!…今動画撮ってくれていた女の子とそこのスーツの人コイツを運ぶの手伝って!』


と、俺とその少女に指示を出してきた。


「え、えっと…」


「分かりました。さぁ、貴方も手伝って下さい」


「は、はぁ…」


そして3人で駅員さんのいる所に運び警察を呼んだ。

事情聴取等諸々手続きをやっていると時間はどんどん過ぎていき…全てが終わった頃には夕方になっていた。


「はぁ…もう夕方か…日が目に染みる」


俺は警察署から出て夕日を眺めながら呟いた。


そうして感傷に浸っていると…


「今日は災難でしたね…」


と、声をかけてくれたのは俺の無実を訴えてくれた少女だった。


「君は…」


「あぁ。自己紹介がまだでしたね。私の名前は…水瀬花音みなせかのんです」


と、自己紹介をしてきた。


「あぁ。俺の名前は和泉真琴です。助けてくれてありがとうございます」


俺は普通に挨拶をしたが…これが彼女と俺と始まりだとはこの時は気づかなかった。

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