第5話
「お前の飯は、まだ届かないのか?」
黒縁眼鏡の爽やかな顔立ちをした
学力、運動神経、ルックスの3拍子全て揃ったこの好青年は、学力、運動神経、ルックス全て並の新島恵太の小学校からのくされ縁である。
「いい加減に自分で持ってこいよ」
「ボクもいつもそう言ってんだけど、春香のヤツが聞かなくて」
「ったく、兄貴なんだからビシッといけよな」
春日翔が面白くなさそうに呟いた。
「それよりさー、さっきの授業で分かんないとこがあってさー」
「あーパスパス。昼休みにまで勉強したくない」
「頼むよー、春日センセー」
「だったら隣の
春日翔が意地悪そうな顔をした。
「え?」
新島恵太は驚いたように隣に顔を向けた。
窓際の一番後ろの席で、いつも一人で本を読んでいる
背中まである黒髪を三つ編みにまとめ、縁無し眼鏡をかけたこの少女は、春日翔に並ぶ学力優秀な存在であった。
「その手があったか」
「は?」
新島恵太の反応に、春日翔は目を丸くした。
「ゴメン、真中さん。ちょっと分かんないトコがあって…教えてくんない?」
新島恵太は教科書を持って、躊躇うことなく真中聡子の机に移動した。
真中聡子は鬱陶しそうに新島恵太を見上げると、無言でパタンと本を閉じる。
ドヤされる!春日翔は咄嗟にそう思った。
「どこ?」
しかしそのとき、真中聡子の口から優しい声が発せられた。
「ここ、ここ」
新島恵太が教科書を指差す。二人はお互い息もかかりそうな程の至近距離で、一冊の教科書を覗きこんでいた。
春日翔には何事が起きたのか理解が出来なかった。
「え、なに?お前ら付き合ってんの?」
春日翔のその声に、二人はハッと顔を上げた。至近距離でお互いの瞳がバチッと合い、驚いたように顔を真っ赤にしてパッと離れる。
「ゴ…ゴメン!気付かなくて」
「ううん、私の方こそ近かった…」
真中聡子は焦ったように立ち上がると、鞄からポーチを取り出し廊下に向けて駆けていった。
「恵太、お弁当持ってきたよー…て、わわっっ」
「わっ、ごめんなさい」
その時ちょうど現れた新島春香とぶつかりそうになり、何度も頭を下げると真中聡子は教室から出ていった。
~~~
「その子、誰?友達?」
「転校生のリースさん。お昼一緒しようと思って」
新島恵太は妹と一緒に現れた少女に視線を向けた。
「お、転校生か。ボクは新島恵太。んでコイツは春日翔。よろしくな」
新島恵太は自己紹介ついでに、長年の悪友のことも紹介した。春日翔も「どうも」と軽く会釈する。
「ルー=リースです、よろしくお願いします。えと新島恵太…さんに春日翔さん」
ルーはペコリとお辞儀をした。
「あ、恵太でいいよ。新島ばかりじゃ、どっちか分かりにくいよな」
「あ、ありがとうございます。恵太…さん」
「ん?まだ呼びにくい?」
新島恵太はルーが自分の名前を呼ぶ時に、少し言い難そうにしていることに気が付いた。
「だったら、リースさんの呼び易いように呼んでくれていいから」
「ホントですか!?」
ルーが突然、パッと明るい表情になった。
「では、ケータお兄ちゃんと呼ばせてください!」
「んへ!?」
新島恵太は、流石に想定外で目を丸くして驚いた。
「うん、まあ、リースさんが呼び易いなら…別に構わないけど…」
「私のことは『ルー』と呼び捨てにしてください」
ルーは顔を真っ赤にして、さらに詰め寄ってくる。
「あ…ああ、分かったよ、ルー」
「ちょっと、リースさん!」
新島春香は正面からルーと向かい合うと、ワナワナと震えながらルーの両肩に自分の両手をのせた。
「あなた一体…何を言い出すのよ」
「どーかしたんですか、新島さん?怒ってるみたいですけど、私何かしましたか?」
「アンタねー」
新島春香の両手に力が入り、ルーの両肩にギリギリと力が伝わる。
「さっきのエスパー設定はどこにいったのよー!」
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