ウロボロスの輪が消える時
茶猫
01.「その子は彼の生まれ変わり?」 ①届いた花束
あの事故から15年、 私にとっては闇の中の15年
でもこの10年、そう10年前に思い切って直人さんに頼ることにしてからは光が見えてきたのだった。
15年前、その時付き合っていた博さんに不幸な事故があった。
でもそのときのことは思い出せない。
ただ高い崖にの上に佇む私、その前には深い谷底にとがった森の木が多数生えている場所で「博さん」そう呟いたことは覚えているがそれ以外は思い出せない。
姉が言っていたが、彼の遺体は森の木に引き裂かれ無残な姿であったそうだ。
それは忘れる事が出来ないこと、それは優しい彼のこと、それは温かい彼の温もり。
それが失われたと言うことを少しでも思うと自分でも何が何だか分からない行動をしていた。
「あっ、あっ、あっ、あ~ぁっ」
パニック症候群、そうです私パニック症状を起こしていたらしいが症状が収まると何をしたのか覚えていなかった。
私は二人の恩人に支えられた、一人は姉だ。
姉は精神科の医師であったのだが、仕事とは別だと時間外も関係なく誠心誠意、私を支えてくれた。
もう一人はそのとき勤めていた会社の同僚の直人さんだった。
博さんと同期入社の彼は、なにかにつけて私を支えてくれた。
でも、その後5年経っても私の症状は軽減はしたが収まらなかった。
そこで姉は直人さんと結婚して一緒に暮らすことを進めてくれたのだ。
もちろん博さん以外を受け入れられない私はそれを拒んだ。
それでも一緒に居て支えたいという彼にほだされ結婚することにしたのだ。
子供は5年間出来なかった、というかそう言う行為が出来なかったのだ。
だが私を包む直人さんの優しさは私に子供を授けてくれたのだ。
5年後だったが男の子を授かった。
だが子供が出来たことで再度精神的に不安定になった。
博さんに対しての罪悪感が私を苛む。
私は自分の子供であるにも関わらず虐待に近いことをしてしまっていた。
姉はこの時も私達を助けてくれた。
私が安定するまで子供を少しの間預かってくれたりした、もちろん直人さんが仕事から帰ってくるときには子供は連れて帰ってくるのだが、それまでは姉の作った精神安定のための施術をしていた。
そうだ、本当に私はダメな人間だ、立ち直れない、そう考えて居た。
だが子供のためにと頑張ることにして、なんとか立ち直ったのは2年後だった。
そしてその後女の子を授かった。
今は精神状態も安定していた。
家族4人で幸せだった。
今は精神状態も安定していた。
家族4人で幸せだった。
だが私が幸せな生活をすることなど許されないことだった、
それはある朝の訪問者から始まる。
「ピンポ~ン」
玄関の呼び鈴が鳴る。
ドアののぞき穴から見ると花屋さんだった。
これは知っている、毎年の姉からの誕生日のプレゼントだ。
「は~い、ご苦労様」
玄関を開けて、花屋さんから受け取ったのは2つの花束だった。
一つは私の好きなスィートピーの花束だったが、もう一つはあまり知らない花だった。
メッセージカードを読む。
「冴子さん、お誕生日おめでとう、子育て頑張ってね」
姉らしい言葉が添えられていた。
もう一つの花束についていたメッセージカードを開けた。
「いや…、いやっ、…いや~っ」
叫び声を上げると花束を床に投げつけた。
「誕生日おめでとう、久しぶりだね サエリン」
そのまま布団を出し直ぐに中に包まった。
下の子供が心配して飛んで来た。
「おかあさんどうしたの、ねえねえ、どうしたの?」
何も言えない、震えていた。
外には出れない、今パニック症状が出そうだ、子供を怒鳴りつけてしまうだろう。
どうしたら良んだろう、だめだ、震えが止まらない。
子供の声に反応する前に少し怒鳴り声に近くなっていたが声を掛ける
「静かにしておいて、お母さんはいま調子が悪いの」
「サエリン、その呼び方をするのはたったひとりだけ、そう博だけだった」
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