第22話
紗奈と付き合うようになってから数日が経過、周りからは仲が良さそうな友人関係としか思われてない。
でも、真冬先輩と希海さんだけはまるで自分達のように祝って頂けた。それが何より嬉しかった。
五月も終わりに近付き六月に入ろうとする中で、一足早めの梅雨入りが宣言された。
「今日はまだ降ってないけど、一応持っていこう」
大きめの傘を持って家を出て、紗奈を待つ。
少し遅れて紗奈が出てきて、お互い微笑み合う。
「おはよ紗奈」
「おはよしょうくん」
お互い傘を持ちながら学校に向かった。
☆
俺達が学校に着くのと同時に雨が降り出した。
突然の雨で俺達を含めた学校の人達は慌てて校舎に入り、ハンカチやタオルで拭っていた。
ただこれがいけなかった。
「いででっ……!」
「むー……」
紗奈の姿がとても見れる状況じゃなく、目を背けてたらその視線の先に紗奈と全く一緒の状況の女子生徒を見てしまう。
紗奈同様にその女子生徒はシャツが透けていて、下着の色や胸の大きさまで分かってしまうぐらいで、これが良くなかった。
「ご、ごめん」
「ふんっ……」
頬を膨らませてジト目で俺を睨み、顔を背けられた。
怒られてるはずなのに何故かその行動が可愛くて、まだ大勢居るというのに後ろから抱き締める。
「ちょっ……!?しょうくんっ?!皆見てるから……!」
「じゃあ許して」
「~ッ!分かったから!」
俺はそっと離れ、自分の上履きに履き替える。
ちょっとやりすぎたかな……?紗奈がさっきから静かになってて、顔も赤い。
「紗奈、行くよ」
「あっ……う、ん」
顔を伏せたままだが、俺のシャツを小さな手で摘み、くっついてくる。
俺はその手を離させて自分の手を繋がせた。
「えへへ……」
少しだけ恥ずかしそうに笑う紗奈と一緒に教室に向かう。
☆
授業は滞りなく進み、お昼。
「しょうくんっ」
どっちかの席で食べるのが決まりになっていて、今日は俺の席でお昼を取ることに。
朝から雨が降り続けているからか、殆どの生徒が教室に残っており俺達を物珍しそうに見てる。
「なんか最近神崎さんと鷹崎君って、妙に仲良いよね」
「そうそう、今朝なんて抱き合ってたっぽいよ?」
等を始めとする噂話がそこら中から聞こえてきて、食事どころではなく紗奈の顔がまた赤くなった。
俺はそれが耐えきれず、紗奈を連れて教室を出る。
どうしてもあの頃を思い出してしまうせいで、自分に嫌気が差す。
「しょうくん……?」
「大丈夫、何でもないから」
俺は心配させまいと微笑むけど、一瞬でまた元に戻る。
「……話ぐらいなら聞くよ?」
「本当に大丈夫だから、気にしないで」
「分かった、辛かったらいつでも言ってね?」
本当に自分が嫌になる。
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