第8話

みやが夏季講習から帰ってきて、晩御飯を食べた6時過ぎ。

明日海水浴に行くために、全員で水着を買いに行くことになる。


楽しそうに水着が載っているページを眺めているみやとあおいちゃん。


【みや】

「水着~水着~♪」


すごく上機嫌にページを眺めているみやと、昼間の選考からどんなに最終決定しよう課じっくり眺めているあおいちゃん。


二人は本当に夏を楽しんでいる印象だった。


俺はと言えば。


なんだか一人憂鬱な雰囲気だった。


あおいちゃんとの約束で、明日浅瀬で泳ぐ練習をすると言う約束はしたけれど、今考えれば、尾俺も例外なく、水着を買いに行かなければならないと言うことが判明した。


そういえばここ数年海に行ってなかったし。


学校で使っているブーメランみたいな引きにパンツをはいていくわけにも行かず。


海に行くなら海に行くなりの海水パンツを買わなければならないと言う結論に至ったからだ。


楽しそうに選ぶ二人に比べると。、すごく選択肢が狭いなと思ういながら、二人の準備ができるのをのんびり待っている。


【みや】

「あおいちゃん最近はこんなのもあるんだよぉ」


とか


【みや】

「ほらほら、あおいちゃんだったらこういうのも似合うと思うんだけどなぁ、恥ずかしがること無いって、これだったら恵も鼻血吹いちゃうかも」


とか


【みや】

「あおいちゃんだったらこの前のサイズから行ってこの変もいいと思うんだよね、え?ワンピ-スタイプにしようと思ってるの?ダメだよ、あおいちゃんはスタイルもいいし、ツーピースでアピールしなきゃ」


とか


【みや】

「あたしはこれがいいと思うなぁ、え?あたしもこれ着るの?それはちょっと、あたしってばずんどうだしねぇ」


などなど、俺にはよく分からないが、二人でなにやら作戦会議をやっている。


なんだかとっても楽しそうである。


女の子どおしで話してるんだもんなぁ。


とはいっても。あおいちゃんは筆談しているから、あおいちゃんなんていっているかは分からないけど、それはまぁいいとしてそろそろ出ないとデパートしまっちゃうかなとか思ってくる。


そろそろ声をかけなきゃと思って後ろを振り返ると、どうやら作戦会議は終わったらしく、みやがかばんを持って、出かける準備をしている。


俺もすぐに出れるように準備をしていた。


そのまま合流して一緒に家を出る。


家の鍵を閉めながら。


【みや】

「あたしも買いなおさなきゃねぇ、2年に買ったのはもう小さくなってたのよねぇ、特に胸が」


【恵】

「ふーん」


【みや】

「なによぉ、あおいちゃんにしか興味が無いような反応は、あたしだってツーピース着るんだから」


【恵】

「この前買ったのもそうじゃなかったっけ?」


【みや】

「違うわよ、競技水着みたいなやつ、ワンピースタイプ、それに恵は最近はあたしと海に行ってないんだし、あたしの水着姿もみたいと思わない?」


【恵】

「んー……」


【みや】

「冷たいわねぇ、あたしだって女友達意外と海に行くなんて久しぶりなんだから、少しは興味をもちなさいよ、冷たいよねぇ、あおいちゃん」


【あおい】

『恵君、テレてるだけだったりして』


【みや】

「あら、そうなの、恵?」


【恵】

「そんなわけ無いだろ、姉の水着姿を楽しみにしてどうするんだよ、早く行こうよ」


【みや】

「もぉ、テレちゃって、かわいいな我が弟よ」


【恵】

「ちげーよ」


【みや】

「よしよし、それが分かれば満足だ、みんな行こう」


妙にテンションの高いみや。


正直、ここまで楽しみにしているのだったら、今まで一緒に海に行かなかったのは、少し悪いことをしたかなと。


そんなことをぼんやりと考えていた。


あおいはまだ美弥に色々レクチャーを受けている。


【みや】

「いい、見せすぎてもいけないけど、隠しすぎてもダメなの、奥に隠れてる美しさを見せるくらいがベストでね」


そんなことをさっきから熱弁している。


いったい何を教えているのやらと思ってしまう。


そこまで気合を入れて教えて、あおいちゃんを市内のアイドルにでもするつもりなのだろうか?


あおいちゃんが来て三日目。

我が家の中で大きな変化が起こっているような気がした。


俺は、ここ何年も海に入っていないのに、海に入る約束をしたし。


みやはみやで、ここ数年海に行っていなかったのだが、今日行くことが決まってから。


かなり機嫌がいい。


今まで俺との二人暮しで、そういえばこういうことって無かったなと、そんなことをぼんやり考えていた。


俺は俺は夏休みと言えば、適当に宿題をして暇をつぶしたり。


空いた時間はゲームしたり。

マンが読んだり。

小説をぼんやり読んだり。


そんなことしかしてなかった気がする。


たまに気が向けば一人でぼんやり縁日に出かけて行ったりもした。


それでも、みやとこうやって一緒に出かけたのも久しぶりのような気がする。


みやは普段俺と出かけても、「晩御飯の材料買出しや、重くて運べない荷物があるときだけ一緒に出かけただけだった。


その中でもここまで話したことも無かった。


【みや】

「それに水着着たこと無いって言ってたけど、着てみると楽しいと思うのよ、海辺でのファッションだと思えばきっと楽しめるはずだから、ね?」


あおいちゃんと楽しそうに話すみや。


その様子を見ながら、気がついたことがある。


母さんも、父さんも、俺とみやが中学を出たとき。


これから二人二人に勉強してもらうために出かせぎに出る。


そういって家を出て行ってから、俺はあまりしゃべるのが得意ではないし。


みやも二人きりでいるとあまり話すほうでもない。


だからいつでも、家の中は沈黙していたんだと思う。


でも、妹のようなあおいちゃんが我が家にきてから、この短い時間の間にかなり変わった印象を受ける。


確かに弟の俺にこんな話はできないし、どちらかと言えば学園でも国立大学を目指して進学を目指して勉強ばかりしている印象だし。


同い年くらいの同性としゃべるのは面白いのかもしれない。


そんな風にみやを観察しているうちに、目的地のデパートまでやってくる。


家から約10分。


ここの街では一番ものや人が集中している繁華街。


【みや】

「よし、到着、それじゃあ恵、はい、これ」


宮はにっこり笑いながら5千円札を渡してくる。


【恵】

「え?こんなに?海水パンツはそんなに高くないと思うんだけど」


【みや】

「うーんそっかぁ、男子のってそんなにしないのか、じゃあ、余ったお金でピエールダディーのショートケーキ買ってきてよ」


【恵】

「ピエールダディーって、今から学園の近くまで行くの?しんどいよ」


【みや】

「ちがうわよ、恵、知らないの?デパ地下にも入ったのよピエールダディー」


【恵】

「そういうことか、分かった、買ってくる」


【みや】

「あ、ちょっとまって、なるべき冷えてるのが食べたいから、あたしたちが買い終わってから一緒に行きましょう」


【恵】

「え?女性用水着コーナーまで迎えに行くの?」


【みや】

「ん?なんで?」


【恵】

「やめてくれよ、男が一人で女性用水着コーナーにいくとかはずかしすぎるよ」


【みや】

「いいじゃないの、となりなんだし」


【恵】

「そいう問題じゃなくて」


【みや】

「だらしねぇなぇ、仕方ない、そしたら買い終わったら会いちゃんと迎えに行くから男物の水着コーナーで待っでなさい」


【恵】

「それで頼むよ、それじゃあ、選びに行くから、またあとで」


そういって分かれたものの、その意味はまったくと言ってもいいほど無かった。


何故ならば、みやの言うとおり。


男性ものの水着と女性ものの水着と言うのは通路を挟んでとなり。


立つ位置によってはお互いの姿が見えるくらい近かった。


俺はなんとなくこみ上げてくる恥ずかしさを感じながら水着を選ぶ。


なんとなく、自分が選んだ水着が見られているような気がして落ち着かない。


確かに、みやがよこした5千円をフルに使ってやっと間に合うような今年の最新モデルとかは、いい値段がしていた。


でも、俺には何年前のモデルだろうがあまり関係の無いことだった。


だからレジの近くにある、値段の下がった去年のモデルが多く入っているワゴンの中から物色する。


ワゴンなの中には色々な水着が入っていた。


ビキニタイプ。

競泳用のひざの下まで包んでる本格的なタイプから

ラフなトロールタイプまで。


俺はどちらかと言えばそんなに早く泳ぐわけでもないし、ビキニタイプが似合うほど、筋肉質でもない。


となれば必然的にトロールタイプになる。


でも、さすがはアウトレットばかりが入っているワゴン。


色が奇抜なものだったり。

サイズが大きすぎるものが多かった。


それでも、諦めることなく、根気よくサイズを探して、黒いトロール型を発見。


レジに持って行き。


会計を済ませて袋に入れてもらい、買い物終了。


早速やることが無くなって、男性もの水着売場と女性ものの水着売場の境目の通路にぼんやり立ちながら二人が買い終わるのを待つ。


【みや】

「ほんとに?似合ってる?」


みやの声が聞こえる。


それでも仕方ない気がする。


売場が10mも離れてないし。


その声をなるべく気にしないようにしにて、ぼんやり待つことにする。


【みや】

「分かった、それじゃあ、チャレンジしてみよう、あたしはこれで決まりってことで、それじゃあ次はあおいちゃんのを選びましょう」


どうやら、迷いやすいみやの水着が決まったらしい。


なんとなく、チャレンジと言う単語が気になったが聞かなかったことにしよう。


それを考え始めると、変な方向に考えてしまいそうな、そんな気がしたからだ。


みやのセクシーな水着姿を一瞬想像した。


でも、すぐに冷静になる。

みやがどんな水着を着ようが、姉には変わりない。


それにときめいても特に意味はないなぁと思いながら、邪念を振り払う。


【みや】

「あおいちゃんはそれかぁ、でもでも、こっちのほうが似合うきがするなぁ、え?なに?恥ずかしいって?」


あおいちゃんの話題になったとたん、何でかとっても気になり始める。


恥ずかしいとか、どんな水着をすすめたんだろうとかものすごく気にってします。

セクハラまがいのすごく恥ずかしいものをすすめてなければいいけど。


【みや】

「んー、でもやっぱりこっちよりもこっちかなぁ、これだったら恥ずかしくないよね?え?だめ?」


おいおいおいおい。

みやよ、何をやっているんだ?


水着をすすめるのにそんなに恥ずかしいと言う言葉が出てくるとかおかしいだろう?


もしかしてどんどん過激なチョイスをしているんじゃなかろうかと心配になってくる。


【みや】

「そっかぁ、それじゃあ、これでどう?、うん、これだったら、着やすいし、いいと思うよ」


今度は着やすさで選らんでいるらしい。


しかしやっぱり女子が物を選んで買うと言うのは時間がかかる。

できればこのままピエールダディーにケーキを買いに行きたい気分だが。


みやの冷えて得いるのを食べたいとのリクエストもあるし。

この場を動くわけにも行かない。


着やすさとは、どこを基準に選んでいるのか?


明日あおいちゃんはどんな水着を着るのかなと言うことを想像してしまう。


考えちゃいけない。


そう思って思考を振り払おうとする。


でも、そうすればするほど、昼間あおいちゃんが見ていた雑誌のデザインとかを思い出して、あんなの着るのかなとか一人で妄想して悶々としてしまう。


いかんいかん。


今は別のことを考えるんだ。


【みや】

「ああ、そっか、あおいちゃんそうだったね、この前買い物着たときも言ってたけど、このタイプはダメだったんだねとなるとこっちになるのかぁ」


ちょっとまて、どのタイプがダメなんだ?


とか思わず突っ込んでしまう。


でも今は余計なことを考えないで、二人の買い物が早く終わることだけを願う。


でも、今飲み屋の一言がものすごく気になってしまっている。


いったい水着で苦手なタイプってなんなんだろう?


とか思ってしまう。


でも、まったく想像がつかない。


何が苦手なのか、俺にはまったく想像もできなかった。


【みや】

「じゃあ、これとかは?ほら、これだったらそのタイプだしさっきの着やすさもそのまま」


どのタイプだ?


とか激しく突っ込んでやりたかった。


でも、がまん、がまん。


【みや】

「よし、それじゃあレジに行こう」


ようやく決まったらしい。


これ以上何か耳に入っても気になるので、通路の向こう側。

男性用水着売場の法まで一時的に逃げる。


まったく、みやはもうちょっと声を抑えてしゃべればいいのにとか思う。


いったいあおいちゃんはどのタイプの水着になったのかと思うと、落ち着かなかった。


昼間見ていた雑誌の水着では時に共通点といえば、ツーピースのビキニタイプ。


それくらいしか覚えていない。


でも、その中から、紺なのではないかなって想像して、悶々としてしまう。


スケベなこと考えて最低棚と思う反面、男の近さんだから仕方ない。


そんな風に自分を納得させていた。


ようやく、冷静さを取り戻しかけたとき、みやたちが迎えに来た。


【みや】

「おまたせ、やっぱり人数の多いあたしたちのほうが時間かかちゃったね」


【恵】

「別にいいよ、そんなに何時間も待たされたわけじゃないし」


【みや】

「なら良いんだけどさ、それじゃあ、ピエールダディーに行きましょ、あおいちゃんにショートケーキを食べさせたくてね」


【恵】

「うん、いいよ」


みやがショートケーキについて熱弁しているのを後ろから眺めながら地下に向かっていく。


エスカレーターを各階で乗り換えながら、すぐに地下にたどり着く。


そこで、ショートケーキを人数分買って、家に帰るために三人で帰り道を歩き始める。


【みや】

「ピエールダディーのショートケーキっておいしくてね、我が家では3歳くらいからの定番なの、だからあおいちゃんにも食べさせたいねって思ってね」


デパートに来るときは女性用下着の極意みたいなことを語っていたみや。


帰りはどうやらショートケーキについて語りそうな勢いだった。


【みや】

「ほかのところとは色々違うんだよ、生クリームにはコクがあるし、イチゴだってほかのところよりふんだんに使ってるしね、後は生地からほのかにシナモンの香りがしたりしてね」


予想通り、あおいちゃんにショートケーキについて熱く語っていた。

よほどあおいちゃんに話せるのがうれしいのか、それとも、このケーキの味を家族以外に語れるのが楽しいのか。


永延とケーキの話で盛り上がっているのを見て、宮がこんなにおしゃべりだったと言うことを今知った。


母親とすらそんなに話さないのに、珍しいもんだと思いながらみていた。


そのまま、ケーキの話題をしながら家について、三人でケーキを食べる。


出かけていたときはめったにスケッチブックに字を書いていなかったあおいちゃんも話し始める。


【あおい】

『すごく甘くておいしい』


【みや】

「でしょ~、気に入ってくれてよかった」


【あおい】

『ふわふわしてるし、甘いし、とってもおいしい』


【みや】

「ピエールダディーオリジナルの味だから、また買ってきてあげるよ」


【あおい】

『うん、うれしい』


上機嫌に話すあおいちゃんとみや。


そんあ女同士の和やかな風景を見ながら、俺もケーキを食べる。


我が家の定番といっていたが、確かに何かおめでたいことがあるたび確かに定番だった。


みやの誕生日

俺の誕生日

母さんの誕生日

父さんのときはなんでか違うんだけど。


とりあえず、お祝い事があれば食べていた気がする。


そんな我が家では馴染み深いこのケーキを気に入ってくれたのはなんだか俺もうれしかった。


三人で食べ終わって、みやがお皿を洗いに台所に行く。


【あおい】

『ケーキの香りのお香は無いの?』


いきなり聞かれて少し戸惑った。

本当にあおいはヴァニラのお香でソフトクリームのことを思い出していたのかもしれない。


【恵】

「残念ながら、それは無いよ」


【あおい】

『えー』


すごく残念そうな顔をしてあおいちゃんが肩を落とす。


あまりにも残念そうにしていたので、俺も知恵をしぼる。


【恵】

「あ、そうだ」


【あおい】

『?』


【恵】

「ストロベリーとヴァニラを一緒にたいて見たらそれらしい匂いになるんじゃないかな?」


【あおい】

『そうだね、試してみる』


早速、茶の間でそれを試してみることに。


意外な話、確かにそれらしくなっていた。


その匂いをかぎながら、あおいちゃんは今食べ終わったばかりのショートケーキの思い出に浸っているようだった。


なんだか、不思議と今から明日の海水浴が楽しみになってきている。

そんな自分に気がつきつつ。


今日は早く寝ようと思った。


あした、存分に楽しむために。

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