01.「その子は彼の生まれ変わり?」 ④代役
直人が冴子の姉に預けた裕也を迎えに閉院後の病院を訪れた。
「お義姉さん、ご迷惑をおかけしましたね、あれ?奥かな?」
薄暗い部屋で何や他裕也に処方する姉が居た。
「お母さんが裕也どうだったと言って後ろを向いたら、今言ったこと言いなさい」
裕也に暗示をかける冴子の姉。
そこに直人が現れ話しかけた。
「おいおい、自分の子供に良くそんなことが出来るな、目が死んでるな……施術中なのか?」
「今は術中、起きているようだけど、この子は寝ているのよ。心配することは無いわ、暗示で記憶させて、暗示で消し去るのよ。人間の頭の中なんて簡単なものよ」
「君にとっては簡単でも、俺は心配するよ、裕也は俺たちの子供だろ」
「心配や不安になるような感情も、それによって起こる精神的な病も今では薬で改善できるのよ、頭の中や精神なんて本当に単純よ」
「君には勝てないな、ホント、カッコウさん」
「なるほどカッコウね、托卵ということ?、忘れないでね貴方も共犯だし、この子の父親は貴方で間違いないんだからね」
「しかし冴子がお前のお腹に手を当てて、自分の子供だと信じて愛おしそうに撫でていた時は気持ちが悪かったよ。本当にお前の催眠術というか施術は凄いな」
「偉そうにお前お前って呼ばないでよ、忘れないでね、絵里子が出来た時は貴方を許さないといったわよね、若い冴子とさぞ楽しんだんでしょ」
「冴子は精神的な病気だったから指一本触らせないのに、お前はそんなことが無いように裕也がいつも一緒に居るように仕組んだんだからな、そんなことは起こらないと思っていたんだがな」
「ただあの日は特別さ、二人きりで後輩の結婚式に招待されて、俺は相当飲んでいた、冴子の情に絆されて間が差したんだよ。だいたい一回こっきりだ。冴子自身もあの日以外は全く指一本触らせないんだぜ。あの日だって楽しむも何も、泥酔していたからな楽しいも何も覚えてないよ。俺だってあの日、本当に冴子に手を出したのか怪しいんだ」
「証拠は絵里子なんだから言い訳は出来ないわよ、何時までも言い続けてやるわ」
「怖い怖い、裕也が起きたら連れてか言えるから。」
震えるような仕草をしながら直人は絵里子が居ないことに気が付いた。
「あれ、絵里子は?」
「さっき冴子から電話があって、勝手に家に帰ったみたいよ、貴方の浮気の証だしね、その辺で遊んでいると思って気にしていなかったので気が付かなかった、適当に心配していたとか警察に連絡するところだったとか嘘をついておいたわ」
「これを見て、リゾートホテルの設計図が上がって来たのよ」
「やっとというか、ついにだな」
「もう直ぐね、10年停滞していた県の計画が議会で承認されれば間違いなく、県が欲しがっている父の山は高く売れるし、残った父の土地でレジャー施設建設計画も動き出すわ」
「邪魔な博を消したと思ったら、その事故が原因で全てが停滞したからな、5年後再会するはずが不況になって、再開に後10年掛かるとは思わなかった、後は冴子の持っている分の土地を俺が手に入れれば計画は完了する」
「裕也君、いや博君の生まれ変わりの役を頑張ってもらわないとな」
「自分の産んだ不貞の子に愛していた男が生まれ変わったなんて、どんな薬より効くわよ、うふふふふ」
◆ ◆
家に帰ってから絵里子の好きなハンバーグを作っていた。
裕也は私と一緒では不安だからと言うことで直人が会社帰りに連れて帰って来ると言うことだった。
ひと段落ついて、あの財布を少し拭いて奇麗にしてみた。
「博が指差したと言うことは何かがあると言うことよね?」
中身は小銭と紙が数枚あった。
多分レシートだろうか薄れている字を確認しながら紙に書き写した。
一つ目のレシートには、たばことチョコレート、飲み物が2本、唐揚げとシャケのお弁当が2つとあった。
「別々だと思っていた、直人さんと姉が二人で一緒に車に乗ってやって来たの?」
だがその時間を見て、血が逆流するのが分かった、そして気を失いそうになった。
「ウソだ、こんなの……この時間なら博さんの転落事故の相当前に此処に着いているはずだ、そんな博が生きている内に姉さんと直人さんが来たの?」
私の頭の中に何かが浮かんできた、忘れていたその記憶……
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