第6話

エリザベータがつれて来られたのは王族が暮らす海底帝国中心部からかなり離れた場所。


帝国のはずれ、王族はめったに訪れることのない住宅街。


主に貧しい住人や、異端の者が暮らすと言われている場所。


兵士に導かれ、その中の一軒に通される。


薄い木の扉をノックする。

中から返事はない。


すべてを分かっていたかのように、家主が扉を開ける。

家の中にいたのは真っ黒な尾ひれを持った帝国の中では「魔女」と呼ばれる種族。


【???】

「初めましてエリザベータ姫、私は魔術師のテレーザと申します」


テレーザは深く頭を下げた。

それから家中に入るように促してくる。


エリザベータはその場で一時足を止める。


【エリザベータ】

「初めましてテレーザ、わたしは何でここにつれてこられたのかしら?」


玄関先でそう挨拶してから、兵士たちを残し、家の中に入ってく。


客間に入ってから


【テレーザ】

「何も知らされてないんだねぇ、可愛そうに、それじゃあまずその説明から始めないといけませんね」


そうテレーザがもらす。


【エリザベータ】

「わたしはやはり、魔法で殺されてしまうの?」


不安そうにエリザベータがたずねる。


その質問にテレーザは静かに首を横に振る。


少し沈黙してから。


【テレーザ】

「結果次第では、生きていることに感謝できるくらいすばらし未来が待っているかもしれないし、最悪、死んだ方がましだと思えるくらいの生き地獄を味わうかもしれません」


【エリザベータ】

「とても恐ろしいことになっているのは分かったわ、それでわたしはどうなるの?」


【テレーザ】

「それじゃあ、まず、そこに腰掛けて、第767条とは何か?から説明した方がいいかしら?」


【エリザベータ】

「はい」


【テレーザ】

「わかった、それじゃあ長くなるからお茶を沸かすからちょっと待っててちょうだい」


【エリザベータ】

「よろいしくお願いします」


エリザベータは不安を抱えつつ、一人で魔女の家の応接間でお茶が沸くのを待っていた。


自分にこの先不どんな運命が待っているのか、恐怖を感じながら。


それと同時に、生きていることに感謝できるくらいのすばらしい未来とはなんだろう。


そう考えていた。


自分が犯した罪。


それは同属殺しと異族への恋。


この帝国には子供を裁く罪はない。


でも、この春に19歳になった自分には罪を償う義務がある。


本当は死刑になるのだと覚悟していた。


深い深い闇野海に沈められ、そこで命果てるのだと覚悟していた。


でもその予想に反して、お父様が承認した767条。


どんなものかも分からない不安の中、ただ、お湯を沸かす火が燃える音だけがパチパチと響いていた。

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